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第二十二話:挿れる前に、ちゃんと濡らして
三ツ谷と会うのは、今週3度目だった。
今日の目的は「次の構成打ち合わせ」。
場所はおしゃれなカフェ。
でも誠司は、なぜか緊張していた。
「ここ……BGMも水音系だし、照明もなんか湿ってるし……」
「創作の“前戯”みたいな空間ですね」と三ツ谷が笑ったとき、
ホントに水こぼしたかと思った。誠司の汗だった。
三ツ谷が小声で切り出す。
「先生、“前に挿れるもの”って、何だと思います?」
「……え、ちょ、なに……下ネタのクイズ……?」
「情熱ですよ。“熱いまま入れたら”、痛いだけですから」
誠司、また無音で爆発する。
話は本題へ。
「次の話、“恋”入れましょう」
「主人公が“自分の書いた物語”に恋をする話。
それって、作家として一番エロいと思いませんか?」
「あの……三ツ谷さん。
いま僕に“自分のこと”話してません?」
三ツ谷は笑って答えない。
誠司はその帰り道、
空いたスタバでPCを開き、
新たなプロットにこう書き込んだ。
『彼女は、自分の物語を愛してくれる編集者だった。
でも彼女自身の物語は、誰にも読まれていなかった』
「……挿れる前に、ちゃんと濡らして……
相手の気持ちも、作品も……その準備、忘れてたな」
つづく




