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決戦!絶望へと誘う黒の支配者③

 奴はスピードを保ったままこちらに突っ込もうとしていた。

 さすがに1人でこれを受け止めるのは難しい。だが!


「イリス!」


「言われなくたって!」


 私がイリスの名前を呼ぶと同時、イリスは魔法を扱い目の前に風の(バリア)をいくつも作り上げる。

 イリスの風魔法の精度は騎士団長の立場である私から見ても非常に高い。

 正直、私がイリスのレベルに立つことは相当難しいだろう。

 当然他の団員もそうだし、魔法を専門としている魔法研究省でも難しいだろう。


 奴は怯むことなくスピードを維持し続ける。


 でもイリスの精度に追いつくことが難しいなら、他の方法で勝負すればいい。


 首元に炎龍が噛みつく。

 私は手を奴の方に差し向け、指を鳴らす。


火炎分散(クラッシュ)


 龍は体を膨らませたかと思うと、音を立て爆発した。

 さすがにこの事態を想定しなかったのかスピードを大きく落とす黒鳥。

 奴は体を傾かせ、まるでこちらに倒れこむかのような姿勢で突っ込み、イリスの風壁(バリア)をまるでガラスのように叩き割りながら転がってきた。


「うっ。こっちに来る!」


 イリスは焦りで声を荒げるがそんな心配など無用だろう。


「させない!」


 背後から予想通り声が聞こえてきて、奴の体が赤い結界に閉じ込められ、停止する。

 声の正体はカモミール。レイラの治療を終えたのか気がつけばこちらの方まで来ていたのだ。


「さっすが。結界術の使い手だな」


「それ褒めてる?」


「褒めてるさ」


 カモミールは結界術の使い手だ。赤い結界は結界内のあらゆる物体の時間を停止させるもの。


「外は?」


「私たちがいる空間もそれとは違う結界で囲ってあるよ。これで被害は結界外まで広がらないはず」


 カモミールが扱うのは赤い結界だけではない。いま私たちがいる空間は赤い空間とは別に青い結界で覆ってある。青い結界は結界内に存在する物体の時間の流れを変え、結界外の時間とは違う流れにする結界。魔女捕獲作戦の際、カモミールがレイラを閉じ込めた結界だ。ようは結界内と結界外で別世界の状態になっていると想像してもらえると分かりやすいだろう。この結界は術者本人が解除しない限り解けることはない。

 なお、青い結界の場合は術者が指定した物体のみの時間の流れを変えることが出来る。その際、指定されなかった物体は赤い結界の効果と同様に、時間が停止される。


「仕事が早い」


「もー。本当にすごいと思ってるの?」


「思ってるよ。現に!」


 私は右手を横へ振りかざし、炎の矢を作る。

 矢が発射がされ、赤い結界に当たる寸前で結界が解除され、奴の胴体へと命中する。


「こうして奴は一時的とはいえ行動不能の状態にある。ここから一気に削り切れば!」


 炎を剣にまとわせ、奴の側頭部へと向かう。

 剣を振りかざし、片方の目に思いっきり突き刺す。

 奴は意識を取り戻し再び動こうとするが、結界の効果で動くことは出来ない。


(このまま奴の命が尽きるまで切り刻み続ける!)


 イリスも今がチャンスと思ったのか風の粒子で小さな剣を2つ生成しこちらにむかってくる。

 剣を引き抜き違う箇所に刺そうとしてその時だった。

 奴はもう片方の目を開く。

 そして口元から何かの蒸気のようなものが舞い上がる。


(まさか!?)


 私は距離を取ろうと後ずさった瞬間、周りの空気が歪んだように見えた。

 そして口元から猛威力の火炎放射(ブレス)が襲い掛かってくる。

 その火炎放射(ブレス)は広範囲を次々と飲み込んでいった。


「まずっ!」


「きゃっ!」


 それはエーデルワイスだけでなく、カモミールの位置までと届いていた。

 辺りの景色がだんだんとひび割れていく。

 それはカモミールの結界が崩れた合図だった。

 音を立てて結界は粉々に崩れ散る。


「みんな!」


 イリスは声を上げるが、返事をするものなどいない。

 ……ように思えた。


「だぁぁぁぁいじょうぶだぁぁぁぁ!」


 炎が止まったかと思った瞬間、声が聞こえてくる。

 声の方へ顔を向けると、カモミールを守るように立ちふさがっているエーデルワイスがいるのが見て取れた。

 エーデルワイスの服はいくつか焦げ目が見えるが無傷のようだった。当然守られていたカモミールも。


「この程度!」


 エーデルワイスが叫んだ瞬間、黒鳥は立ち上がり再び双頭の口から火炎放射(ブレス)を行おうとする。

 エーデルワイスは笑い、叫ぶ。


「だったら火力勝負と行こうか!」


 エーデルワイスは矢を構えるような姿勢を取る。

 すると、そこに火炎の弓が形作られる。


「っ!」


 奴が火炎放射(ブレス)を行う直前に矢を発射し、すぐさま別の魔法を発動する。

 矢は奴の口元へと吸い込まれ暴発する。奴は苦しみつつも火炎放射(ブレス)を行う。


火炎道(バージンロード)!」


 炎がビームのように発射され、奴の炎を迎え撃つ。炎の後がまるで道のようだ。

 奴の双頭の内の片方の口元から炎が止まる。

 属性が変わり口からは稲妻が放電される。


「なっ!?」


 驚きで声を上げてしまうが、風の(バリア)をいくつも作りイリスがそれを受け止めた。

 魔力切れを起こしたのか炎も稲妻も止まる。

 イリスのおかげで被害が拡大することもなく奴の攻撃を受け止めきることが出来た。

 息絶え絶えの奴の足を黒い鎖が拘束する。

 驚きを顔に滲ませ、その魔法の主を睨みつける。


「2人共今のうち!」


 その魔法主のカモミールだ。本来、結界の中で起こるはずの魔法の効能を逆転させ、結界の外で魔法が発動するようにしたといったところか。カモミールは地面に手をやり、地中で結界を発動させていることが分かった。

