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ちょっと過去話でも

人の過去話は面白い。

一体その人がどんな人生を歩み、どのように今の性格が形作られたのか知ることができるからだ。

しかし、あなたの子どもの頃のお話を聞かせて、と問われたとしても、私の過去なんてなんの面白みもない、ただのつまらない話しか出来ないだろう。

これはそんなつまらない、セリエ=ユースターのお話。


私の両親はとんでもない過保護で、幼い頃から習い事に通わされたり、いつまでに帰るよう口うるさく言われたりもした。

私はそれが当たり前のことだと思っていた。だが他の人の話を聞くにつれ、それは当たり前のことでは無いと気付かされた。

他の親は子どもに強制なんてしたりしない。むしろ子どもには自由な遊びをさせ、自立心を育てさせたりする子育てを行っていたのだ。

もちろんどっちが良いとか、どっちが普通だとかそういうのはないのだろう。

けど、当時の私には自由に制限なく遊ぶことの出来る他の家族がとんでもなく羨ましく見えたものだ。


しかし、自分は躾の厳しい過保護な両親から生まれた。

その親から生まれた以上、私はその親に従う他なかった。

そのため幼き頃の自分は両親の言うことにきちんと従える、とても真面目な子だったと言えるだろう。

他の子どもや学校、地域の人たちからは真面目な子だとよく賞賛されたりもした。

それはとても嬉しいことであったし、今でも胸を張って自慢することが出来る。


そんな私も思春期になった。

そして私は運命的な出会いをする。

たった一人の女の子と親友になったのだ。

その子の名前はラター。

その子もまた真面目な子で、なおかつとても前向きな子だった。

お互いのことを話すにつれ、だんだんとラターの過去についても分かってくる。

『どうせこの子も自由な家庭で育ったんだろうな』と当時の私は思いつつ話を聞いていた。

しかし、その子からは衝撃的な言葉が飛び出してくる。幼い頃に母を亡くし、唯一残った父からは暴力を振るわれていたのだ。

毎日痣だらけで学校に来るラターを見て、不審に思った先生が父を摘発。無事、ラターは保護される。その後、里親に引き取られたラターはようやく人並みの養育を受けたのだった。

それを聞いた私は衝撃で口をポカンと開けていただろう。

いつも前向きなラターにそんな過去があるだなんて思いもしなかった。

私と同じだと思っていたその子は、私とは比較にならないくらい波乱万丈な人生を送っていたのだ。


私たちはその後も2人仲良く過ごしていた。

そんなある日、ラターの姿がどこにも居なくなっていた。

ラターに何かあったのかもしれない。そう思った私は、町中を探し回った。

しかし見つからない。不安を覚えた私に、ある噂が流れ込んでくる。


『ねぇ知ってる。1度捕まったら最後、生きては帰れないと言われる不良集団の話』


『あら、もちろん知ってるわよ。しかもその不良達に一人の少女が捕まったんだって』


『あら怖い。今頃無事ではないのでしょうね』


私は冷や汗をかいた。

不良?捕まった?もしかしてラターが?

私より可哀想な環境で育ち、前向きで真面目なあの子が?

なんとしてでも助けなきゃ。


その時初めて、私は両親との約束を破った。

門限が過ぎ、一日二日が経っても家に戻らなかった。

きっと両親は今頃、大慌てで私のことを探しているだろう。しかし、そんなことどうだって良かった。今の私にはラターを助けるという責務があるのだから。

私は両親からの習い事で武術も習っていたから、勝つことに自信はあった。

精一杯の武装をし、黒い服を身に纏って不良集団がいるというところに向かった。

最初は戸惑っていた不良共であったが、私がカチコミに来たのだとすぐに勘づくと、襲いかかってきた。そいつらを私は、徹底的に痛めつけた。

不良共を鎮圧すると、たった一人で震えている女の子がいるのが分かった。

間違いない、長らく行方不明になっていたラターだ。


「助けに来たよ。ラター」


「嫌っ!!来ないで!!」


「えっ……」


後ほど知った話だが、この不良集団達はラターを保護し、引き取った命の恩人だったらしい。

ラターが姿を見せなかったのは、単に体調を崩していただけであり、決して連れ去られたという訳でなかったのだ。


それ以来、ラターとは気まづくなり話す回数も減った。

おまけに、一日二日家に戻らなかった私を両親は酷く叱責し、より厳しく接せられるようになった。

さらに、不良集団を撃破した奴がいるという噂も広がり始め、私の元にカチコミに来る不良まで現れる始末だった。

突然夜道に襲いかかってくる挑戦者たちをこらしめる毎日。

私はだんだんと何もかもどうでも良くなっていった。

今まで言われていた真面目という服を捨て去り、両親の元を抜け出しては夜の町を徘徊し続けた。

そのうちに、どうやら私は『西日の乙女』と呼ばれるようになったらしい。

誰がそんなダサい名前を考えたのかは知らないが、そんな荒れ狂った私にある一人の女性が話しかけてきた。


「あーあー、近頃何か治安が悪くなったと思ったらそういうことか。ねぇそこの君、その力、悪い方向ではなく良い方向に役立ててみない?」


騎士団長エーデルワイスとの出会い、それが私の騎士団に入るきっかけだった。

そこから私は武力だけではなく、少しずつ使えるようになっていた魔法の猛特訓を始めた。

そして騎士団の入団試験を主席で合格。

私はあの暗黒期だった『西日の乙女』時代から抜け出し、無事今の私になることが出来たのだ。

誰もあの時の私を知らない。知る訳が無い。

騎士団首席合格だった私が、かつて『西日の乙女』なんて呼ばれる不良だったなんて誰も思う訳が無いだろう。


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