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そうこれが運命ってやつさ

 残念なことにイリスに逃げられた私は、仕方なくそのまま引越し先の家へと向かった。

 そしてその翌日。


 ドアが開くと同時に、カランカランとドアベルが鳴り響いた。

 その音に反応して私はドアへと振り向き、言う。


「いらっしゃいませー!!お客様!!」


 そう!なんたって私は今、喫茶店でスタッフとして働いているのだ!!


 詳しく説明すると私が引越し先として住むこととなった家は、喫茶店を経営してる所だった。

 そこで私は住まわせて貰う代わりに、こうして喫茶店のスタッフとして働くことになったのだ。

 そして今日は私の初出勤日。

 そんな初めてのお客様は私の姿を見るなりこう言った……。


「…………ゲッ!」


 その人はまるで天使が舞い降りたかのような美しい白銀色の髪をしており、それが肩にかかるかかからないかくらいで切りそろえられたショートヘア。その白髪と同様に美しい白い肌。そしてサファイアのような美しい青い目をしている彼女は……。


「あー!!来てくれたんだね!イリスちゃん!」


 昨日、困ってそうだったので助けた少女。そして何故か助けなんて必要ないと怒ってきた、イリス=ユア=ツゥヴァリネだったのだ!!


「さようなら」


 そんな彼女は私を見るなり嫌な顔をして、開けたドアを勢いよく閉めた。

 ちょっと待てい!!


 私は急いで喫茶店から飛び出し、彼女を追いかける。


「何も逃げなくたっていいじゃない!!」


「うるさい」


「開けてしまったドア、どうせならうちに寄ってこうよ!!」


「あんたの家じゃないでしょ」


「私はあそこの喫茶店で住み込みで働いてるの!!」


「私の行きつけのお店だったのに最悪。もう行けないわね」


「そ、そんなこと言わず!!」


「全く昨日あんなに言ったのに、まさか昨日の今日で会うことになるなんてね」


「それに関しては私もびっくりした!!そうこれが運命ってやつさ」


「馬鹿なこと言ってないで、私を追いかけるのいい加減やめてくれない?」


「だって逃げるからつい!!それに今ならパンケーキとコーヒーが50%オ……ブゥ!!!!」


 彼女が急に止まるもんだから、つい激突してしまった。

 ちょっと!道路交通法違反!


「行く……」


「へっ?」


「やっぱお店行く」


 何を言い出すのかと思いきや、やっぱり店に入ってくれるらしい。

 どういう心境の変化?


「ははーん、さてはお金ないな」


「………………そんな事ない」


「何だ今の間は」


 何だかんだあって喫茶店に無事入ってくれたイリス。

 彼女はパンケーキとコーヒーを注文した後、気怠げに窓から外の景色を見つめていた。


「全くあんまり彼女をいじめるんじゃないよ」


「はい……」


 私が店から飛び出したもんだからオーナーに少し怒られてしまった。


 オーナーの名前はカモミール・ブラウンだ。

 彼女は茶髪のロングヘアを腰まで下ろした背の高いお姉さんで、穏やかな雰囲気をしている。

 まさに私好みのお姉さんといったところだ。


 しかし、彼女がここに来るとは意外だった。

 天涯孤独でどこにも外出しそうにないイメージだったからだ。


 食べ終わった彼女は支払いをしようとする。


「50%OFF」


「ん?」


「忘れたとは言わせないよ」


「あ……そういえば」


 そういえばそうだった。

 彼女を引き留める為に嘘ついてしまっていたのだ。

 くそー、仕方がない。

 発言撤回を今更する訳には行かないので言いつけ通り50%OFFにしておく。


「それじゃ」


 支払いを終えた彼女は店から出て行こうとするが、やっぱり昨日のあれじゃまだ話が終わったとは言い難い。


「ちょっと待って!!」


 私は追いかけようとするが振り返り彼女は言う。


「まだ勤務中でしょ」


 それはそうだが……でも。


「いいよ。行ってきな」


 すると後ろから声がかかる。

 声の主は先程紹介したオーナーのカモミールさんのものだった。


「カモミール!!何を言って」


 するとイリスは驚いた声で、カモミールさんに問い返す。

 ん?ちょっと待って?

 何でイリスが名前を知ってるの?

 もしかして2人ってお知り合いですか?


「別に不思議なことじゃないだろ。今はこの子を雇ってるけど、別に私1人でも店は回せるんだからさ」


「で、でも……」


「大丈夫。レイラは君が思うような子じゃない。心配する必要はないよ」


「……」


 え、何。何か私だけ置いてけぼりなんですが。

 私が戸惑っているとカモミールさんは私に言う。


「行ってきな。彼女が心配なんだろう?」


「はい……お言葉に甘えて」


 私は言うことに従うことにした。

 イリスは若干不服そうだったが、強く言い返す気がないようだった。

 来ていた制服から着替えイリスについていく準備は整った。

 出ていく前にイリスはカモミールさんに問いかける。


「そういえば、エーデルワイスは元気?」


 少し驚いた顔をして、返答した。


「うん。元気だよ」


「そう……」


 イリスはドアを開け外に出ていき、私もそれについて行く。


「ねぇ、さっき言ってた人って誰?」


「あんたには関係ない」


 相変わらずぶっきらぼうだ……。

 なんとしてでも、この氷のような凍てついた心を溶かしてやるんだから!!


 そうレイラは決意しながら街を歩く。

 そんな2人の後をつける人が女が1人いた。

 それは茶色コートを着てフードを被り、顔を隠していた。

 

「ふーん。あれが魔女イリスってやつか」


 彼女は2人の後ろ姿を見ながらニヤリと笑った。


「ここでいっちょ、あいつを捕らえて功績を挙げるとしますか!!!!」


 彼女は勢いよくコートを脱ぎ去った。

 コートの下の服は、白いカッターシャツに青いネクタイ。そしてその上から青いブレザーを羽織り、下には青いスカートを履いていた。

 そして彼女の左胸ポケットにはある紋章が描かれている。

 それは馬に乗った騎士が盾を持ったもの。

 それは騎士団に所属する人のみがつけられる紋章であった。

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