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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第二章 つぎはぎの化け物〜宿場町ブルーメンベルクより〜
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第十話『神に祈る懇願』

 「じゃあ、ここからー、」


と言って、カタリーナはお店の端っこを腕で示した後、少し走ってお店の端の方まで走りふわっと可愛らしいスカートを揺らしてくるりと回転した後、最初に腕で示したのとは反対の端っこの方を腕で示し、


「ここまで!全部一種類ずつちょうだい!お釣りはいらないわ!」


と言って、お金の袋を男の店主に差し出した。男の店主は


「おお、太っ腹だね!」


といい、お金の袋を受け取った。明らかにそのパン類には大きな額だったのか、店主は中身を確認しないまま、袋をカウンターの下にしまった。カトリーナは再びフリージアの手を引っ張る。フリージアがびっくりする間もなく、カトリーナは店主に


「じゃあ、いつものところ使ってるわね!」


と言って、


「おお、じゃあ持っていくから待っててな。」


と店主が返した。そして、フリージアに


「じゃあ行きましょう!フリージア!」


と言って、フリージアの手をさらに強く引っ張った。その力の強さにフリージアは顔を歪めたが、カトリーナはそれを全く気にしていないようだった。


「いつものところ」というのはこのパン屋さんの上にある小さな来客用の部屋であった。さすがは貿易が盛んな国だ。アジアの骨董品や織物などが並んでいる。若干埃くさくはあるが、カトリーナのように姿を一時的に隠すのであればちょうどいいのだろう。部屋の中には他に机と椅子、近くにはソファがあった。


「ここに座って!」


カトリーナはそう言って、フリージアに椅子に座るように促した。そうしてフリージアはゆっくりと椅子に腰を下ろした。そして、カトリーナも腰を下ろして、フリージアと向かい合わせになるように座った。フリージアはカトリーナの方を見つめる。カトリーナの服装はとても可愛らしくそれでいて上品であった。髪にはペガサスと思われる意匠が組み込まれた銀色の髪飾りをしており、明らかに街にお忍びでくるような服装ではないとフリージアは思った。


「はい!これで全部だよ!これ、紅茶だよ!ゆっくりしていってね!」


と店主がパンを持って現れた。とても大きなカゴにぎっしりと詰め込まれたパンは圧巻であった。フリージアはこのようなご馳走は見たことはない。いつも質素な生活をしていたので、このような贅沢は今までしたことはなかった。さらに紅茶を淹れるために使われた茶器は明らかに高価なものであった。白の下地にコバルト顔料で色が乗せられている。綺麗な鳥が描かれた陶磁器にフリージアは思わずため息が出るほど美しいと感じた。


「ありがとう!おじさん!」


「あ、ありがとうございます!」


カトリーナに続いてフリージアもお礼を言った。


「おうよ!フリージア嬢ちゃん。この店のパンはどれも美味しいから味わってくれよな!」


と店主はフリージアに笑って言った。そして、店主は店のベルが鳴ったため、慌てて店の方へと出ていった。扉の閉まる音がしてから、カトリーナは話始めた。


「さあ、食べて!遠慮しないでね!」


「ありがとうございま、」


そのお礼の言葉にカトリーナは眉を顰め、少し不機嫌な顔をして言った。


「敬語!やめてよ!同い年ぐらいでしょ!」


「えっと、ありがとう?」


そうフリージアが言うと、カトリーナは嬉しそうにうなづいた。フリージアはパンを手に取る。そのパンの温かさが手袋を通して肌に伝わってくるのを感じた。そしてそのパンを二つに割ると、その温かさから湯気が出てきてフリージアは驚いた。その驚いた顔を見てカトリーナは笑う。


「フリージアってとても顔によく出るのね!石窯で焼いたばっかりだからあったかいはずよ!」


とカトリーナは言った。その言葉にフリージアはだからこんなにパンが温かいのかと納得した。そしてパンに齧り付くと小麦の匂いが鼻腔に充満してフリージアはとても幸せな気分になった。


「美味しい!」


「でしょ!」


そう言って、カトリーナも嬉しそうにパンに齧り付いた。しかし、カトリーナはゆっくりとパンを噛んだ後に冷えた声でこう言った。


「ねえ、フリージア。なんで、手袋をつけたままなの?」


その声は純粋になぜ手袋をつけたままなのかについて尋ねるものではなく、確信に迫るような物言いだった。その声にフリージアはゾッとする。そして、フリージアは警戒するようにカトリーナを見た。カトリーナの口が震えている。その震えた口のままカトリーナは


「……もしかして、フリージアはネクロマンサー……?」


その声にフリージアは立ち上がったが、カトリーナはその立ったフリージアの手を掴む。先ほどと同じように強引な手だった。しかし、先ほどとは違うのは確実に逃さないとまるで手に錘でものしかかっている様にフリージアには感じられた点だった。カトリーナの手は震えていた。ネクロマンサーを怖がっているのかどうかはわからない。そしてカトリーナは床に膝をつき、まるで神に祈るかのように顔を伏せフリージアの両手を掴み


「お願い、行かないで。」


とフリージアに懇願した。フリージアはその言動に戸惑いを隠せなかった。


「あなたは、私の救世主なの。」


その声は震えている。そのような状況でフリージアは罪悪感から手を振り解くことができずにいた。


「私を助けて……私の兄を生き返らせて欲しいの……。」


カトリーナはフリージアのネクロマンシーを欲している様だった。さらに困惑から口を開けずにいるフリージアに、カトリーナは恐れたのかさらに言葉を続けた。


「お金はたくさん出すから!お願い……。」


そう言われ、フリージアは戸惑いながらのカトリーナの手を握り返した。カトリーナはその行動から驚いたように顔を上げる。顔からは今にも大粒の涙が溢れかえりそうだった。


「分かった……やるから。生き返らせるの?」


とフリージアは聞いた。フリージアはカトリーナの様子を見て、ネクロマンシーを使うことを決めた。その言葉を聞いたカトリーナは今まで溜めていた涙が溢れかえり、


「ありがとう!ありがとう……。」


と膝をついたまま、フリージアの腰に手を回し泣き続けるのだった。

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