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好きだった子が飛び降りようとしていたら!?

作者: ice

 「それじゃあ一緒に飛び降りちゃう?」



少し震えた声でそんな言葉を放った。そこには少しだけ本心(孤独)が感じられた気がした。


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 中学2年生になった宮野凛はいつも通り部活動に明け暮れていた。凛は県内でもトップの進学校に通っており、サッカー部に所属している。顔はそれなりに整っていて身長も高く運動神経もよかった宮野には好きな人がいた。いや、この前まで好きだった人がいた。


 なぜ今は違うのかって?別に振られた訳じゃない。ただ自分が進学校に行ったため喋る機会が減っていき、気持ちが薄れてしまったからだ。


 帰り道の途中、橋の上に好きだった人…こと小林彩月が立っているのを見つけたのは蝉が鳴き始めた頃だった。


 彩月は小学校の時と変わらず空色の髪を後ろで一つにくくり、大きめのパーカーを着ていた。後ろ姿からでもわかるほど優しくて明るい様子は昔、そして今も凛を魅了していた。


 自転車を走らせて彩月の方に近づいていくと彩月は月色の瞳を下にむけ、つらそうな表情をしているように見えた。


 「久しぶりだな。何やってるんだこんなところで。」

 

 そう声をかけた俺に彩月は気づいて俯く顔を上げた。やっぱりその顔はつらそうな表情で、りんの好きだった大きく口を開けて笑う姿は想像できなかった。


 「実は…飛び降りようとしてたの…」


 彩月から発せられた言葉は凛の耳を疑うようなことだった。それから彩月は少し渋い顔をしつつも、でもちょっと安心したように飛び降りようとした経緯について話してくれた。


 話によると彩月の通う中学校には群を抜いたイケメンがいるらしい。そいつは女子にとても人気で実際に彩月も好感を持っていたらしい。

 しかし、そのことを知ったのかそいつが勝手に彩月と付き合ってると言い出したそうだ。それだけならよかったがそいつはさつきに付きまとうようになり、挙げ句の果てにはキスを迫ってきたのだという。もちろん彩月はそれを断ったのだが、そいつはその態度が気に入らなかったのか彩月についての嘘の噂話を広め出したのだという。

 その話はすぐにそいつの取り巻きの女子たちに広まり、彩月がいじめられているというわけだ。


 「何か俺にできることはないかなー…」


 つい考えていたことが口から飛び出してしまった。


 「凛には何もできないよ。学校が違うからね。それに…言ったじゃん、飛び降りるって」

 「本当に何もできないの?」

 「うん。本当に…」

 

 ただ単純に悲しい気持ちだった。自分の好きだった笑顔がこの世界からなくなってしまうのは。


 「でも、できれば死なないでほしいな。この道から帰れなくなるかもしれないし。」

 「自殺を引き止める理由それ!?それぐらいちょっと遠回りすればよくない!?」

 「いやでも疲れるし…」

 「凛ってそんなめんどくさがりだったっけ!?」

 

 凛の軽い冗談に彩月は口を大きく開けて笑った。凛が好き‘’な‘’笑顔だ。そう凛はまたあの感情を思い出してしまった。


 そして凛はこの笑顔を、彩月(好きな人)を絶対に守りたいと思った。


 それは余計なお世話かもしれない。無駄なことかもしれない。けどそれはとても大事なことで、必要なことだった。

 

 「ねぇ、ここから飛び降りたらどうなるのかな?」


 少し彩月の表情が暗くなった気がしたそれでも彼女は平然を保っているかのような大きな素振りで橋の下の方を向いた。


 「そりゃ、死んじゃうんじゃないのか?」

 「そうじゃなくて!飛び降りて死んじゃったらそのあとはどうなるのかってこと」

 「そしたら腐るだろうな。」

 「そうじゃなくて!ていうか私なんで火葬されないの!それとも見つけてもらえずにそのまま腐るってこと!?」

 「見つけてほしいのか?」

 「それはまぁ…うーん」


 彩月は黙り込んでしまった。彩月に少しでも笑ってほしくて少しからかってみたが、気に障っただろうか?


 けど彩月はそのような感じもなく、次は少し真剣な顔をしてもう一度聞いてきた。


 「それよりも!ほんとに飛び降りて死んじゃったら私はどうなるのかな?」

 「それは俺もわからんな。死んだ訳じゃないし。」

 「だよね〜」

 「でも確かに気になるよな〜」

 「そう!気になるんだよ!」

 

 明るく放った”気になる”という言葉には不安が隠れているような気がした。何に対する不安なのか?そんなこと考える暇もなく放たれた次の言葉は少し意外だった。

 

 「それじゃあ一緒に飛び降りちゃう?」


 彩月は人を死に巻き込むことなんか絶対にしないと思っていた。だからこの言葉は笑い話の延長線上にある冗談だとすぐにわかった。


 しかし凛は少し違和感を感じた


 『それじゃあ一緒に飛び降りちゃう?』


 彩月は少し震えた声でそんな言葉を放った。そこには少しだけ本心(孤独)が感じられた気がした。


 そう感じた凛は何もいえないまま黙り込んでしまった。その様子を心配した彩月は「流石に冗談だよ」と言ってこう続けた


 「でも今日は飛ばないでおこうかな」


 凛が安心した表情は彩月にも伝わっていたと思う。それぐらい心の中でも安心したし、嬉しかった。だからこそこれからもずっと安心できるように、少しずつでもいいから彩月を飛ばせない日を作って増やしていこうと考えた。


 「明日もここにきてくれるか」


 と聞くと彩月は凛の大好きな笑顔を咲かせて

 

 「いいよ!きてあげる!」とうなずいた。


絶対この笑顔を守り抜くこれからもずぅーっと

日が暮れて暗くなってきた空は月に彩られていた。



 

書きたい!と思ってなんとなく書きました。

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