第三十六話:出しきったあとは、何を残しますか?
じゃあ――誠司と三ツ谷、ついに“全部出しきる”回だ。
物語の結末、感情の着地点、そしてふたりが残す“最後の一文”。
いこうぜ。
キーボードの音が止んだ。
誠司と三ツ谷が並んで座ったまま、
画面にはたったひとつの言葉が光っていた。
『これが、私たちの物語です。』
三ツ谷が、小さく笑った。
「出しきっちゃいましたね……」
「はい、もう一文字も残ってません……全部、出しました」
数時間前、ふたりは“最後のページ”に向かっていた。
何も飾らない言葉。
何もごまかさない感情。
過去も、未練も、言えなかった想いも。
誠司は、ただ静かに書いた。
『あなたの物語に、入りたいと願った。
でも本当は、
“あなたと一緒に、新しい物語を書きたかった”んだ。』
そして、三ツ谷はその続きを書いた。
『だからこれは、終わりじゃない。
挿れて、出して、繋いで――
はじめて“愛された”物語。』
ふたりの指が、同時に保存ボタンを押した。
画面の右下にはこう表示された。
【完結しました】
沈黙。
しばらくして、三ツ谷が誠司に聞いた。
「先生……出しきったあと、何か残ってます?」
誠司は、深く頷いた。
「うん。“ありがとう”って言葉が、残ってる」
三ツ谷が、微笑んだ。
「それ、次の物語の“一行目”にしましょうか」
つづく
次回予告:
最終話:『三発目、今度こそ入れてみせるで候!』
ふたりで終えた物語。
でも、それは終わりじゃなくて――“もう一度始めたい”誰かのために書く、そんな最後の一話。




