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決戦!絶望へと誘う黒の支配者④

 私、レイラ・ユリウスは戦場に立ち、目の前の敵を見つめる。

 イリスが少しボーっとしていたのは気になるが、今はそれどころじゃないと気にしないようにする。

 現状を確認しよう。

 目の前にたたずむのは先ほどまでとは明らかに様子の変わった黒鳥。【 シュヴァルツ・ヘルシャフト 】。

 羽が鱗を纏ったかのように黒く輝いているし、さっきのイリスの斬撃を模倣した技など先ほどは使わなかった。まさか、この黒鳥が扱う魔法は天気だけでなく、模倣(コピー)

 いや、だったらイリスの斬撃だけでなくカモミールさんの結界術やエーデルワイスの炎龍も模倣(コピー)できるはず、それをしないのは、模倣(コピー)できるものには限りがある?

 ……考えすぎても仕方ない。今はとにかくこの状況を打破しないと……。

 

 私は口にくわえていたカードを取り、唱える。


「風よ。たった今、天空の加護を授かり、悪の使い魔を討伐せよ。さぁ、渦巻け」

 

 風が呼応し吹き荒れるのが分かった。

 黒鳥もそれに気づき、再び斬撃を放つため、風を周囲に集めているのが分かった。

 私は思わず、笑みがこぼれる。

 

「じゃあ、火力勝負でもする?」

 

 私は渦巻く風を剣に纏わせ、大きく振りかざす。

 

「だあああああああああああああああああああ!」

 

 すると剣の軌跡に沿って、風の斬撃が放たれる。

 黒鳥も風の斬撃を放ち、二つの斬撃が空中でぶつかり合う。

 鋭い音が鳴り響き、衝撃波がこちらまで来る。

 

 結果は相殺。

 お互いの攻撃が威力を消しあい、攻撃が掻き消えてしまった。


 (イリスの技を模倣したばかりだから、威力はそこまでないのかな?ただ、あの雷球をまた出されたら厄介だな)

 

 (でもきっと、あの技には何か弱点があるはず、あの場では見えてなかった何かがあるはず)

 

「イリス。いける?」

 

「あ!うん」

 

 イリスは私の呼びかけにびっくりしたような反応した後、気を取り戻すようにこちらを見る。

 やっぱり、少しボーっとしてるような……。大丈夫だろうか。

 

 やるべきことは簡単だ。防御を強化されてるとはいえ、小さな攻撃でいいからそれを蓄積させていけば……。

 

「ねぇ、レイラ」

 

 突然、後ろからイリスの呼び声が聞こえる。

 

「何?」

 

「レイラはなんで私のことを助けるの?」

 

「理由なんてないよ。ただ助けたかったから、助けたかっただけ」

 

「!……でもそんな理由で?」

 

「しいていうなら……初めて出会ったとき、寂しそうな眼をしていたからかな」

 

「理解出来ないよ。そんなことでここまでしたの?」

 

「……正直なところ自分でもよく分からないよ。もしかしたらただのエゴなんじゃないかって思うこともある。でも……それでもね、イリスのことをもってしているのは本当だよ」

 

「……!」

 

  私は少し考える。

 いや、本当にそれだけ?


 一つだけ思い当たることがある。

 何も覚えていないけど、心の奥深くに残ってる罪悪感が。


「いや、もしかしたらそれだけじゃないのかもしれないね」


「それだけじゃない?」


 イリスが不思議そうに私を見つめる。


「私、記憶がないの」


「え?」


「幼少期の頃の記憶が、だから私がどんな人達の元で生まれて、どんな人達に育てられたかを知らない」


「それって記憶喪失ってこと?」


「記憶喪失……なのかな?どうなんだろう」


 自分が記憶喪失だなんて考えたことがなかった。

 だって記憶がある時には既にそうなっていて、生き残るのに必死だったから。


「じゃあ、最初の記憶があるのは?」

 

「えっと……最初の記憶は、ただ何もない平地に座ってた」


「え?」


「草木も生えていない、ただ土色の平地に座り込んでた。そこからは生き残るのに必死だったからな。雑草や小動物とか食べれるものを食べて生きてたからな」


「……」


 イリスは黙り込んでしまう。それはそうだ。今までこんな話して来なかったから。

 急にこんな重たい話をしたら、なんと返せばいいか分かんなくなっちゃうよね。


 私は手をパチンと鳴らし、続けて言う


「でも、気にしなくても大丈夫。だって私は今も生きてる。どれだけ苦しくても今を生きてるんだから」


「……!で、でも!」


 イリスは必死に続けようとするが、私はそれを静止する。


「記憶がないんだけど、どこか頭の奥深くに罪悪感がずっとある。きっと私は、どこかで誰かを傷つけたんだと思う。だから、誰かを傷つけ多分、誰かを助けたいんだ」


 それを聞いたイリスは少し驚いた顔をした後、満足そうに「うん!」と呟いた。、


 その様子を見て、何故か私の胸はチクリと痛んだ。


(嘘つき)


 いや、嘘じゃない。

 記憶が無いのは本当。

 本当に何も覚えてない……。


 ……今はこんなこと考えてる場合じゃない。


 私は頭の中から沸き上がってくる考えを必死に押し殺す。

 昔から、こういったことを考えると、何故か胸がざわつく。

 理由は分からない。

 けど、なぜか罪悪感だけが湧き上がってくる。


 ……本当は心のどこかでイリスを助けたのは、贖罪なのかもしれないという思いが湧き上がってくる。


(うるさい)


 こんなこと考えたところで沼にハマっていくだけだ……。


 考えるな。

 考えるな。

 考えるな。


 私はポケットにしまったカードを取り出す。

 先程、吹き飛ばされた時の衝撃で服はボロボロ。

 けど、不思議と身体に傷はひとつもない。

 カモミールさんが治してくれたからだ。


(カモミールさんの魔法だけで、傷一つ無くなるものなの?本当に?)


