事情聴取を行います!
「だぁー!!悔しい!!」
捕らえられたセリエはそう叫んでいた。
まぁ何とか勝てたのはいいが。(倒したのは私ではなくイリスなんだけど)
「それでどうするのこの子」
「特に考えてなかった。逃がす?絞める?」
「もう片方の選択肢が物騒すぎる」
まぁ仮に逃がすとしてもその前に聞きたいことが何個かある
私は捕えられているセリエの前で腰を下ろし、幾つか質問をすることにした。
「セリエって言ったよね。あなたは騎士団に命令されてここに来たの?」
セリエは何かを考えた様な表情浮かべた。
さては嘘をつくか本当のことを話すか考えたな。
「いや……」
でもまぁ嘘かどうかなんて私には確かめようがないため、ここは本当だと信じることにしようか。
「それじゃあこれは騎士団の意思ではなくて、あなた個人の意思ってことでいいのかな?」
「……そういうこと」
うーん。
じゃあこの子自身が自分の意思で喧嘩を売りに来たってことでいいのかな。
「レイラ。そんなことを聞いてどうするつもり?」
イリスは不思議に思ったのか私に疑問を投げかけてくる。
イリス本人にとってはどうでもいい事のようだが、私からしたらこういった事態が起こるなんて異常でしかない。
「この子はイリスのことを捕らえるって言ったけど、捕らえた後は騎士団に連れていこうとしてたってことよね」
私の言葉にセリエは嘘がバレた子どものような表情浮かべた。
「さっき個人で判断して来たって言ってたけど、その発言に何か矛盾が生まれるような気がするな」
「ち、ちがっ!!ここに来たのは本当に私個人の意思なの!!」
「個人で来たなら最初に騎士団って名乗る必要がある?」
「ぐっ…………私個人が勝手に判断してここに来たの。これは本当」
「どういうこと」
私の質問にこれ以上答えたくない表情をセリエは浮かべた。
しかし無言の圧力に耐え兼ねたのか、渋々話始めた。
「騎士団はこの国の魔女イリスは邪悪だから、捕らえるよう命令を下したの」
「何?」
低い声でそう呟いたのは私ではイリスだった。
「その命令を下したのは誰?」
「それは……」
「言いから答えて」
イリスは傍から見て分かりやすく怒っており、掴んでいたセリエの腕をより強く握りしめた。
「痛っっ!?騎士団長だよ!!あんたも知ってるでしょ」
その言葉を聞いたイリスは何やら納得したような表情を浮かべ、セリエを解放した。
「うっ、痛かった。でもこれで分かったでしょ。騎士団はあんたを捕らえようとしている。私はその前に個人で動いてあんたを捕らえようとしたの!!」
「そんで弱すぎて負けてしまったと、哀れだね」
「何よ!うるさいわね!!」
騎士団そのものがイリスを狙ってるってことか、さすがにこれはまずいんじゃないか。
私はふと思った疑問をセリエ本人にぶつけることにした。
「でも、何で先にあなた1人で捉えようと思ったの?他の騎士団と一緒に来た方が捕らえられる確率は上がったのに」
「それは認められたかったのよ!!あの人に私はここまでやれるんだって!!」
あの人?
それは一体誰?
そう言おうとしたらイリスは私に発言をさせまいとするかのように言う。
「状況は分かった。もう帰っていいよ」
「あんた正気?自分を襲って来た敵を見逃すなんて、いくらなんでも甘すぎるんじゃない?」
「別に。あんたが逃げようが逃げまいが正直私にはどうだっていいことだもの」
「何?私くらいじゃあんたの視界にも入らないって言いたいの!?」
「事実だよ」
「ッ!!」
セリエはイリスを物凄い形相で睨みつけるが、イリスはものともしない。
セリエはもう話すことは無いとばかりに、元来た道を進もうとする。
その前に私はセリエを引き止めることにした。
「ちょっと待って」
「何よ」
「これを」
そう言い私はポケットから1枚の紙を渡す。
「何これ」
「私の住んでる住所。何か他にも言いたいことがありそうだったから。話す気になったらここに来て」
セリエはまたイラついた表情を浮かべた後、私の差し出した髪を勢いよく受け取った。
ちゃんと取ってくれるんだ。
そのままセリエは元来た道を戻って行った。
「さすがに今のは言い過ぎだよ」
私はイリスにそう伝える。
イリスはそれに対して表情を変えず答えた。
「あれくらい普通じゃない」
「いいや違うよ。私はあんなことを言われたら嫌な気分になる。あなたも同じこと言われた時、嫌な気分にならない?」
「それは……」
まぁあまり責めても仕方の無いことだ。
今はそんなことよりも、話すべきは。
「騎士団のこと。どうするつもり?」
「放っておけばいい。あれくらい……」
「『私ならどうにかなる』って言いたいんでしょ?」
私はイリスの発言を遮りそう言った。
イリスは言い当てられたと言わんばかりに顔を背ける。
こういう部分は魔女というより人間らしいなと思う。
「騎士団は国の防衛だけでなく、政治の中枢も担っている。一人で相手するのは難しいと思うよ」
イリスはしばらく黙り込んでしまった。
イリスはこういったことを一人で抱えがちな性格なのだと思う。
そして他人に助けを求めることが苦手なんだ。
それは強さゆえなのか。それとも別の理由があるのかは分からない。
だったら私がやるべきことは一つしかないはずだ。
「一人で難しいなら助けを求めればいい。でもそれすら苦手なら、私から言わせて貰うね」
私は少しずつイリスに歩み寄る。
そして両手でイリスの手を包み込んだ。
イリスは驚きつつ私の方へと顔を向ける。
こんなに近くで顔を見たのは始めてだ。
サファイアのように綺麗な青色をした目と長いまつ毛、白い肌で小さな顔立ち。
こんなに可愛らしく、可哀想な少女を放っておくなんて私には出来ない。
「私にあなたを助けさせて」
ほんの僅かな、だけどとっても長いような静寂が訪れる。
そんな静寂を打ち破ったのはイリスだった。
「……分かったよ」
彼女は小さくそう呟いた。
その発言を噛み砕くのに少し時間がかかってしまった。
だけどすぐに理解する。
イリスが同意した……?
「本当?」
「嘘じゃないよ」
彼女は私の手を優しく振り解き、背を向けた。
「それにこの件にはもしかしたらあいつが絡んでものかも。もしそうなら責任の一端は私にある」
「どういうこと?」
「今は言えない。けど……そうだな。とりあえず私の家に来る?」
イリスは私の方へ振り向きそう言った。
ん?
今なんて?
え?家来る?
そ、そんな……手順をあっさりとすっ飛ばして…………?
「行きます!!」
「え、何。怖」
そんなかんなで、私はイリスの家へ遊びに行くことになった。
初デートはお家デートってこと!?