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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第二章 つぎはぎの化け物〜宿場町ブルーメンベルクより〜
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第十四話『飛べないペガサス』

 カタリーナの部屋に戻っても、カタリーナはずっとどこか放心状態でベットに座っていた。フリージアはその体を支えるようにして一緒に座っている。


(腕のない死体……)


フリージアは先ほど見た光景にずっと、心が囚われていた。腕がない以上フリージアでは腕のない兄を蘇らせること自体は可能であるが、失った部分をフリージアが再生できるわけではない。もし、兄の腕がどこか近くにあるとするならば、くっつけることは可能であるが、その腕がどこに行ったのかが分からない以上探しようがない。もしかしたら、おとぎ話に出てくるような人喰いの化け物がいて兄の腕の食べてしまったのではないかとも考えてしまった。


フリージアもしばらくぼーっとしていたが、カタリーナが話しかけてきた。


「ねえ、フリージア。私、今日初めてお兄様の死体を見たの。お父様もお母様もこの屋敷の使用人も頑なに見せようとしなかった理由が分かったわ。」


そうカタリーナが話しかけてくるのをフリージアは悲しそうな顔で見つめていた。フリージアはカタリーナに何も知らされていなかったことを可哀想に思ったのだ。カタリーナは話しかけた後、大粒の涙が目から溢れ出し、そのまま泣いた。フリージアはそんなカタリーナの元で話しかけず、ずっとただ隣に座っていた。何をすればいいのか分からないのもそうだが、カタリーナのこの深い悲しみを理解しきれないと思ったからだった。


カタリーナが泣き止み、フリージアは少しホッとした。カタリーナはこれから先どうしたらいいか悩んでいた。フリージアはカタリーナに話しかける。


「お兄さんが亡くなった日、何か特別なことがあったの?」


そう聞くと、カタリーナは衝撃の発言をした。


「ペガサスが死んだの。」


「ペガサス?」


フリージアは信じられなかった。ペガサスがこの世にいるのだろうか。てっきりフリージアはおとぎ話の中の話かと思っていたが、そうではなかったのかもしれない。世間のネクロマンサーに対する感情もそうかもしれなかった。その驚いた様子のフリージアにカタリーナは


「私も驚いたわ。でも、本当にペガサスがいたの。白い馬の体に白い大きな羽を持っていたの。飛ぶことはできなかったけれど……。」


と答えた。


「そのペガサスってどこから来たの?」


「分からないわ。ただ、ペガサスを連れてきてくれた男の人は、『さあ、不死の存在の前に現れるかもね?』って笑っていたわ。……今思い返せば、あの人はとても綺麗な人だったから不死だったのかもしれないわね。」


カタリーナはそう答える。フリージアはカタリーナのペガサスの髪飾りを見つめる。ペガサスはこの家にとって大事な存在なのだろうか。ペガサスが死んだ日とカタリーナの兄が死んだ日が同じであることをフリージアは何か怪しいとは思ったが、何があったのかははっきりとは分からなかった。


この話を一時的に忘れたいのかカタリーナはフリージアに全く関係のない質問をし始めた。無理やり笑顔を作って、


「ねえ、フリージアはどうしてあのパン屋の前にいたの?」


「えっと、」


そう言ったところでフリージアはあの時すれ違ったネクロマンサーのことを思い出した。しかし、ネクロマンサーがペガサスを連れてくることなんてあるのだろうか。フリージアは考えているとカタリーナは少し不機嫌そうに、


「ねえ、どうして?」


と聞いた。フリージアは


「旅をしていて……それで途中で寄っただけだよ。」


と答えた。そのことにカタリーナは少し悲しそうな羨ましそうな顔をしながら聞いた。


「旅の終点は決めてるの?」


「……えっと、死んだばかりのネクロマンサーの新たな力の後継者?の生まれたばかりのネクロマンサーを探すことと、」


というとカタリーナは驚いた顔をして、話を遮って、


「ネクロマンサーって不死じゃないの?」


と聞いた。フリージアは神話の内容を思い出し、人々がネクロマンサーは不死であるということを信じていることを感じた。


「うん、不死じゃないよ。」


「そうだったのね……。」


カタリーナとの会話がそこで途切れてしまい、フリージアは先ほどはそこまで感じなかったのにも関わらず、急に沈黙が気まずいと感じた。フリージアは旅に出たもう一つの理由を話した。


「……旅に出たもう一つの理由なんだけど、サフランっていう人に手紙を届けるためなんだ。」


そういうと、カタリーナはとても驚いた表情をしていった。


「私、その人知ってるわ。」


「本当に!?」


その言葉にフリージアが驚いた。サフランという人物をまさかカタリーナが知っているとは思っていなかったからだ。しかし、そのあまりの驚きっぷりにカタリーナは少し気まずい顔をする。カタリーナは


「少し待ってて。」


と言って、部屋にある本棚へと歩いていった。その棚からカタリーナはある本を持ってきた。その本には『魔女の民族童話』と書かれていた。カタリーナはさらに言葉を続ける。


「これは、異国から来たものの翻訳で、さまざまな魔女に関する童話が集められているものなの。それにサフランっていう人物が載っていて、ごめんなさい!想像していたのとは違ったのかもしれないわ。実際にいるかどうかは分からないもの。」


とカタリーナはフリージアに謝罪した。しかし、フリージアはその本だけでも十分だった。フリージアは本を読むのはとても苦手であったので、後で読みたいと思い、カタリーナに


「この本、借りてもいい?」


と聞いた。すると、カタリーナは


「別にもらっても大丈夫よ。また買えばいいわ。」


と軽く返した。その言葉にフリージアは笑顔で、


「……ありがとう。」


と言った。そして、フリージアはやはりここまで優しくしてくれているカタリーナに恩を返したいと思い、兄の死体をどうしても蘇らせたいと思った。


「ねえ、ニーナ。ニーナのお兄さんの腕を探しに行こう……?どこかにあるかも、あれば、お兄さんの死体を完璧な状態で蘇らせることができる。」


とフリージアは提案した。それは一種のこの屋敷からの脱出の提案であり、カタリーナにとっては救世主からの助言であった。カタリーナはその言葉に懸命にうなづいた。

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