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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第二章 つぎはぎの化け物〜宿場町ブルーメンベルクより〜
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第十三話『欠損した死体』

 「お父様、ずっとあんな感じなの。お兄様が亡くなってから……。」


と部屋に入ってからカタリーナはフリージアに悲しそうに言った。カタリーナの部屋は先ほどの廊下の様子とは違い綺麗に整頓されていた。カタリーナは少し周囲を見渡し、フリージア以外に誰もいないことを確認した後、フリージアにこう言った。


「お兄様は本当に優秀な方だったの。跡取りとしても期待されているし、市民からの信頼も厚いわ。私がその代わりにならなきゃって思って、本を読んで勉強しようと思ったの。そうしたら、あなたたちの存在を知ったわ。ネクロマンサーっていう存在。10人がいろんな死とか生に関する力を持っているんだって。その中の一つにあなたの能力があることを知ったわ。生き返らせるネクロマンサーがいるって。まさかこんなにも早く会えるなんて思っていなかったけど……。」


「その本ってどこにあるの?」


フリージアはカタリーナに尋ねた。しかし、カタリーナは首を横に振った。フリージアが困惑した表情を浮かべると、カタリーナは口を開く。


「フェリーネが言ったの。『ネクロマンサーのことなど詳しく知ってはいけません!』って。それで本を取り上げられて、火の中にくべられてしまったの。」


「……どうして?」


「私にも分からないわ。」


そう言ってカタリーナは落ち込んだ様子を見せる。しかし、その前にフリージアには疑問に思うところがあった。


「ニーナはネクロマンサーのこと前は知らなかったの?」


「知ってはいたわ。知ってはいたけど……。」


そう言ってカタリーナは少し口を閉じかける。フリージアはその様子にどうしたのだろうかと首を傾げた。カタリーナはわずかな沈黙を挟んだのちに答えた。


「だって、神話だけの出来事だと思ってたから。おとぎ話のようなものだと思っていたの。……それにお父様たち、私のことをあまり外に出したがらないから。」


と少し恥ずかしそうに言った。フリージアはそのことに自身の存在はあまりリアリティがないのではないかと思った。生き返らせるというのはおとぎ話で魔法使いが使う能力だとフリージアもアレントが読んでくれた童話の中で知っていた。そして、同時にあのヴィントモレンの人々はネクロマンサーという存在が近くにいたからこそ、あのように拒絶をしたのだろうとも考えた。


フリージアは、この世に10人しかいないネクロマンサーがそんな頻繁に現れるわけではないことに気づいた。それと同時にこれからの道のりは極めて困難な道のりになるだろうと考えた。カタリーナはフリージアが一生懸命悩んでいるのを横目に見ていた。そして、フリージアに話しかけた。


「フリージア。お兄様の部屋まで案内するわ。」


とカタリーナが言ったのを皮切りにフリージアは息を飲んだ。ちゃんと生き返られるのだろうかと直前に緊張を覚え、フリージアは固く自身の手を握りしめた。


 廊下をさらに奥まで進み、奥の人が通らないであろう部屋にカタリーナの兄の部屋はあった。扉の外からでも感じる死体の腐敗臭は死者の軍勢からの臭っていたものであった。フリージアはカタリーナが手の震えでうまく力が入らずに扉を開けられないのを見て、カタリーナの手を上から優しく触った。


「私が開けるよ。」


とフリージアは言った。カタリーナはそのフリージアの言葉に固く口を閉じ頷いた。フリージアがゆっくりと扉を開ける。その瞬間、とんでもない腐敗の香りが漂ってきた。あの死者の軍勢とは比べ物にならないぐらいの匂いにフリージアは鼻をつまむ。カタリーナも手でハンカチを持って鼻を覆った。


「兄が亡くなったのは五日前の話よ。」


ハンカチで口元が塞がっているので、モゴモゴとしているが、フリージアには問題なく通じていた。部屋は手入れをされていないことがわかる部屋で奥には白い布が被さった何かがあった。おそらくあれが死体で間違いないのだろう。この部屋に置かれた死体はまるで厄介なものとして、もしくは触れたくないものとして感じられた。フリージアは奥に進む。カタリーナはフリージアの服を掴みながら後ろからついて行った。


白い布のかかった死体は上からも鼻の形がわかるほど薄い布が使われていることがわかる。その白い布に血がついていた。フリージアは嫌な予感が体を走った。


「取っても良い?」


カタリーナにそう聞くと、カタリーナは首を縦に振りうなづいた。その動作からこの部屋を早く離れたいと言っているようにも感じ取れた。フリージアは死体から白い布をゆっくりと取る。


フリージアはその死体にとても驚き、後ろにいたカタリーナも驚いているようだった。


「腕がない……?」


「……どうして?腕がないのお兄様……。」


文字通りその死体には腕がなかった。それ以外の箇所は綺麗であり、腕だけがどこかに行ってしまっているようだった。腕は引きちぎられた後があり、その様子からかなり大量の血が体の中から出ていってしまったことが容易に想像できた。そして、その腕の引きちぎられた様子から人間ができることなのだろうかと思ってしまうほどであった。


カタリーナはフリージアに尋ねる。


「生き返らせそう……?」


その声はとても不安に満ち返していた。フリージアは顔を下にし、引きちぎられたであろう腕の箇所を見つめながらこう言った。


「無理だと思う……。もしできたとしても、腕だけはどうしようもできない……。」


とカタリーナに残酷な事実を告げた。


「そんな!」


カタリーナは唯一の希望であったネクロマンサーであるフリージアにこのようなことを言われてしまい、絶望に満ちた表情をし、膝から崩れ落ちた。フリージアはそんなカタリーナの肩を抱いて、


「とりあえず、出てから考えよう……?」


とカタリーナに優しく話しかける。カタリーナはその言葉にうなづき、フリージアの力を借りて、廊下の外へと足を運んだ。

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