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エーデルワイスとレイラとイリスと

イリスとデートをし、お風呂でしっちゃかめっちゃかした私たちだったがその後は普通に解散をし、次の日を迎えていた。


そして次の日の朝、カフェにはある訪問者が来たのだった。


カランカランとドアベルの音が鳴り響く、今日はカフェの店員として働く日となっており、制服に着替えた私はすぐさまドアの方へと振り向く。


「いらっしゃいませ。お客さ……ん?」


「やっ!」


ドアの方を見やると、見知った人物が姿を見せていた。

赤い髪のショートヘアにデニムの長ズボンとおそらく男物の白シャツに上には青と濃い緑のコントラストで彩られた上着を着ていた。

エーデルワイス=ノア。彼女はイリスを捕まえる魔女捕獲作戦を行おうとし、失敗した人物だ。


「………………うわっ!」


私は持っていたお盆で顔を隠し言う。


「い、一体なんの御用ですか!?」


「すごい警戒のされようだな……」


エーデルワイスは右手で頭をポリポリかいた。


「カモミールから言われてね。とりあえずレイラとイリスの二人と仲直りして来いと」


どうやらまた攻撃をしに来た訳では無いらしい。

それが分かると、私はお盆を顔の前からどけエーデルワイスの方を見つめた。


「なるほど。それでここにやってきたと」


「うん。それと私、2ヶ月の謹慎が言い渡されたからその間ここに住もうと思ってね」


「ちょっっっっっとまっった!」


次に出てきた予想外の言葉に私は待ったをかけた。


「え、住む?2ヶ月も?」


「うん。そうだよ」


「……嫌です」


「え?」


「さすがに2ヶ月もなんて無理です!」


「私が嫌いなのは分かるけど……」


「だってその間、カモミールさんとあなたのイチャイチャタイムをずっと見せつけられるって訳でしょ!皿洗い中にそっと後ろから抱きついたり!ソファで膝枕してもらいついでに耳かきしてもらったり!食事中にアーンしてもらったり!一緒にお風呂に入ってあわよくば……」


