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魔法の練習をしよう

「いえーい!!おはようございます!!」


 私、レイラはそう言いながら扉を開け放った。

 しかし館はシーンと静まり返っており、誰もいないのかと思わされる。


「あれー?もしかしてお留守かな」


 館へとズカズカ入り、昨日入った階段下の部屋を開ける。

 しかし、そこにイリスはいない。


「どこにいるんだろ」


 他の部屋も見てみることにしよう。

 例えばこの階段を昇った先にある右の部屋とか。

 扉を開けるとそこにはベッドがあった、恐らく寝室なのだろうな。

 ベッドの方を見るとイリスが気持ちよさそうに寝ていた。

 寝ている姿はまるで子猫みたいだ。


「こうしてると可愛いのに」


 今日はイリスに魔法を教えて貰いに来たんだけど……これは起こすべきか。

 よし、ちょっと一声かけてもし起きなければ起きるまで待つことにしよう。


「イリスちゃん〜朝ですよ〜」


「……」


 は、恥ずかしい!!

 さすがの私も恥ずかしい!!

 こう、頑張って出した声が無反応だとなんだと羞恥心が湧き上がる時ってあるよね!!!


「……むにゃ……あと五分……」


「……起きてんじゃん」


 可愛らしい声で返事をされた。

 イリスは眠そうな眼で私の方を見つめてくる。


「うん?もうちょっと寝かしぇてって言って……」


 青い瞳で私を見つめた後、しばらく停止してしまった。

 すると彼女の白い肌がだんだん赤く染まっていく。


「な……ななな!!何でいるの!!」


 彼女は真っ赤な顔で飛び起き、壁にもたれかかった。

 おそらくパジャマだろう。真っ白な半袖のワンピースを着ている。


「と、扉空いてて……それに今日は魔法を教えてくれるって……」


「…………着替えるから出てって」


 おい。さては忘れていたな。

 仕方ないので部屋から出て行き、廊下で待つことにした。


 しばらくするとイリスは勢い良く扉を開け放ち、出て来た。


「さっ、行こっか」


 ちょっと不機嫌そうなイリスは私にそう言うと、階段を降りていった。

 ちなみに今のイリスの格好は、黄色のTシャツとショートパンツだったけど……もしかして服装とか気にしないタイプの人間なのかもしれない。


「待って待って待って」


 あとイリスはものすごく歩くのが早い。

 追いつくのを意識しないとすぐさま置いてかれてしまう。

 館の裏庭に出ると、イリスは振り向き言う。


「昨日渡したの持ってきてる?」


「あるよ。これでしょ」


 私はポケットからカードの束を取り出し、イリスに見せる。


「そのカードには魔法が埋め込まれているから、本人の使い方次第で色んなことができるよ」


「なるほど……こんな凄いもの貰って大丈夫?」


「別にいいよ。私は魔法使えるし」


 そう言うとイリスは右手を木の方へ差し向けた。


「魔法を扱うのに一番大事なことは想像力だよ。例えば目の前にあるこの木を今から突風で倒すには、木が倒れるくらいの風をイメージしないといけない」


 なるほど想像力ね。

 それなら誰にも負けない気がするぞ。


「そして十分にイメージしたら詠唱。詠唱は基本的に省略するのが基本だけど、レイラのために今回は省略せずやるね」


 そう言うとイリスは目をつぶり、口を動かす。


「風よ。かつて天へ刃向かった戦士の如く、その力を持って答えよ」


「風魔の呼応」


 そう言い終えた瞬間、どこからか風が吹き荒れ目の前の木をへし折ってしまった。


「おぉ……」


 私は思わず感嘆の声を上げる。


「こんな感じでやればいいよ」


「なるほど……って説明それだけ?」


「説明するも何も、ただ今の通りやればいいってだけ。そう難しくないよ」


 イリスって実は感覚派だな。

 ちょっと不安を覚えながらもカードの一枚を手に持って目を閉じる。

 想像力……想像力……

 私は魔法を使って……


 目をカッと開け呟いた。


「竜よ。身に余りしその力、我が為に役立てよ」


「竜王の牙」


 その言い終えると、目の前が白く輝いたのが一瞬見えた。

 直後、何かがぶつかったような音が辺りに響く。

 何が起こったのかよく見ると、目の前にあった木の真ん中が斜めに切り裂かれて倒れている真っ最中であった。

 想像よりすごい威力だ。

 するとイリスは隣でパチパチと拍手をしだした。


「問題なさそうだね。やっぱり魔女の魔法が埋め込まれてるだけある」


 私は改めてカードを見つめる。

 いやこれ普通に凄いものじゃん。

 そう感心していると手に持ったカード一枚は一瞬で燃え、消え去ってしまった。


「うわっ」


「そのカードが使えるのは一回きり。あんまり無駄使いしないようにしてね」


「分かったよ」


 カードは一枚につき一回しか使えないのか。

 便利だからちょっとだけ日常生活で使おうかと思ったのに。


「それじゃあ私はこれで」


「えっ、もう行くの」


 イリスは用は終えたとばかりに屋敷に戻ろうとする。

 さすがにこれで終わりは寂しすぎないか。


「魔法についてもう私が教えられることは何もない。それにあんまり私に構ってばかりいると、村の人に煙たがれるかもよ」


「私はそういうの気にしないタイプの人間だから大丈夫だよ」


「はぁ、相変わらず変わった人。これ以上私に何を求めてるの」


「求めるものは別にない。ただちょっとだけでいいからイリスと遊べたらなと思って」


「……正気?」


「もちろん」


 もちろん嘘じゃない。

 何となくでいい。

 ちょっとでも遊びみたいなことをして、少しづつ心を開いて欲しい。

 そう私は思うんだ。


「どこ行くの?」


「そーだな、ひとまず私が住んでる家でもどうかな。イリスの家に招待してくれたんだし、今度は私の家に来て欲しい」

 

「まぁそれくらいなら」


 こうしてイリスのお家寄ったあとは、私のお家へ来ることになった。

 お家デート再び!!

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