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私達の魔法

「ふふふふ……あの攻撃をかわしただけで調子乗ってくれちゃって。じゃあ見せてみてよ!呪飛苗弾!」


紫色に咲いた一輪の花はこちらに向きを変えるとと呪いの込められた弾丸を無数に放った。


「レイラ。あれを」


「分かった!」


私はイリスにお姫様抱っこをされた姿勢のままカードを取り出す。


「静止した世界にて断然の如く動け!」


そう唱えカードが霧散して消えると、放たれた無数の弾丸がスローモーションのようにゆっくりとした動きになった。

否。本当にスローモーションになった訳では無い、視界がより精密になったことによって弾丸の動きが捉えられるようになり、ゆっくり見えるになっただけだ。

だがこれでどこにどう避けると弾丸が避けられるのか分かるようになった。

そしてこの効能は私だけではなく私と触れ合っているイリスにも作用する。


右左右右左右左左左右右


この順番で避けられる!

そう考えた直後、私を抱えたイリスがものすごい速度でその軌道に沿って弾丸を避け、走り出した。


「うぉっ!っとと!」


イリスは風魔法で脚力を強化しているため、その分スピードが跳ね上がっているのだ。


「レイラ!行くよ!」


「任せとけ!」


私がそう返答すると、イリスは私をララの方へと投げ飛ばした。


「は?え、ちょ!嘘でしょ!?」


予想外の行動にララは叫び、驚いた顔をしていた。

私はララにたどり着く前にカードを取りだし詠唱する。


錬成(トランスミテーション)!」


そう言うとカードが霧散し、手元に手短な剣が錬成される。

私はその剣をララに向けて大きく振りかぶった。


「ぐぅっ!?」


ララは急いで地から根を生やすとそれで剣を受け止める。

正直、受け止められるだろうなと思っていたので、そのまま空中で身を捩り両足でララの体に向けてドロップキックをかます。


「……きぃ!」


ララはその威力をもろにくらい丸太から落下し地面へと落ちていった。


「この……平民風情がぁぁぁぁぁぁぁ!」


ララは叫び声を上げるとそのまま根を操作し、ララと一緒に地面へ落下し上に乗るような姿勢になっていた私へと攻撃を放つ。


「危ねぇ!」


ララから跳ねるように上からどき、攻撃をしてくる二つの根を剣ではじき飛ばした。


「お前たちみたいに立場が下の人間は私より上に立つんじゃねぇ!地に這いつくばってろぉ!」


ララは再び根を動かし攻撃を続ける。

そしてそれと同時に地面から花が生え、そこから再び弾丸を飛ばそうと、その花弁を回転させ始めた。


(二つ同時に攻撃を行うことも出来るのか。これは中々厄介だな。でも私たちはこの子を撃破することが目的じゃないんだよね)


一方、レイラをララの方へ向かわせた後、イリスはルルの方へと駆け出していた。


「……!」


ルルは驚きで目を見開くもすぐさまポケットから小型のナイフを取り出し、呪いを込めるとイリスに向け投擲した。

イリスは走りながら頭を下げそれを避けると、投擲したルルの右手を掴みもう片方の手で彼女の右脇腹を殴りつけようとする。


「……っ!?」


ルルは慌てて脇腹のポケットにしまってあるナイフへ呪いを込める。するとそのポケットは外から見ても分かるように紫色へと輝いていく。


「……まぁ素直にやられてはくれないか」


イリスは紫色に光ったのを確認すると、手が当たる寸前のとこで動きを止め、ルルの右手を掴んでいた手を離す。


「え?」


ポケットのナイフへ呪いが込められたことを見破られたこと。そしてわざわざイリスが攻撃しやすいように掴んでいた手を離してくれたこと。

理解ができないというふうにルルが目を開き口を少し開けポカンとしていると。


「……んぶっ!」


その瞬間、ルルは自身の左頬に痛みが走ったのが理解できた。

イリスが掴んでいた手を離すとすぐさまルルの左頬に攻撃を与えたのだ。

そして休める間もなく空いたもう片方の手でルルの右頬を殴りつける。


「んぐぅ!?」


そのままイリスは止めることなく右手、左手と動かしていきルルをタコ殴りにしていった。


「んぐ!んぎ!んぬぅ!な、舐めないでください!」


ルルはこのまま殴られ続けてはいけないと、殴られる合間に足を後ろへと動かしイリスと少しだけ距離を空ける。

その瞬間に右手左手をそれぞれの両ポケットに突っこみ、呪いの込められたナイフを取りだし、イリスに向け投擲する。

しかし……。


「……え?」


目の前にイリスはいなかった。

ルルは不思議に思うと、後ろから風を切る音が聞こえてきた。

瞬時に後ろを振り返ると斜め上からイリスがとんでもない速度で飛んできているのが見えた。

魔法で強化した脚でその場から離れ、瞬時に木の上に移動しそこからルルへ向け飛びかかったのだ。


「ワォ!!!!!!!!!!!!!!!!」


今日一大きな声を出したルルは右手と左手を合わせバッテンを作り、イリスを受け止める準備をする。

しかしイリスの勢いを殺しきることはできず、蹴りを受けたルルの体は後ろへと吹っ飛び地面へと転がった。

ルルはすぐさま次に来るであろうイリスの攻撃を警戒しすぐさま起き上がる。

風魔法で速く攻撃してくるなら、イリスの攻撃を予め予測し対処するしかない。

そう思いすぐさまポケットからナイフを取り出し、次に来るであろうイリスの攻撃を予測、すぐさま攻撃を放とうとする。


「イリス!」


すると後ろからレイラがイリスを呼ぶ声が聞こえてきた。

イリスはレイラな方へ顔を向けると小さく頷き、そちらへ駆け出していた。


「へ?」


逃げた?

