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初バトルだよ!!初バトル!!

「そこのあんた!!」


「ん?」


 突然声をかけられた。

 後ろを振り返ると紫色の髪をツインテールにした少女が私たちに向けて人差し指を突き立てている。

 身長は私より少し低いくらい。

 そしてやたらときっちりした服は、何かの制服だろうか?


「あんた!!イリス=ユア=ツゥヴァリネね!!」


 彼女が名指ししたのは、私ではなくイリスの方だった。

 私に用があるってわけじゃないのか。

 しかし、イリスの名前を呼んだってことはろくな要件ではなさそうだ。

 何せ彼女はこの村の住民に快く思われていないようだから。


「私に何か用」


 イリスはめんどくさいといった表情を浮かべながら返答した。

 それに対し、紫色のツインテールをした少女はニヤリと笑い答える。


「私の名前はセリエ・ユースター。この国の騎士団よ」


「騎士団か。ならより疑問だな、一体何しに来た」


「決まってるでしょ。あんたをこの手で、捕らえにきたのよ!!」


 セリエと名乗った彼女は、イリスに向かって右手を突き立てた。

 その右手は小指と薬指が折り曲げられ、中指、人差し指は正面を、親指は上へと向けられていた。


「レスポイズン」


 彼女がそう口に出すと、何かが高速で横切った音がした。

 それに対しイリスはすぐさま右手を斜め上方向に構え、額を守るような格好をする。

 すると、イリスの間近で何かが壁にぶつかったような音と火花のようなものが散った。


「チッ!!」

 

 セリエは悔しそうな顔をして大きく舌打ちをした。


「ちょ!!ちょっと何が起きてるの!!」


 唐突に2人で何やら争い始めたものだから、私だけ置いてけぼりな状態だ。

 急に襲ってきたこのセリエとかいう子は騎士団と言ってたが、そもそも騎士団が急に人を襲うとかどう考えても大問題でしょ!!

 いや一般人でも問題か。


「下がっててレイラ。ここは私が片付ける」


 下がっててって言われても、そんなこと言われたところで納得のしようがない。

 てか、私は足でまといだってのか!!


