1.蜘蛛になりました
久しぶりに外に出た気がする、近くの書店にすら向かうのは数ヶ月ぶりだ。
日がさす、日光を直に浴びた目は縮こまっていた。
真っ昼間だ、人気などありはしない。なのになーんか嫌な予感がする。
本は買えた、数ヶ月人と話してなかったせいか、店員と話すだけでも一苦労だ。
帰り道、家の鍵を占め忘れていたことに気がついた。少し焦りながら帰る。
‥‥‥嫌な予感は当たったらしい、ドアの鍵が内側から閉まっている。庭の窓から様子を見ようにもカーテンが閉まっている。
とりあえず110番するために公衆電話に向かおうとした。
その時、窓から誰か出てきた。刃物を持っていた。まともに運動をしてこなかったせいか足が動かない。
いつの間にか体中が赤く染まっていた。
‥‥‥引きこもりの僕が空の下で死ぬとは
声にならず、意識が朦朧とした中で空を見上げる
‥‥‥生まれ変わったら、雲にでもなりたい
「おめでとうございまーす!」
‥‥‥声が聞こえる、気のせいか
「おーめーでーとーうーごーざーいーまーす」
‥‥‥気のせいではない、確かに聞こえる
目を開けてみるとそこには見知らぬ女が立っていた。
白髪のロングヘア、死神のコスプレをしているみたいだ。
「雲駆 葵さんですね!」
名前を知っているらしい
「すみません、どちら様ですか」
訪ねてみる。
「見りゃわかるでしょ!死神ですよ」
‥‥‥死神か、思ったことをそのまま返す。
「僕は天国に行けないんですか?」
「いきなりだね、行きたくないんでしょ?」
‥‥‥ふと思い返す、そういや言ったな雲になりたいって
「‥‥‥君はね、選ばれたんだ」
「何にですか」
「‥‥‥神は100年に1度、死んだ人の願いを叶えるんだよ。それで今回は君が選ばれたってわけ」
どうやら僕は相当幸運らしい。
「ただし、死ぬ直前に願ったことしか叶えられないよ。君の願いはクモになりたいだっけ?」
前言撤回、どうせ叶えてもらえるならもっと楽しいことを願えばよかった。
「‥‥‥そうです」
「クモになって何をしたいの?」
唐突な質問に驚くも、思っていることを答えた
「世界中を旅したいです」
‥‥‥僕は今まで閉鎖的な空間で生きてきた、だから第二の人生は開放感を感じたい
「どんなクモになりたいの?」
「大きくて、姿形を変えられる雲になりたいです。」
「ふむふむ…世界中を旅できて大きくて姿形を変えられる…」
なにか1人で考えてるようだ、もう1分ほどたった
「オッケー準備できたよ!目を閉じて」
言われたとおりに目を閉じる
「手を叩いたら目を開けてね」
死神はよくわからない呪文のようなものを唱えている
‥‥‥手を叩く音がした、目を開くとそこには壮大な空!
ではなく周りには木々が突っ立っていた
‥‥‥手足の感覚に違和感を感じる、なんか多くね?
この違和感により1つの仮説が立てられる
‥‥‥これって雲じゃなくて蜘蛛じゃね?
まさかあの死神、聞き間違えたのでは……
そんなことを思っていたらなにか水たまりのようなものを見つけた
‥‥‥覗いてみるとそこには蜘蛛がいた、しかもかなり大きい
「蜘蛛じゃねぇかぁぉぁ!!!!!」
それから僕は暴れて周りの木々を踏み倒した。
周りの木々をほとんど倒し冷静になる。
‥‥‥どうやら僕は本当に蜘蛛になってしまったらしい
しかもかなり巨大、5m位ありそうだ
少し思い出した、
‥‥‥そういや空に浮く雲って言わなかったな、
かなり後悔している。
‥‥‥こんな体でどうすれば
などと思ってる時、足音がした。しかも10人以上の
どうやら木を倒した音が近くの村に聞こえたようだ。
ただ、こんなに大きい蜘蛛を見たらきっと逃げるだろうと思い、その場から避ろうとは思わなかった。
が、やってきたのはただの村人ではなく、鎧や剣を身に着けた剣士達だった。
剣士達の中の数人が魔法らしきものを唱える、それにより結界のようなものが張られた。
剣士達は結界の外で話し合っている。蜘蛛に人語は理解できないと思って僕に聞こえるくらいの声で作戦を立てている。
どうやらこの結界は魔物を逃さないための結界で、村に被害が出る前に仕留めるんだそう。
剣士達が結界の中に入ってきた、と思えば魔法を唱えてきた。空気の刃で足が一本落とされる。が、痛くない。しかも数秒後に斬られたところから足が再生していた。
「化け物め」
魔法を唱えた剣士が吐き捨てる。
剣士達の猛攻撃が始まる、結界を維持してる4人を除き7人が一斉に足を狙い攻撃してきた。綺麗な連携により足が4本落とされる。すぐに再生するものの反撃する暇が無い。
斬られてない足で攻撃するも当たらない。
足が再生するので、剣士達は胴体を狙ってきた。どうやら胴体は再生速度が少し遅いらしい。かなりピンチだ
この状況を打開するには‥‥‥ 魔法しかないようだ
剣士達の話し合いに固有魔法という言葉が聞こえた。魔物の種類によって違うのだそう。ならば僕にも必ず使えるはずだ。
そうして体内のあらゆる部位に力を込めると、どうやら口先に
自分にもあまりわからない力が集まってきている。きっとこれが剣士達の言う『魔力』なのだろう。
僕は魔力を口先から放出した、すると口先からネバネバした糸が出てきた。糸は剣士2人に当たり、どうやら動けないようだ。他の剣士達が救助に向かう、攻撃の手は止まった。
剣士達は糸にくるまった2人を運び結界を出る。どうやら一時退散するようだ。結界を維持する剣士達も退散するため、結界は維持に人が必要なく、破られたらわかる結界だそうだ
剣士達は村へ帰っていった‥‥‥
さて、次に奴らがやってくるまでになんとかしなければ