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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第二章 つぎはぎの化け物〜宿場町ブルーメンベルクより〜
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第十一話『死への歩み』

 カタリーナはその後も動くことができず、フリージアも同じように動くことができなかった。カタリーナは最初にフリージアを見た時からフリージアの正体をわかっていたと泣きながら語った。


「私…あなたの、フリージアの、こと……初めて見た時、に、ああネクロマンサーって、分かったの。変よね。でも、絶対に力を貸してくれるって……神話に書かれていた通りだったわ。必要な人の前に現れるって……。」


カタリーナはそう語った。そして、ドアの開く音がして、カタリーナは急に立ち上がった。この様な姿は他の人には見られたくないらしい。フリージアはそんなカタリーナの様子を見ていた。扉の開く方を見ると、店主が客と話しながら入ってきたらしく、なかなかこちらの方を向かなかったので、カタリーナはしわしわになったスカートの皺を手で軽く伸ばした。フリージアも先ほどの席に座る。


店主が「はい、またね!ご贔屓に!」と言ったところで、フリージアとカタリーナの方を向いて、笑顔で声をかけた。その笑顔は先ほどまでこの部屋に満ちていた重苦しい雰囲気を少し和らげた。店主は


「どうだい?うまいだろう!」


「……はい!とても。」


カタリーナがまだ顔を挙げられる雰囲気ではなく、代わりにフリージアが返事をした。


「そりゃ、よかった。」


と店主は返事をしたが、カタリーナの雰囲気を見て、


「ニーナ嬢ちゃん?大丈夫かい?」


と店主は心配そうに声をかけた。フリージアは止めた方がいいのかと悩んだが、フリージアの助けが入る前にカタリーナは笑顔で


「大丈夫よ!心配してくれてありがとう!」


とフリージアと出会った頃の先ほどの調子に戻ったかのように返事を返した。その調子に店主は少し案したように息を吐き、テーブルの方を見た。まだそれほどパンに手が付けられていないのを見て、再び心配そうな顔になり、


「本当は食欲がないんじゃないのかい?」


とカタリーナに聞いた。


「そんなことないわよ!」


とカタリーナは店主にいうが、


「いや?いつもならもっと食べているはずだ!……どこか体調が悪いんじゃないのかい?それか病み上がりとかかい?ここ六日間ぐらい来れてなかっただろう?早く、屋敷に戻ったほうがいい。」


そう言って店主は椅子に座っているカタリーナの方へ膝をついて言った。店主はカタリーナの目を見て、


「みんな心配してるんじゃないかい?」


そういう声は優しかった。カタリーナを本当に大事に思っているのだとこのやり取りで感じられた。アレントのことを思い出し、フリージアは少し悲しくなった。カタリーナは何も言わなかった。ただ、目を合わせようとはせずに下を向いていた。フリージアは店主の思いやりを素直に受け取れないのかとカタリーナのことを思ったが、兄が亡くなった直後の相手にそんなことを求めるわけにはいかない。フリージアは助け舟を出すように店主に言った。


「確かに、体調が悪そうですね。私がカタリーナ、えっとニーナの家まで送ります。」


その発言を聞いた店主はほっとした様に再び息を吐き、


「じゃあ、お願いするよ。今、残ったパンを詰めるからちょっと待ってな!」


と店主は言い、店主はまた店の方へと出ていった。カタリーナはフリージアに小声で少し文句を言った。


「大丈夫よ。本当に、あなたに会って気が動転しただけ。」


その声にフリージアは小声で返す。


「でも、お兄さんの死体の様子を確認しないと、何も分からないよ……。」


フリージアは平然と返した。まるで、カタリーナの兄を生き返らせるのが最優先だとでもいう様に。しかも、そのことがまるで食と同じレベルで語っている様に。カタリーナはその返答に少しの違和感を覚えた。フリージアはカタリーナの兄を再び蘇らせることは、周りにバレない限り容易いことだった。力を込めれば、きっと簡単に生き返る。アレントの時とは違うと思っていた。今回は”死”の権限ではなく”生”の権限の行使なのだから、きっと良いことだとも思っていた。


カタリーナは、その返答に若干戸惑いを見せながらも


「……分かったわ。お屋敷にいる兄のところまで案内するわ。」


と小声で返答をした。扉が開き再び店主が入ってくる。二人がかなり近くにいて、コソコソと何かやりとりをしているのを見て、店主は


「なんだい?内緒の話かい?」


と笑って言った。カタリーナは


「そうよ!内緒の会話!」


と笑顔で返したが、カタリーナの手は震えていた。フリージアはそれを見逃さなかったが、店主はそのことに気がついていないようにパンをバスケットに詰めていた。そしてその上に布を被せ、フリージアに渡した。


「じゃあ、フリージア嬢ちゃん、ニーア嬢をよろしく頼むよ。」


店主はそう言って、手を振った。フリージアとカタリーナは店主に


「ありがとうございました。」


「次は元気になってくるから、またね!」


とそれぞれ別れの挨拶をしてからカタリーナの屋敷に向かった。


 カタリーナの屋敷は割とすぐ近くにあり、思って以上に歩かなかったことにフリージアは驚いた。屋敷といえば、マールテンが住んでいた城を思い出すのだが、そこまでは大きくなかった。ただ、門と大きな庭そして左右対称の建築様式はどことなくマールテンの城を想起させる。


フリージアはもちろん正面から入ろうとしたが、カタリーナはその様な行動をとるフリージアを全力で止めていった。


「どうしてそんな正面から入ろうとするの!」


「だって、入れるのは、あそこだけなんじゃないの?」


フリージアのその発言にカタリーナは少し肩を落としてこう言った。


「あそこから入ったら、私怒られちゃうじゃない!それにフリージアもお屋敷に入れないわよ!」


と言った。フリージアはその発言の意図が理解できず、


「どうして?」


と聞くと、カタリーナは信じられないという顔をして、


「……だって、私お屋敷を許可なく出てるし、それに、私はフリージアのこと友達って思うけど、」


カタリーナは途中まで語ったが、なぜか途中で言葉を詰まらせた。そのことにフリージアは首を傾げる。言葉を詰まらせるほどのことだったのだろう。カタリーナは誤魔化すように


「とにかく、裏からこっそり入りましょう!こっそりよ!」


と言った。フリージアもうなづき、


「……分かった。」


と言った。

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