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予期せぬ乱入者

セリエは魔法研究省の長官リーシア=クライシスとその部下ララとルルの3人を前にしていた。


「とりあえず、座りなよ」


そう言ってリーシアは手前の椅子を指さす。


「……失礼します」


一応リーシアは立場上、上の人間だ。

仕方が無いので、ちゃん敬語で話すようにはする。


座ると目の前のテーブルに、何やら書類が置いてある。

書類の内容は……騎士団から魔法研究省へ移転するにあたっての契約書のようだ。


「ララとルルから話の顛末は何となく聞いているよ。我々も争いは望んでいない。だからこそ、この場を用意したわけだ。」


リーシアはゆっくりと説明を始める。


「我々が君に求めること。それは君の魔法だ。君の魔法はこの国のためにとても有益でね。是非ともこの国の発展のために活かして欲しい。あぁ、もちろん。条件は君にとって有利なものだよ。君が抜けた後の騎士団にはそれなりの保証はするし、魔法研究省移転後の給料だって……」


「長いです」


私ははっきりとその言葉を告げる。

まるで鋭利なナイフがその旨に刺さったかのように、驚いた顔をするリーシア。

しかし、直ぐに笑みを作り直す。


「へぇ……随分と面白ことを言うね。まぁいいよ、そろそろの君の言い分を聞いておこうか」


リーシアは私をじーっと見つめ続ける。


大丈夫……ここまでは予想通り。

私は事前に考えて用意した言葉を言い放つ。


「私は……」


カンカンカンカンカンカンカン!!!!!!



「「「「?!!!」」」」



直後、緊急事態に鳴るはずの鐘の音が鳴り響く。


「何事だ!」


リーシアは椅子から立ち上がり、大声で叫ぶ。

すると部屋の扉が開け放たれ、魔法研究省の服を着た少女が入ってくる。


「長官!緊急事態です!」


魔法研究省の少女は何が起きたかを伝える。


「な……!」


少女の口から告げられたのは、思わず声が漏れ出てしまうような、とんでもない情報だった。


リーシアの表情もみるみると青ざめていくのが分かった。

彼女は親指の爪をかじり、声を漏らす。


「くそっ…………よりによってこのタイミンクで…………ララとルル!セリエにはその書類に何としてでもサインさせておけ!」


そう言い放つと、リーシアは部屋を慌てて出ていった。


「まさか……こんなことが起こるなんて……」


私も思わず声を漏らしてしまう。

そういえば、先程入ってきた魔法研究省の少女はなんと言っていた?

確か、異変の場所は……。


『ババロン村の渓谷』って……。


「っ!!」


私は部屋の窓へと駆け寄り叫ぶ。


「レイラ!イリス!」





ババロン村の渓谷にて。


「じゃあ帰ろうか」


私、レイラ=ユリウスはそう言うと、目の前のイリスに向かって手を伸ばす。


「うん」


イリスが私の手を掴もうとするその刹那。



ドオォォォォォォォォォン!!!!!!



突如として轟音が鳴り響く。

それはまるで地面が爆発したような音だった。


あまりのうるささに、私は耳を抑えしゃがみこむ。

そして、しばらくするとその音は鳴り止んだ。


「い、一体何の音?」


私は状況を確認しようと、周りを見回す。

すると、私とイリスを覆い尽くすように影がかかっているのが分かった。


「え?」


状況が理解できないまま、私はイリスの方を見る。

するとイリスは驚いた顔で空を見上げていた。


私も恐る恐るイリスの先の視線へと目を向ける……。


「嘘……でしょ?」


この国、フランシイ王国がピンチに陥ったことは3つある。


1つ目は、隣国のイギリシニア連邦が戦争をしかけてきた時。

2つ目は、隣国のプロイサン王国の魔女がこちらへと牙を向けてきた時。

3つ目は、魔法を扱う怪物がこの国に襲いかかってきた時。


魔法を扱う怪物……厳密には魔獣が襲いかかってきた時、この国の魔女エルザが対処したと聞いた。


そして、エルザは自らの命と引き換えにその魔獣を封印したとも聞いた。


それは黒い翼を携え、鳥のような見た目をしていた。

それは高威力の魔法を使い街を焼き払った化け物だった。

それは頭を2つ携えていた。


それは今の目の前にいる化け物を全くおなじだった。


「は…………?」


イリスは声を漏らす。

だんだんとその表情が驚きから怒りへと染まっていくのが分かった。

それは育ての親でもある魔女を殺した相手。

それは自らが息の根を止めてやると誓った相手。



双頭を持ち


国を滅ぼす程の力を持ち


人々を絶望へと誘った。


黒の支配者。


その名も……

『 シ ュ ヴ ァ ル ツ・ヘ ル シ ャ フ ト 』



「ああああああああああ!!!!!!」


「イリス!!!!」


私の呼び声も虚しく、イリスは地を蹴り黒の支配者へと攻撃をしかけに行った。






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