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出来れば話し合いで解決したいのですが・・・

セリエが訪れてきて3日程経った。


私、レイラ=ユリウスはセリエの相談を受けた後、イリスの家の元へ駆けつけていた。


トントンと大きな扉のドアをノックする。


「はいっ」


と遠くから返事が聞こえてくるのが分かった。

すると階段から慌てて降りてくる足音が聞こえて来た後、扉が開かれる。


「どうしたの?」


扉を開け放ったイリスの格好はかなりラフなもので、ブカブカの白Tシャツを着ていた。おそらく下にショートパンツを履いてるのだろうが、上の白Tがあまりにブカブカすぎるため隠されており、まるで何も履いてないようにも見える。


「いやー、ちょっと用事みたいなものがあってね」


そう言うとイリスは不思議そうに首を傾げる。

ずっと家にいたためか少し髪はボサッとしているものの、綺麗な青色の瞳と整った顔立ちがそれをかき消している。


そう言うと、私はイリスに続けて言う。


「ちょっと困り事があって手伝ってくれない?」



私とイリスはある山の峠まで来ていた。

ちなみにイリスにはその後着替えてもらい、私がデートの際プロデュースした服を着てもらっている。


「ここまで来て一体何をするの?」


イリスは不思議そうに言う


「ちょっと実験したことがあって」


そう言うと私は胸ポケットからペンを取り出し、ペンに向かって話しかける。


「あーあー、こちらレイラ。聞こえてる?」


するとペンからはちょっとだけノイズが鳴った後、ペンから声が聞こえてくる。


「本当に聞こえてきた……こちら、セリエ。特に問題ないみたいね」


「そりゃ良かった」


「レイラ、それは一体?」


今の様子を見たイリスが不思議そうに尋ねてくる。


「あー、これはね」


私はイリスに、このペンなどの魔道具を商店で購入したことと、これを買った経緯、厳密にはセリエにあった出来事とそれの対策のためにこの魔道具を買ったことを説明した。


「あっさりとイリスに話したけど……私のプライベートはないの?」


すると、ペンから呆れたようなセリエの声が聞こえてくる。


「まぁまぁ、イリスになら大丈夫だよ。利害の一致ってやつ」


「ならいいけど」


私の説明を聞いたイリスはしばし考えた後、言う。


「つまり私はその魔道具の整合性と、どれくらいの距離であれば会話可能であるか知るために呼ばれたってことでいい」


私は頷き返答する。


「そうそう、魔法の達人でイリスになら安心して任せられるかと……」


「別に私は魔法の達人だなんてないよ」


「そう謙虚にならずに」


イリスは私の持ってるペンを握ると、ゆっくりと目を閉じる。

ペンの感触をゆっくり味わうように、手を開いたり閉じたりしている。

すると、ゆっくりイリスは口を開く。


「魔道具名、オリレーデ・レンフェア。遠方からの音声を書き留める能力。書き留め可能距離、1004km」


イリスはゆっくりと目を開く。


「整合性に何も問題ないし、ここからセリエまでの距離的に支障は生じないはず。妨害障壁でも展開されない限りは大丈夫なはずだよ」


イリスはそう言うと、私の元にペンを返した。


「ありがとう!」


「ねぇ、レイラちょっと聞いてもいい?」


「ん?どうしたの?」


すると再び、ペンからセリエの声が聞こえてくる。


「あんたは……なんでそう易々と人を助けるの?」


「え?」


予想外の一言をセリエからかけられ、思わず私は言い淀んでしまった。


「それ、私も気になる」


イリスもセリエに便乗するように、私へ尋ねてくる。


「えっと……」


イリスとセリエ(こっちはペン越しだけど)無言の圧がかけられる。


「分かった、教えるから」


私は2人の圧に屈し、ゆっくりと喋り出す。


「そうだな、2人は物語の主人公に憧れたことってある?」


「?そりゃあるけど」


「ないかあるかで言うと、ある」


2人からの返答を聞き、私は続けて話す。


「私も似たようなもので、昔読んだ物語の主人公やヒロインがとってもかっこよくて憧れたんだ。」


2人は何も言わず、じっと私の話を聞いてくれる。


「けど、私は罪を犯した」


「罪?」


イリスが不思議そうに問いかけてくる。


「うん。私1人が軽率な行動をしたせいで、友達を傷つけちゃって、結果的にたくさんの人に迷惑をかけちゃったんだ。」


少し間を置き、ゆっくりと深呼吸をする。

そして、目の前の峠を真っ直ぐ見つめ続ける。


「だから、私は傷つけてしまった分、人を助けたいと思ったんだ。それが私の行動原理かな」


「……その出来事がきっかけで、今のレイラになったってこと?」


「そうだろうね。イリスを助けたのだって、セリエに今協力しているのだって、私に利なんて1つもない。だけど、それでも手を差し伸べたいと思ったんだ。それだけは、過去の出来事があろうが、なかろうが変わらなかったと思う。だから、過去のそれがなかったにしろ、手を貸したのには変わり無かったと思うよ。」


そう言うと、私は精一杯の笑みを作る。


「そっか……」


セリエは今の言葉を一通り聞き終えた後、ゆっくりと口を開く。


「じゃあ、今のレイラの期待に答えられるようにしなきゃね」


「おっ、セリエもやる気になった?」


「とりあえず、一旦切るわよ。協力してくれてありがとね」


「えー!今から私に対する感謝の言葉を聞こうと思ったのに」


「バカのこと言わないで!じゃあね!」


セリエはレイラの通信を切り、目の前の扉を見つめる。

セリエはレイラとの協力を取り付けた後、王都に帰還していた。

今から、魔法研究省の長官のリーシア=クライシスと、同じく魔法研究省所属のララとルルに話をつけるつもりだったのだ。

セリエは深呼吸をした後、覚悟を決め扉をノックする。


「どうぞ」


という返事が聞こえた後、扉を開け中へと入る。


真ん中には机が置かれ、そこに長官であるリーシア・クライシスが座り、その左にはララが、右にはルルが座っていた。


リーシアはニヤリと不気味な笑みを作り、言う。


「さぁ、始めようか」



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