「ちょ!ストップストップ!嫌な理由ってそっち!?っていうかなんで後半そんなに具体的なシーンが出てくるわけ!?」


エーデルワイスは手を前に出し、待ったをかける。

彼女本人はそっちの方が嫌なのかと動揺してるようだが私からしたら死活問題だ。

何故なら……


「いやだって私がリラックス出来る大事な場所なんだよ!?それをデートスポットにされては困るわけですよ!私の休息の場がぁ!?!?」


「分かった!分かったから!イチャつかない!レイラがいる前ではできる限りイチャつかないから!」


「できる限り?」


エーデルワイスの言ったあまりに曖昧すぎる言葉に、私は眉をピクりと動かす。


「……できる限り。いやはや、そんな曖昧な定義に私がはいそうですかと納得すると思ったの?」


「えーっと。どういうことだ?」


「今すぐここで誓いなさい!私がいる前でできる限りイチャつかないのではなく!この建物内では一切イチャつかないと!」


「な!?」


エーデルワイスは体を後ろのめりにし、見たら分かりやすすぎるくらいに驚きの表情と仕草を見せていた。


「い、いやー。でもやっぱり少しくらいイチャついても……」


「やっぱりイチャつく気なんじゃん!ダメです!さぁ誓いなさい!今なら神も許してくれますよ!」


「おぉ、神よ。少しくらい慈悲を与えたもうても良いではありませんか!」


「神は言っておられます。イチャつかないことこそが全てを丸く収める最前の手段なのだと!」


「なんと……全てを丸く。くっ!で、では私は誓います。レイラの前ではできる限りイチャつかないと……」


「こ・の・た・て・も・の・な・い・で・は・イ・チ・ャ・つ・か・な・い・と」


「……この建物内ではイチャつかないと」


「よろしい」


「はっ!嵌められた!?」


私とエーデルワイスは大仰な身振り手振りをしながら、芝居がかった様子で先程の会話を繰り広げていた。

思ったよりノリが良くてあっさりとイチャつかない約束を結ばせることが出来た。


「いやそれはそうと。住む分にはいいのか?」


「別に大丈夫だけど」


「いやレイラ的にはだよ。一応、私はあんたらと一度敵対した仲なんだぜ」


「あれは起こるべくして起こったって感じだし、仕方ないと思ってる。それをわざわざ根に持つ必要なんてないしね」


「そうか……」


エーデルワイスはなんだかバツが悪そうな顔をし、また右手で頭をポリポリかいたのだった。


「レイラちゃんはもっとこいつに厳しくしてもいいんだよ?」


すると背後から見知った声が聞こえてくる。


「カモミールさん」


そちらの方を振り向くとこの家の主であるカモミールさんが立っていた。


「厳しくって。そんなこと言わなくてもいいだろ!」


エーデルワイスはそれに対し、腰に手を当て怒った表情を浮かべていた。


「別に。あんたはもう少し反省した方がいいって思っただけよ」


「ぐっ……それはそうだが」


「まぁレイラちゃんと仲直りしたってのだけは評価してあげてもいいよ。あとイリスと仲直りしなくちゃいけないくらいで」


「イリスと仲直りしたいんですか?なら私が連れてきますよ」


「いやそんなに早くに……」


「よし、じゃあよろしくレイラちゃん」


「任せてください!」


そう言うと私はイリスをここに連れてくるべく猛ダッシュへ外に出てイリスの住む洋館まで駆け出していた。

後ろからエーデルワイスの「ちょっと待てぇぇぇぇ」という声が聞こえた気がしたが気にしないでおこう。


そしてしばらくして。


「なんの用?」


不機嫌そうな表情を浮かべたイリスがカフェ内で立っていた。


「ほ、本当に連れてきたのか……」


エーデルワイスは口をぽかんと開け、唖然としていた。


「レイラちゃんがわざわざ連れてきてくれたんだし。ほら、エーデルワイス」


「分かったから!」


立ってるのもなんだしということで私とイリスは席に着くことにした。

そしてその席の前にエーデルワイスが立ち、それを見守るようにキッチンの方にカモミールさんが立っていた。


「えっと。まず第一に、その、すまなかった」


そう言うとエーデルワイスは頭を深く下げた。


「何が?」


それに対しイリスはぶっきらぼうな様子でそれに返した。


「お前もか!魔女捕獲作戦のことだよ。こちらの一方的な攻撃で被害を被らせてしまったことへの謝罪だよ」


「そのことか。別にあれに関してはエーデルワイスが負けたことで失敗に終わったはずだし、特にそれに対してどうこう言うつもりはないよ」


エーデルワイスはしばらく言葉を詰まらせると、やや呆れたふうに言った。


「お前もレイラも、なんだか似たようなことを言うな」


エーデルワイスは近場から椅子を持ってくると、こちらの席に着いた。


「でもいいのか?こっちは騎士団を動かして捕まえようと画策し、怪我まで負わせたんだぞ?」


「騎士団まで動かしたのは予想外だったけど。別にあれくらいの経験なら一度や二度じゃない。むしろあれくらいの怪我で済んだほうが僥倖だよ」


「それはお互い様って訳か」


イリスは魔女となったことを理由に何回か襲われた経験があるらしい。一度は負けたこともあるだろうがいずれにせよそれらを全て跳ね除けてきたという経験があるのだ。

それにエーデルワイスの方も強者と戦い続け、一度は負けても何度も挑み勝ち続け騎士団長の地位につくまで至った経験があるのだ。


「全く、血の気の多い二人で困ったもんだよ」


そんな二人を眺めながらカモミールさんはため息をついた。


「あはは」


カモミールさんの気苦労は無くならなさそうで思わず笑いがこぼれてしまった。

次に口を開いたのはイリスだった。


「それでレイラにちょっと話は聞いたよ。2ヶ月の謹慎が言い渡されたんだって?」


「そうそう。その間に魔法研究省とかの他の勢力が羽を伸ばさないか心配で」


「そういえば魔法研究省に与する2人に襲われてね」


「何!?」


それを聞いたエーデルワイスは驚いた様子で席を立ち上がった。


「それで大丈夫だったのか?」


「うん。レイラと私で無事跳ね除けることができたよ」


「あいつ……私だけでなくイリス達にまでちょっかいをかけるとはな。少し警戒した方が良さそうだな」


エーデルワイスは一人ボソボソ呟き始める。そちらの内情もかなり複雑なことになっているのだろう。


「まぁ、無事なら良かったよ。ただまた襲撃が来る可能性もあるから気をつけてな」


「気をつけろね。でも成り上がり系騎士団長様に勝ったんだからそんなに心配しなくてもいいんじゃない」


「それはそうだな」


エーデルワイスはそう言うと満足そうな表情を浮かべていた。

しかしエーデルワイスが気にかけるということは魔法研究省がかなり厄介な組織なのは間違いないのかもしれない。結構、ボコボコにしちゃったけど(※主にイリスが)大丈夫だろうか。