 せっかくカモミールが作ってくれたチャンスを無駄にするわけにはいかない。

 私は奴の元に駆ける。イリスも意図を汲み取ってくれたのか同じ方へ走り出す。


「「はぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!」」


 1人が扱える魔法は本人の技量や才能によって異なる。そのため、当然人によって向き不向きがあり、扱える魔法の種類は異なる。だが、1人ではどうしようもないことを解決する方法はある。その方法の1つは、魔法の合わせ技。異なる属性の魔法をかけ合わせ発動するというものだ。

 イリスが風を起こし、エーデルワイスが炎を起こす。炎は風に巻き上げられ、炎を纏った旋風となる。それは奴の方へと進み、身動きの取れない体を焦がす。

 続いて私は地面に手をつき、魔法を発動させる。炎が一直線に奴の真下まで行き、地面を熱で溶かした。そして、そこはまるで火口のようなマグマが煮えたぎる地獄へと変化した。 

 奴は体をマグマに焼かれ、かつ火災旋風にも焼かれ続ける。


 ここまですれば大丈夫だろう。そう思った私はその場を後にしようとする。

 背中を向けたその時だった。ゾワっと悪寒が背筋を伝う。


「うっ……。一体何が……。ゲホッ!」


 瞬間。カモミールは片膝から崩れ落ち、口から血をにじませる。


「カモミール!?どうした!」


 私はカモミールの元へ駆けつけようとするが、ある異音が聞こえ足を止める。

 それは鎖が切れるような音だった。


「まさか」


 黒鳥は鎖を引きちぎり、立ち上がっていた。

 おかしい。あの状況から一体どうやって?

 奴は翼をはためかせ、空中へと飛び上がる。


「は?」


 視界に入った奴の姿は先ほどまでとは大きく違っていた。

 翼をはためかせ、浮かぶその姿にはやけどの跡も傷の後もなく、その体は黒く光る鱗のように輝いていた。

 奴は天高く吠えると、再び雷雲を呼び集める。しかし雷が落ちることはなく、ただバチバチと放電の音が鳴り響いていた。

 再び奴は天高く吠える。それと同時に稲妻が集約され、球型の雷が作り上げられる。それはあっという間に巨大化し、見る人が見れば新たなる生命の誕生の瞬間かと崇め奉るほど神秘的な光景だった。

 その球体はゆっくりとこちらの方へ落ちてきているのが分かった。


球電(ボールライトニング)


 私はすぐさま、防御態勢を取るがもう遅かった。


「ぐおおおおぉぉぉぉぉ!!」


 巨大な爆発音が鳴り響き、視界が白く染まる。

 辺りを削り、何もかもを巻き込み、全ての存在を消し去り、爆発は収まった。


「ぐっ……」


 イリスは岩を押しのけ何とか瓦礫の山から抜け出す。

 あの球電が落ちる寸前、瞬時に岩の隙間に隠れていたのだ。

 しかし、その決断をすぐに後悔することになる。


「……みんな?」


 視界が戻る頃にはそこには何も存在していなかった。

 瓦礫が辺り一面に転がっており、そこには誰もいない。

 エーデルワイスもカモミールもどこかへと消えていた。


「嘘……。そんな……」


 初めはみんなと協力すれば倒せると思っていた。だけどそれは単なる思い込みだったと嫌でも実感させられる。先代の魔女を殺した宿敵は、そう簡単に倒せる存在などではなかったのだ。

 イリスは跪き、黒鳥を睨みつける。黒鳥は悠々と空に浮かんだまま、余裕の表情を浮かべる。まるで人間のように、そして、まるで見下すように。

 黒鳥は翼をはためかせ、風を巻き起こす。次第に風の斬撃が形成されていき、イリスに向けて射出される。

 それはまるでイリスの魔法を真似たようだった。


「それって……。私の!」


 イリスは驚きのあまり、防御を忘れていた。斬撃は呆然と立ち尽くすイリスへと向かう。


 ガキィィィィィィン!


 と斬撃が激突した音が鳴り響く。

 砂埃が立ち上り、再び視界がおおわれる。


「え?」


 斬撃は確かにイリスを切り裂く……はずだった。

 だが、イリスは傷一つなくそこに立っていた。

 だって、目の前にはイリスを守るように一人の少女が立っていたのだから。


「ごめん!遅れを取った!」


 精製した剣で斬撃を受け止め、口にカードを加えてレイラはそこに立っていた。


「レイラ!傷は?!」


「大丈夫……ってわけではないけど大丈夫!」


 レイラは剣を黒鳥に突き立て言う。


「これで終わりなんかじゃない!さぁ!第2フェーズと行こうか!」


お待たせしました!!

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