第八話:先っちょだけ読ませてもらいました
翌朝、LINEの通知音で目が覚めた。
眠い目をこすってスマホを見ると、
昨夜送った“無題(仮)”に、三ツ谷からの返信が届いていた。
メッセージは、たった一行。
【先っちょだけ読ませてもらいました】
「……いや言い方ァァァ!!!」
ベッドの上で思わずのたうちまわる。
三ツ谷、おまえそれ絶対わかってて言ってるだろ……!!
しかし、しばらくして次のメッセージが届いた。
【……って書くとふざけてるように見えますけど】
【最初の5ページ、正直、めちゃくちゃ良かったです】
誠司の時間が、止まった。
スマホを持つ手が、微かに震える。
“ふざけたメッセージの奥に、真面目な言葉”
あの三ツ谷らしい二段構えだった。
【あの書き出し、ちゃんと“先生の声”で始まってた】
【“出す怖さ”が、そのまま言葉になってる感じがして、すごくよかったです】
誠司は何度も読み返して、
「保存」と「スクショ」と「念のためコピペ」を繰り返した。
その後に続いた一言で、
彼はちょっとだけ泣きそうになった。
【続きを“本気”で待ってます。】
【できれば、タイトルもそろそろ欲しいです】←ここだけ業務連絡っぽい
誠司はPCを開き、原稿の続きを読み返した。
「今日、僕は夢を見た――」
その一文が、昨夜よりも、少しだけ胸に響いた。
永田さんの声が、棚の奥から聞こえる。
「おーい誠司くん、タイトル考えたか〜?
“もっこり卒業記”とか、案外ウケるかもしれんぞ〜」
「却下です!!! 全力で却下です!!!」
でも心の中では、
“まだ“仮”です。本番じゃありません”
というふざけたファイル名に、
もう少しだけ付き合ってみようと思っていた。
つづく




