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カモミールとエーデルワイス。そして今は無き滅びた村。

「カ〜〜〜〜モ〜〜〜〜ミ〜〜〜〜ィ〜〜〜〜ル〜〜〜〜!!!」


「うっわ」


イリスとレイラが出かけてる間、謹慎処分を受け、王都から戻ってきたエーデルワイスはカモミールの元へ訪れていた。


「なんだよ。そんな声出さなくてもいいじゃないか」


「いきなり背後から抱きつかれりゃ誰でもそんな声あげるよ」


キッチンで作業していたカモミールに背後から抱きついたエーデルワイスは、そのままの姿勢で言葉を続けた。


「いやー、こないだの作戦の責任を取れってことで上層部の連中がうるさくて。女王陛下がある程度融通を効かせてくれたとはいえ、2ヶ月の謹慎を言い渡されちゃったよ」


「それはましな方なの?」


「まー、まだましな方なんじゃないかな。騎士団長の座を取り上げられた訳じゃないし、騎士団長の代理は騎士団内から選ぶことになったからね」


「へぇ。私はてっきりクビになっちゃったのかと思ってたよ」


「おいおい。手厳しいな。まぁそれでも問題はいくつかあるよ。騎士団の立場がなくなれば魔法研究省が台頭するだろうし」


「私そこら辺よく分かってないんだよね」


「まぁ、分からなくてもいいよ。それで騎士団の寮を追い出されちゃって……ちょっとの間にこので過ごしてもいいかな?」


「……ここにはレイラちゃんが住んでるよ」


「まじっすか。いやでもあの子が私を恨んでるとは思えな……」


「分からないよ。意外と根に持つタイプかも」


「……」


そう言うとエーデルワイスは少しショックを受けたような顔をした。

そんな様子が少しだけ面白く、思わず口元がにやけてしまう。


「嘘だよ。ちょっとからかってみただけ」


「あのなぁ。いやまぁいい。君にも迷惑かけたしそこは申し訳なく思ってる」


「……本当に?」


「本当だよ。ねぇ、それに私たちは元の関係に戻るってことでいいんだよな?」


「それでいいはず」


「じゃ、こういうことをしても良い訳だ」


「え?」


そう言うとエーデルワイスはふと振り向いたカモミールに唇を重ねた。


「……そうやってすぐ誤魔化そうとする」


唇が離れると、カモミールは抱きついてる手をどけさせ、エーデルワイスの方を睨みつけた。


「いや、元の関係に戻るならこういうこともまたしたいと思って……」


「……そんなの私もしたいに決まってるじゃん」


カモミールは目を逸らし、頬をほんのり赤く染めた。


「カモミール……」


エーデルワイスはそんな彼女を暫し見つめると、いたずらを思いついた子どものようにふと笑った。


「じゃ、これは完全に同意の上って訳だ」


エーデルワイスはカモミールの顎に手をやり自身の方へ顔を向けさせると、彼女の唇に再び自分の唇を重ねた。


(はぁ……流されやすい私に少しだけ嫌気がさすよ)


カモミールはそう考えつつも抵抗はせず、ただあるがままに身を委ねることにした。


「……私の馬鹿」


そんな昼頃の記憶を反芻しながら、カモミールはカウンターのテーブルに座りながら頭を抱えていた。


「まぁ、あの後。そんなすぐに泊められないからってエーデルワイスを追い出したんだけど……」


ちなみに今、レイラとイリスはお風呂に入っている。

ときおり叫び声が聞こえてくるが別に無視しても大丈夫だろう。


……レイラが私に言った、イリスと私とエーデルワイスの仲を元に戻し、三人いた時に戻れると提案した。

実際それはだんだん現実に近づきつつある。

私とイリスの仲は元々悪くなかったし、私とエーデルワイスはもう大丈夫。あとはイリスとエーデルワイスの仲さえどうにかなれば解決だ。


「……ちょっと恐ろしいな。レイラちゃんは」


レイラ=ユリウス。

彼女を私のとこに住まわせることを許可した理由。

私はカフェを経営するために、コーヒー豆などの食材をいくつかある商会から購入している。

その商会から紹介で、彼女を住まわせることにしたのだ。

確かその時、商会から聞いた情報は5つ。

それは以下の通りだった。


①彼女はまだ若くとても真面目な子であるため、仕事に対して一生懸命取り組む子であるということ。


②彼女は身寄りがないため、雇う場合は彼女の住まいを用意する必要があるということ


③彼女は魔法を扱うことが出来ないが、その分身体能力は秀でており、生身での戦いなら並の男性であっても負ける可能性があるということ。


④彼女は優しい人柄であり、街中に困っている人がいたら迷わず助けに行く。そのため困り事があったら自分のことはひとまず置いておきその解決を最優先するだろうということ。


これだけ見れば私以外の人が彼女を引き取ろうとするだろう。

しかし、実際には私を除いて誰一人として彼女のことを引き取ろうとしなかった。

その理由は最後の情報によるものだろう。


⑤彼女は今は無き村オランドル=シュタグラスの出身であるということ。


オランドル=シュタグラス村。

そこは宗教の進行が手厚い村であり、多くの信徒がそこに居住していた。

聖職者、敬虔なる信徒で賑わったその村は多くの人から認知され、国内でも一目おかれる場所だった。

だがその村は1晩にして姿を消してしまった。

外部からの攻撃を受けたとかでは無い。ただ突如としてその村のみが無くなっていたのだ。

その村にあった民家も聖堂もそこに住まう人々も、全てが跡形もなく消えており、かつて村があった所には、ただ何も無い平坦な地面のみが広がっていた。

原因は当然ながら不明。

その村は禁忌を犯し、神の怒りを買ったことにより消されてしまったのでは無いかという迷信が広がり、誰もがそれを信じるようになった。

しかしそんな村にも生存者が数名存在していた。

それは全員、まだ幼い子どもたちであった。

当然、その子たちから事情を聞こうとしたが全員が記憶の錯乱、記憶の抹消をしており事情を知ることは出来なかった。

彼女はその村の出身であった。

どうやら彼女はその村の記憶を全て失っているらしい。

私はそれを可哀想と思ったため、彼女を引き取ったのだ。

今思えば引き取った理由なんて、私が見捨てたイリスの影を彼女に重ねてしまっていただけなのかもしれない。

それでも彼女をここに連れてきたことを後悔していないし、これから先もすることはないだろう。

だってレイラの過去に何があろうと、彼女がただ運命に翻弄された存在であるということは変わりないのだから。

まぁ、今はそんな彼女に私とイリスが助けられているだけどね。


私は時折、お風呂場響いてくるレイラの叫び声や笑い声を聞きながらそう考えを巡らせた。


「それでもレイラちゃんの過去を知りたいかと言われれば、知りたいと思うってのも本音かもね」


けど、今はそんなことを気にする必要は無いだろう。

それは機会が訪れた時、知ればいい事だから。



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