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決戦!絶望へと誘う黒の支配者

目の前に広がる景色は、夕日の沈みかけた渓谷。その中央に、一際大きな黒鳥が佇んでいる。その名もシュヴァルツ・ヘルシャフト。赤い夕陽がその漆黒の羽に当たり、翼を優雅に広げるたびに、空気が振動するようだ。


「まずは、こいつがどんな攻撃をしてくるか、様子を見ないと……」


 心の中でそう決意した瞬間、唐突に脳内を貫く異様な声が響き渡った。


【 ヒ ッ ツ ェ シ ュ ラ イ ア ー 】


「っ!!」


 脳内で反響するその声と同時に、シュヴァルツ・ヘルシャフトのくちばしから、まるで火山の噴火のように炎が噴き出した。その燃え盛る炎があたり一帯を飲み込もうとするのを見て、私は瞬時に理解した。


(やばい――崖の方へ逃ないと!)


 私たちは即座に崖の方向に駆け出した。背後で渦巻く炎の熱気を背中で感じながら、私は崖を駆け上がり、何とかその猛火をかわした。視線を反対側に向けると、イリスも同様に崖を駆け上って炎から逃れていた。安堵する間もなく、私たちは互いに目で合図を送り、再び奴の元へと向かう。


「行くよ……イリス!」


「ああああああああ!」


 イリスが風の刃を繰り出し、私もカードを手に剣を錬成し、渾身の力でシュヴァルツ・ヘルシャフトの喉元へと切り込む。しかし、その瞬間、透明なバリアが現れ、攻撃は無残にも跳ね返されてしまう。私たちは地面に着地し、互いに困惑の表情を浮かべた。


「だめか……!」


 刃が通らないとダメージを与えられない!

 私が叫ぶと、イリスは静かに首を縦に振り、何かを悟ったように口を開いた。


「でも、わかった気がする。きっとあの鳥の魔法は、天気を操っているんだと思う。雨や風、太陽とかね。今の炎もその一つ」


「じゃあ、あの透明なバリアは?」


「きっと、風を極限まで圧縮して身体に纏わせているんだと思う。私が使う風魔法と似た原理」


「つまり……バリアを突破するには、どうすれば?」


「強力な一撃で風を分散させ、その隙にもう一撃。二段階で仕留めるしかない」


「二回、続けざまに攻撃を当てればいいのか…それなら、私たち二人でいける!」


 私たち二人で戦い抜いてきたこれまでを思い返す。エーデルワイスやララとルルと戦った時も、イリスと協力して乗り越えてきた。だからこそ、今回もきっと——


「よし、行こう!」


 イリスと共に地を蹴り、再び黒鳥へと跳びかかる。私は手元のカードを切り、無数の槍を錬成し、シュヴァルツ・ヘルシャフトの胴体へと放った。


 その瞬間、敵の注意が私に向けられる。そこを狙って、イリスが鋭い斬撃を加えた。バリアが一瞬震え、亀裂が走るのが見えた。


(いける――!)


 さらに続けざまに、イリスが風の斬撃を繰り出し、シュヴァルツ・ヘルシャフトは必死に翼を広げて防御を試みる。だがもう遅い。バリアはあらゆる方向からの攻撃を受け続け、ついにひびが全面に広がり、ガラスのように砕け散った。


「今だ――!」


 私は剣を振り上げ、シュヴァルツ・ヘルシャフトの胴体へと突き刺した。鋭い刃が肉を裂き、血飛沫が舞い散る。ヘルシャフトは苦しげな叫び声を上げた。確かな手応えに、私は勝利を確信した。


(やった……このまま押し切れば――)


 その時だった。シュヴァルツ・ヘルシャフトと目が合った瞬間、そこに宿る冷徹な殺意が、まるで刃のように私に突き刺さる。そして、奴は甲高い声を上げた。頭に響き渡るようなその声は、怨嗟の音色を帯びており、私の動きを凍りつかせた。瞬間、まるで超音波のような波紋が視界を揺るがせる。


「ぐっ……!」


 耳を塞ごうとするも、耐えきれない。まるで魂を削るかのような音に、私はふらつき、崖の石壁へと突き飛ばされた。背中に強烈な痛みが走り、視界が一瞬、白んだ。


「レイラ――!」


 遠くからイリスの叫ぶ声が聞こえたが、その位置すらわからない。這い上がろうと必死に地面に手をつくが、その時、地面が生き物のようにうねり、突如、鋭利な柱の形に変わり、私のお腹に突き刺さった。


「……え、……」


 自分でも信じられない出来事に、息を呑む。口から温かい液体が溢れ出し、意識が遠のきそうになる。しかし、痛みがそれを留まらせ、私は何とか膝をつき、視界がかすむ中、ヘルシャフトを睨みつけた。だが、立ち上がる力は残されていない。


「レイラ!」


 イリスの叫ぶ声がかすかに聞こえるが、姿は見えない。私は答える力もなく、ただ悔しさだけが胸を占めていた。


(このままでは…私も、イリスも殺される…!)


 無念の思いが溢れる中、突然「ズダンッ!」と大地を踏みしめるような音が響いた。


「え?」


 イリスが驚く声を上げる。視界に映ったのは、赤い短髪に白いカッターシャツ、黒の長ズボンと赤のブレザーを羽織った女性。彼女の胸ポケットには金の騎士団のバッジが輝いている——騎士団長のエーデルワイス=ノアだ。そしてもう一人、長いブロンドの髪に優雅なドレスを纏う女性、カモミール=ブラウン。彼女は私が住むカフェのオーナーであり、かつてイリスと共に先代の魔女に育てられた人物だった。


「大丈夫か?お前たち」エーデルワイスが険しい表情で私たちを見やり、カモミールはいつもの穏やかな笑みを浮かべている。


「レイラちゃん、酷い怪我ね。大丈夫?」


「二人とも!レイラが…!」


 イリスが必死に訴える。カモミールは彼女に優しく頷き、低く語りかけた。


「大丈夫。外傷は無いから、私の治癒魔法で治せるわ」


「じゃあ、そっちは頼む。イリス、行くぞ」


 エーデルワイスが力強く言うと、イリスは一瞬ためらったようだが、すぐに頷いた。


「倒すんだろ?あいつを」


 エーデルワイスの視線は黒鳥を鋭く捉えている。「あんたにとっても、私にとってもこいつは討つべき相手だ。…協力しろ、イリス!」


 イリスは深く頷き、決意を固めた表情で答えた。「わかった!」


 かつて先代の魔女に育てられた三人が、今ここに集う。失われた魔女の仇を討つため、彼女たちは力を合わせ、凶悪な敵へと向かっていった。

気づけばもう11月……一年の終わりもあと少しですね。

何とか今年までに第二章が終わるとこまで行きたい!(フラグ)

そんな訳で、因縁の相手との決戦二話目です。


次はあの2人vsシュヴァルツ・ヘルシャフト!

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