「全く1人だって聞いてたのに、こいつは一体何なの」


「強いてゆうならストーカーってとこかな」


 誰がストーカーじゃこの野郎。


「言わせておけば2人とも好き勝手に言ってくれて……!セリエとか言ったわね!!あんた急に襲ってくるなんて騎士団として恥ずかしくないの!?」


「うるさいなこいつ」


「あとイリス!私、ストーカーとかじゃないから!!救世主だと思って頂戴!!」


「それはなんか違うんじゃないか」


 確かに違うかもしれないが、まぁ言うだけ言ってとりあえずすっきりした。

 するとイリスはしばらく無言で相手を見つめた後、言った。


「レイラ、何回でも言うけど私に助けなんて必要ない。これくらいなら私一人で片付けられるから、心配しなくていいよ」


「でも……」


 それを聞くと私の言葉を遮り、セリエはイラついた顔を浮かべながら言った。


「バカにしないで、私はこう見えて騎士団の試験でかなり優秀な成績を納めてるの!!それにさっきの攻撃、一体何だったのか分かってないのにあんたは分かってないでしょ」


「海洋魔法。そうでしょ」


「なっ……」


 イリスがそう口にすると、セリエは驚いた様子を見せた。

 え、もう分かっちゃうの。さすがに凄くない。


「水を使って海洋生物を再現。それを操り相手に攻撃を与えるってところかな」


「ご名答。でもタネが分かったところであたしを倒せるとは限らない、そうでしょ」


「いや負けないね。それくらいの魔法ならどうってことは無い。自信満々で来てくれたところ悪いけど、そんなんじゃ傷1つつけられないよ」


「馬鹿にするのも大概にして頂戴!!あんたのその余裕突き崩してあげる!!」


 セリエは右手と左手を重ね合わせる。横からは親指を覗いた両4本指、上からは両親指が見えるようになっていた。

 その手の仕草と同時に彼女の周りに水泡が舞い始めた。

 その水泡はだんだんと集まり始め、何かを形作っていった。

 それは脚が8本あり、何でも切る事ができそうな2つのハサミを持ち、そして体は固い甲羅を持っているその生物は。


「クラブ」


 そう言うと水でできた蟹はイリスに向かい襲いかかってくる。

 イリスは物怖じせず、すぐさまその蟹に向かって走り出した。


「ちょっと!!」


 何してるの。そう言おうとしたがもう遅い、蟹は右のハサミでイリスへ斬りかかっていた。

 するとイリスはズボンのポケットから何かを取りだした。

 それは……


「ナイフ……?」


「そんなんで斬れるわけないでしょ!!」


 セリエの言う通りだ。

 そんなナイフで水を斬ったところで意味が無い。

 イリスは蟹のハサミを躱すと、そのハサミに向かってナイフを突き刺した。

 すると何かが畝ったような音が聞こえた。

 それを認知した直後、蟹のハサミが内側から爆散した。


「はぁ!?」


 セリエは驚いたような声をあげる。

 いや、これに関しては私も同じ気持ちだった。

 ただのナイフで爆散できるわけが無い。

 蟹はただちにもう片方のハサミで襲いかかるが、イリスのナイフの方が早い。

 突き刺さったナイフによってもう片方のハサミが爆散した。

 そしてイリスはすぐさま身を捩り、左足を使って蟹の胴体に向かって蹴りを入れた。

 すると先程ナイフで突き刺した時と同じように内側から爆散し水飛沫が辺りに散った。

 ナイフの力で内側から攻撃を与えたのかと思ったけど、蹴りでも同じことをしたあたり、イリス本人の力か。


「何なのよ!!そのデタラメな攻撃は!!」


 今度はセリエの方へと向けを変え走る。

 セリエは慌てて右手を動かした。

 今度は手のひらと全指を下へと向けて、手を上へと動かした。


「メデューズ!!」


 すぐさま水泡が集まり、形作り始める。

 大きな傘の様なものを持ち、その下には多くの触手が生えているそれはクラゲだ。


 クラゲは無数の触手を伸ばすが、それを全てイリスは回避する。

 イリスは空中に浮かぶクラゲを見据えると、それに向かってナイフを投げ飛ばした。

 クラゲの傘にナイフが突き刺さると先程の蟹のように内側から爆散する。

 近くで爆散したものだから、水飛沫がセリエに向かって散った。


「くっ!!」


 爆発の衝撃で一瞬でも目を瞑ってしまったのがセリエの敗因だった。

 セリエの視界が開けた時には、捉えていたはずのイリスの姿はなかった。


「どこ行って……」


 そう言った直後、セリエは勢いよく地面に組み伏せられた。

 今の間にイリスは背後に回り、両腕を抑え背後から押さえ込んだのだ。


「言ったでしょレイラ。助けなんていらないって」


 イリスはそう言い私の方へと顔を向けた。

 その瞬間にセリエが不敵に笑ったのを私は見逃さなかった。

 イリスの耳に何かが飛んでくる音が聞こえた。

 音のした方を振り返ると、水でできた魚がすごいスピードでこちらに向かってきていた。

 最初、イリスが弾き返した攻撃。

 その正体は水でできた魚だった。

 あの魚はあくまで弾き飛ばされただけ破壊されていない。

 セリエは魔法を解いてなかった、今ここで奇襲を仕掛けるために。

 しかし、その魚は横から飛んできた鉄棒に腹を貫かれ身動きが取れなくなった。

 どこから飛んできた?

 そうイリスが思うと、すぐにその正体は分かった。


「でも、少しは助けがあった方がいいんじゃない?」


 そう鉄棒で突き刺したのはこの私、レイラなのだから!!


「あ、ありがとう」


 自信満々な私に、イリスは少し嫌そうな顔でお礼を言った。

 素直じゃないな!!



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