 だから私は大丈夫。

 カードを手に次はなんの魔法を扱おうか考える。


(魔法だけで直らないものだと思うけどなぁ)


 ……うるさい。

 たまに、頭の中に私の声とは別の違う声が聞こえてくることがある。


「とりあえずあいつの翼ひとつでも切り落としてやる!」


「分かった」


 私とイリスは共に黒鳥の元へ歩き出す。

 黒鳥の魔法が発動する予兆が現れる。


 黒鳥は口から火炎を吐き出す。

 それを私とイリスは左右にそれぞれに別れ、避ける。

 黒鳥の元へと駆け出す私たち。


「イリス!あいつの元に何とか私を飛ばせない?!」

 

 イリスにそう問いかける。

 黒鳥は天高くに飛んでおり、地上から仕掛けるのは難しい。

 何とか、あいつの元まで行けたらどうにかなるのに。


「任せて」


 イリスはそう言うと……。


「よいしょっと」


 ……私を抱き抱えた。

 いや、正確には私をお姫様抱っこしていた。


「え?ちょ?!」


 そしてそのままイリスは……


「どぉぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁ!!!!」


「う、うわぁぁぁぁぁぁ?!」


 私を黒鳥の元まで投げ飛ばした。

 黒鳥は、私を投げ飛ばしてくるなんて予想外だったのだろう、攻撃をやめ、飛んでくる私を呆然と見つめてくる。


「な、何も投げ飛ばさなくてもいいじゃん?!」


 いや!よく考えたらこれはチャンスだ!


精錬剣(トランステーション)


 私は剣を精錬し、空中で身を捩る。


「あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」


 剣をそのまま黒鳥の首根っこに突き刺さる。


「キアアアアアアアア!!!」


 黒鳥はまるで人間のような悲鳴をあげ、私を振り落とそうとしてくる。


 確実に悶絶している。

 攻撃が通っている。


 そう確信した私は、自然と笑いが込み上げてきた。


「意外といけるじゃん!!」


 私はそのまま両腕で剣を握りしめ、黒鳥の首に刃をめり込ませると、まるで硬い木を切るように、刃を往復させる。


「オーエス!オーエス!」


 しかし、そんなことは許さず、黒鳥はつばさをこちらへと振り下ろしてくる。


「ぎゃあ?!」


 私は間一髪潰されずに済んだが、剣を持つ手を離してしまう。


「レイラ、ありがとう」


 イリスがそう言うのが聞こえてくる。

 イリスの方へ振り向くと、イリスが小さな短剣を携えて、黒鳥の方へと跳躍していた。


 イリスは短剣に風を纏わせる。


「隙を作ってくれて!!!」


 黒鳥の足に短剣を突き刺す。


 黒鳥は再び声にならない叫び声をあげる。


 イリスはそのまま短剣を抜くと、再び突き刺す。

 それを何度も行う。

 短剣を何度も突き刺しながら、イリスは進んでいく。

 足の筋肉の中に潜ったりしながら、片足全てに短剣を突き刺し、引き抜き、突き刺すを繰り返す。

 突き刺した箇所から黒鳥の血が絶えず噴出する。

 イリスはそれを瞬きする間に終わらせる。


 黒鳥は足を振り、イリスを振り落とす。


「おっと」


 イリスは上手く直地する。


「まさか、このまま終わるだなんて思ってないよね?」


 イリスはそう言うと、パチンッと指を鳴らした。


 すると、黒鳥の片足から吹き出していた血が止まる。

 ふると……


 バッシャア!!!


 まるで水風船が破裂したような音を立て、黒鳥の片足が爆散した。


 黒鳥は驚き、バランスを崩して地面へと落下する。


「うおっ!!」


 私はその衝撃で振り落とされてしまう。

 イリスみたいに綺麗な受け身を取ることができず、背中を強打してしまった。


「ぐっ!痛あぁい!」


 ジンジンする背中の痛みに耐えつつ、イリスの方を見る。


「今の魔法。私が短剣を突き刺すだけで終わると思う?今の短剣には風が纏ってあったの。その風が短剣を突き刺した際に、あんたの足の中に残り続け、今それが足から外へと向けて、振り出させるようにした。」


 おそらく、セリエとイリスが初めて戦った時、イリスがセリエの作った、水の蟹を短剣に突き刺し、爆散させていた。


 おそらく、あの時の魔法を使ったのだろう。


 私はイリスを見つめながら、勝ちを確信する。


(きっといける……今の私たちなら、先代の魔女を殺したというこいつに勝てるはずだ……!)

明けましておめでとうございます!!


気がつけば前回の更新から半年以上経っていました……?!


2025年は非常に忙しく、メンタル不調も重なって気がつけば、全く書けず年が終わりました……。


とりあえず続きを頑張って書いていきますよ……!


俺たちの戦いはこれからだ!!!

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