第十九話:出し入れのバランス、勉強中です
誠司、ついに連載第1話を書き上げた。
タイトルはまだ仮。でもラスト1行には手応えがあった。
「……よし。入れたまま、終わらせた」
ところが、編集部に送って1時間後――
三ツ谷からの電話が鳴る。
「先生……一話目でクライマックス迎えてどうするんですか。」
誠司は机の前で正座していた(誰も見てないのに)。
「いや、その……“中締まり”を意識したら、盛りすぎたというか……」
「途中から筆が止まらなかった、って感じですね?」
「そう……そうなんですよ、止められなかった……!」
「……まぁ、そういうとき、女性の方が上手にコントロールしますよ。」
「なんで急にジェンダーバトル!?」
そのあと、ふたりで深夜のファミレスへ。
原稿の赤入れと打ち合わせという名目だったが――
「先生、言葉の“入れ方”がちょっと強引でしたね。
もっとじわっと、読者の中に染み込むように…こう…」
「やめてください何の話してるかわからなくなってきました!!!」
三ツ谷は真顔でコーヒーを飲んだあと、小声で言った。
「でも……“最後まで入れて”くれて、ちょっと嬉しかったです」
誠司、無音で爆発。
「……もしかして、この人……“原稿”じゃなくて、俺のことも編集してないか?」
店を出る頃、三ツ谷がふと立ち止まり、
スマホを見せてきた。
【読者感想:「続きを、早く“入れて”ください」】
「いや誤読すごいな!?!?!」
つづく