いやそれとも先にララを倒すべく加勢しに行った?

それらの可能性を考えたルルは、イリスの方へと駆け出していった。

しかしイリスがしようとしているのはそんなことではない。


私はイリスを呼ぶと、すぐさまこちらへと向かってくるイリスの方へ私も走り出した。


「え?」


背後からララの驚いた声が聞こえてくる。

イリスと私はすれ違った直後、軽く横移動をしてお互いの背中が重なるようにする。

そして私の左足とイリスの右足が重ね合わせる。その瞬間。

ビュンと風が吹いた音がし、私とイリスは凄まじい速さでそれぞれの方向へ駆け出したいた。

イリスの風魔法によって、足が地を蹴るその瞬間に、足から地に向け風を射出したことにより勢いよく走り出すことを可能にしていたのだ。


「……!?」


「……げっ!?」


私はルルの驚いた顔が、イリスはララの驚いた顔が見て取れた。

ララはこのままレイラを相手にすると思っていたため、突然の選手交代に動揺してしまっていた。

イリスはその速度のままララに向けて飛びかかり、右肘で彼女のお腹に向けてエルボーをくらわせた。


「ぐふぅっ!?こ、この!下民共がぁ!」


ララはすぐさま根を操作しイリスとの間に壁を作る。そして近くに咲いた一輪の花が弾丸を放ち、根の壁ごとをイリスを貫通した……はずだった。

イリスは風の斬撃を即座に放ち弾丸を根の壁諸共破壊する。

その動きは予想外だったのかララは動揺して動きがもたついてしまう。

それをイリスが見逃すはずはなかった。


「……今まで私を差別した人は腐るほど見てきた。けど、あくまでその人らが差別したのは魔女である私だけであって、レイラみたいな普通の子まで差別なんてしたりしなかった」


ララはイリスの目の前に立ち、腰をかがめ右手をグーの形にした。


「平民だからって理由で差別するような上層部の人間に、私や優しい信念を持つレイラが負けるわけないでしょうが!」


風魔法により勢いを生み、とんでもない威力で射出される拳。

しかもその握りしめた手は風魔法で圧縮された空気を帯び弾丸のような硬さを持つ。


「恥を知れ!!!!」


その拳は通常の攻撃の10〜20倍程の威力を持つ。


風圧拳(プレイシュンポイン)!〉


その拳はララのお腹へと直撃した。


「う、うごぉあぁ!?!?」


ララは勢いよく吹き飛ばされ石壁へ激突。

壁に大の字型の大穴を空け、何かにぶつかった衝撃音とガラガラと何かが崩れる音がそこから鳴り響いた。


「ひ、ひぃ!」


それを見ていたルルは顔を青ざめていた。

私は彼女のお腹へ勢いよく抱きつくように飛びかかると、ふらつきながらも攻撃をしてくる彼女の攻撃を剣で弾き飛ばしていた。

徐々に距離を縮めて捕まえるつもりだったけど、イリスの攻撃を見て戦意を喪失してしまったらしい。


「さてと」


するとイリスがこちらへと振り返りルルを睨みつける。

顔を青ざめた彼女はビクビクと足を震わせていた。


「え、えーっと。相変わらず容赦ないな。イリスは。まぁ私は……そうだな」


見たところルルの両頬は赤くなっているしもう十分イリスの攻撃は受けたのだろう。

だったら……。


「えいや!」


私は右手を彼女の額に持っていきデコピンをした。

するとルルはスイッチが切れたかのように気を失い地面に倒れ伏した。

そんなに威力なかったよね、このデコピン?


「相変わらず優しすぎじゃ?レイラ」


そう言いながらイリスはこちらへと歩いてくる。


「イリスが容赦なさすぎるだけでしょ」


しかし邪魔は入ったが、今はデート中だ。

それに忘れがちだが今は見ばらしのいい高台にきている。


「!あれを見て!」


私が指さした方を見つめると、夕日が今にも沈みそうになっている様がみてとれた。


「……綺麗」


イリスがそうポツリと呟いた。


「ね。いきなり人に襲われる大変な毎日だけど、私もっとイリスと一緒にいたい」


私はイリスの手を取り目を見つめ笑顔で言う。


「私、イリスのことをもっと知りたいな!」


イリスはすこしだけ頬緩ませると言った。


「いいの?私といるともっと迷惑かけちゃうかもよ?」


「大丈夫。それに今回の件で確信した。やっぱりそんな世界は間違ってる。いっそのこと変えてしまうべきなんだって」


「相変わらずだねレイラは。じゃあちょっとだけ期待してる。でも、心配しなくても大丈夫。もうどこにも行ったりなんてしないから」


私はイリスから聞きたい言葉を聞けて満足する。

それと同時に日も沈み終える。


「もう暗くなってきたし、そろそろ帰ろうか」


「うん。ところでこの人らどうする?」


イリスは倒れたままのルルとララがいるであろう大穴を見つめる。


「……本当にどうしようか?」



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