「んで、何か。私に聞くこととかないのか?せっかくみんな集まったんだ。今のうちに聞いておいた方がいいんじゃないか?」


エーデルワイスはそんなことをふと言った。

聞きたいことか。あるにはある。


「私は特にない」


イリスはそう言った。


「えーっと。それじゃあ」


私はおそるおそる手を挙げた。


「なんだい。レイラ」


聞きたいことはあるにはあるのだがイリスの前で聞いてもいいことなのだろうか。私はイリスの方へちらっと視線を向けた。

するとそれにイリスは気づき言う。


「私がいるからって別に気を使わなくてもいいよ」


「えーっと、それじゃあ……先代の魔女っていたじゃないですか。それってどうして亡くなったんですか?」


私がそう言うと辺りの空気が少しピリついたのが分かった。


「そのことか。うーん、なんて言うべきかな」


エーデルワイスは腕を組み困った表情を浮かべた。

しかし思い至った表情を浮かべると話し始めた。


「先代の魔女……エルゼは亡くなったというよりその命を代償にしたって言い方が正しいかな」


「それどういう?」


「この国に魔獣……魔法を宿した獣が現れてね。そいつは一国を滅ぼしかねないほどの力を携えた化け物でね。そいつを撃退しようとエルゼは戦ったんだが、相手の方が一枚上手だった。そこでエルゼは自身の命を代償としそいつを封印したんだ」


「それが今も封印されていると?」


「あぁ、そうだな。だが残念なことに封印されてもそいつが死んだ訳では無い第一種の危険生物として国全体で警戒をしてる真っ最中さ」


先代の魔女の命を代償とさせるほどの力を持ち、そして未だに倒されていないときた。

そりゃその国自体が警戒するのも頷ける。


「その生物ってのはどんなものなのか分かってるの?」


「遠目からだがそいつがどんなやつだったのか見ることが出来た。確かそいつは鳥のような見た目をしていたと思う」


鳥のような見た目。恐らく怪鳥といった類だろう。


「分かった。教えてくれてありがとう」


私はそう言うとエーデルワイスに軽くお辞儀をした。


「別に大丈夫だよ」


エーデルワイスは爽やかな笑みを浮かべるとそう言った。

エーデルワイスは今日話してみて思ったが、かなりサバサバした性格の持ち主だなと思う。


しかし、この会話をしてイリスに不快な思いさせなかっただろうか。ちらりとイリスの方を見やった。

するとイリスは真剣な表情で顎に手を当て考え込む仕草を見せていた。

先代の魔女を大切に思ってた彼女のことだ。この話を聞けば少し考え込むのは自然だろう。


「ねぇ、私からもちょっと聞きたいんだけど」


するとそのイリスがふと口を開いた。


「その怪鳥。どれくらいの強さか分かったりする?どれくらいの強さなら倒せるかとか」


「どれくらいの強さか。エルゼのこともあるし国全体が束になっても勝てるか怪しいだろうな。だが、倒せない訳では無いと思う。恐らく同じくらい、いやそいつより強力な魔法を使えればな」


イリスの問いにエーデルワイスは答えた。

その返答を聞くとイリスは納得したように頷いた。


「より強い魔法を使えたらか……もし仮にそいつがまた現れたってなら」


するとイリスはなにか決意したような目をして言う。


「次は絶対にその息の根を止めてやる」


先代の魔女が命を落とした直接の原因。

それを殺すこと。

もし本当にイリスが殺すことが出来たのなら、そしたらこの国もイリスのことを認めざるを得ないかもしれない。

そんな考えが私の頭にふと浮かぶのだった。





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