第二十九話:やっと、同じタイミングで出せそうです
「せーの、で“出す”って、人生で初めてかもしれない」
誠司は深夜のPC前で、独り言ちた。
共著企画、第1回公開まであと数時間。
今回は、“ふたりの視点”を交互に描いた短編。
同じシーン、同じ出来事。
でも“彼”と“彼女”では、こんなに受け取り方が違うんだ、という構成。
三ツ谷が最後に送ってきた一文。
【先生。今回は“同時に出して”いいと思います】
【……というか、“同時じゃないとイヤ”になってきました】
「どこまでエロく読める文章送ってくるんだこの人は……!」
とは思いつつ、誠司も内心――
「たしかに……一緒にイけるって、めちゃくちゃ気持ちいいな……」
と、原稿で実感していた。
朝方、誠司がPCに打ち込んだ公開ボタンは、
二人が事前に決めた**“同時時刻”ぴったり**に押された。
【投稿しました。気持ちよく出せました】
【こっちもです。初めて“完全に合った”気がします】
【……なんか、クセになりそうですね】
【私もです】
SNSでは、すぐにタグが立ち上がった。
#二人で出した小説
#先に読んだら負け
#タイミング神
誠司は布団の上でスマホを握りしめながら、
久しぶりに“出したあとの爽快感”に包まれていた。
「やっとだよ……やっと“誰かと一緒に書けた”って、実感がある」
つづく




