凸凹コンビ結成
王都パリスィからババロン村までやってきたセリエは、カモミールの経営するカフェ店まで来ていた。
「この店に入るのも何だか慣れてきたわね」
そう独り言を呟き、カフェの扉を開く。
カランカランとベルの音が鳴り響くと、いらっしゃいませーと元気な声が聞こえてくる。
店の中に入り、目の前に立つ人物を見つめる。
そう……フリフリのメイド服を着てたレイラ=ユリウスを……
「またあんたか。適当に座ってていいよー」
「いや!ちゃんと最後まで案内しろや!店員!」
その後、無事案内して貰った(かなり雑な態度だったが)。
「はぁ。なんだか最近私の扱いが雑な気がする……」
「そんなこと私に言われても困るなー」
ツッコむ気力も残ってなく、ただ黙って机に突っ伏した。
「とりあえず注文聞いてもいい?」
「コーヒーのエクスプレッソで」
「ほーい」
適当な返事をしてレイラは注文をカモミールに通す。
カモミールは私の方を見るなり笑顔で手を振ってきた。
一応私は、苦笑いをしつつも手だけ振り返しておいた。
しばらくすると頼んだコーヒーが来たので、それをゆっくり口にする。
「ふぅ。美味しい」
「そいつはどうも」
相変わらず接客態度の悪いレイラは、私の対面席にドカッと座る。
「いや、何偉そうに座ってんのよ」
「何か問題でもー?私はお客さんが居ない時はいつもこんな感じなんだぜ」
「態度どころか語尾も偉そうじゃない。ってか私はお客さんと思ってなかったんかい」
全く、相変わらずのマイペースぶりである。
再びため息をつくと、ふと疑問に思ったことを口に出す。
「で?今日はなんでそんなにフリフリしたメイド服着なの?」
「私だって着たくて着てるわけじゃないんだぜ。ただイリスにこういうのも着てみて欲しいってお願いされてね」
イリスにお願いされて……イリスがそんな服を要望するのも意外だが、それをスッと来てしまうレイラも何か意外だ。
「んで、今日は何しに来たの?」
そう言うとレイラは私の目をじっと見つめてきた。
こう勘の鋭いところはレイラの怖い所だ。
「もう既にお見通しって訳ね」
「当たり前じゃん。セリエが用もなく私に会いに来るとも思えないし」
「もしかしたら用もないのにコーヒーを飲みに来ることだってあるかもしれないじゃない。でもまぁ正解。ちょっと用事があってね」
「一体何?」
「私魔法研究省に転入して、イリスの研究をすることになるかもしれないの」
「ブフォ?!!!」
私の発言にレイラはありえない音を出して、椅子から転げ落ちた。
「そ、そんなバカな……」
「まぁ半分冗談で半分本当みたいなものなんだけど」
「いやどっちやねん」
レイラが突っ込むのも珍しいなと思いつつ、話を続ける。
「ララとルルっていたでしょ?あの二人に来るよう誘われてね。来ないと許さないからと、今は徹底的に嫌がらせを受けてる真っ最中なの。」
「一体なんでそんなことに。セリエを引き入れて魔法研究省にメリットはあるの?」
「まぁ、騎士団の戦力を少しでも削ぎたいんでしょうね」
「王都で働く人は大変だねー」
「他人事みたいに言ってるけど私があっちに入ったらまたイリスを捕まえる作戦に出るわよ」
「な、なにぃ?!!!」
レイラは再びわざとらしく大きいリアクションを取った。
「だからあんたにも話しとこうと思ってね」
「そりゃ、一大事じゃん。どうすれば魔法研究省に入らずに済むの?」
「どうしろって……向こうが引かざるを得ないくらいに、こっちが優勢に立つしかないわね」
「そっか……でもそんな無茶な条件を、魔法研究省が突きつけてくるには何か裏があるに決まってるくない?心当たりとかはないの?」
レイラにそう問われ、思わず顔を顰めてしまった。心当たりは確かにある。
そう……誰にも知られたくない黒歴史……『西日の乙女』が!
「やっぱりその表情。何かあるじゃん。」
「べっつに〜何も無いけど」
「・・・。」
誤魔化す私を、レイラはジト目で見つめてくる。
思わず冷や汗が頬を伝うのが分かった。
「今回の件、力を貸せるならもちろん私も協力したいと思ってるよ。ただ、協力するならなんの弱みを握られたか、詳しく教えて欲しいな。話はそれからだよ」
レイラは真面目な顔で私をジッと見つめてくる。
その顔はずるい。
そんなことを、つい思ってしまう私がいた。
「えっと……」
観念して、私は話し出す。
隠したい歴史。そして、騎士団に加入した本当の理由を。
久しぶりに物語を書くと設定とか忘れてしまってて怖い自分がいます。
投稿が結局遅くになってしまったけど、年内には第3章の終わりまで描くのを目標にしたいと思います……。