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それから女性はアリアが落ち着くまで一緒にいてくれた。
女性の帰り際聞いたのはあの子の事。
「あの子はまた来るの?」
「いや、もうここには来ないよ。どうした? 一発仕返ししておきたかったか?」
「違う、そんなんじゃない・・・・ただ、あの子って一体何なのかなって気になって?」
「あいつか? あいつは・・・・・」
女性はそこで言い淀んだ。
目線を落とし言葉を選ぶようにして女性は告げる。
「ただの助手だ」
そう答えてすぐ何かを思い出したかの様に付け加える。
「そうそう、帰って来たあいつがお前の事を褒めてたよ」
褒める? あの子の前でそんな褒められる様な事をした覚えがない。醜態を晒しただけ、それ以外に何をしただろう?
「お前は死なないってさ」
「それって褒めてる?」
「褒めてるさ。死ぬ間際にあれほど生き意地汚く叫べるなら問題ないって」
「絶対馬鹿にされてる」
「その意地汚さは勝利の証だろ。現状のお前にとって耐え難いほど強い死にたいという衝動に勝った証。あいつはそこを賞賛してるのさ、言葉足らずだがね」
女性はそれだけ言って帰っていった。
結局あの子が何なのか分からず終い、だけどそれ以上聞くのはやめた。
助手としか答えなかったと言うことはきっとあまり触れて欲しくないことなんだと思ったから。
でもあの子はただの助手ではないと思う。
そう思うのには訳がある。
アリアが思い出したのは両親の最後だけじゃない。
あの子とは一度会っている、あの地獄で。
親に救われなんとか生き残った、けどそれだけじゃアリアの死は変わらなかった。
あの時、銃撃が止んだ後、目の前の現実に気が動転して何も考えず動いたアリアは生きてることを気付かれて銃口を向けられた、でもその直後誰かがやって来て犯人をあっさり殺していった。
ナイフを手にして長く伸びたボサボサの金髪を振り乱しながら殺しを行う。その合間、前髪の隙間から垣間見えたのは緋色の眼。
ここで何日も一緒にいたあの子と同じ綺麗な眼。
あんなの普通の人間に出来る動きじゃなかった、躊躇いもなく人の喉にナイフを走らせる。
普通の生活をしている人間は多分ああはならない。
自分の不幸しか見えなくてあの子はちょっと変わっているけど幸せに暮らせている人間なんだと決めつけていっぱい酷い事を言ってしまった。
でもその子はきっと想像も出来ない生き方をして来たんだと思う。
その子に抱く感情は嫌悪でも恐怖でもなく感謝だ。
救ってくれて殺してくれた。
死だけに依存して他は何も受け入れようとしなかった弱い自分を殺してくれた。
アリアは決めている、次会った時はちゃんと「ありがとう」と感謝を告げようと。




