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アクセサリー屋って一体何を買えばいいんでしょうね?

私とイリスは見ず知らずの親切な人が紹介してくれたアクセサリー屋の方へと向かった。

目的の店に着くと、遠目でも見た事のないような綺麗なアクセサリーが並んでいた。


「凄い!ていうかめちゃくちゃ綺麗じゃん!」


私は思わず目を輝かせてしまう。

まぁそれも仕方がない。なんだって私はアクセサリーとかの光り物に目がないからね!


「いらっしゃいませ」


すると店員が抑揚のない声をかけてくる。

見やるとそこにはオレンジ色の髪を肩口で切りそろえ、長い前髪で左目の隠れていた少女がいた。

一方、イリスはというと不思議そうな顔をしながら並んでいるアクセサリー類を眺めていた。


「これがアクセサリー……」


「イリスはあまりこういう店には来ないの?」


イリスがあまりに怪訝そうな顔をするものだから、つい私は尋ねてしまっていた。


「来ないね。ていうかあんまり外出ること自体少ないから」


「なるほど。確かに街中で真っ先に日陰へ隠れてそうだし」


「今失礼なこと言った?」


「いやなんでもないです」


しかしこういう系列の店を見た事がないなら紹介だけしてみてもいいかもしれない。


「イリスはアクセサリーとか似合うと思うんだけどな。別にレディースものだけじゃなくてメンズでも似合いそうだし……」


「オシャレに興味ないからあんまりよく分からないんだよね」


「んー、そうだな。ネックレスとかリングとかブレスレットとか色々置いてるあるし、何となく見て回って興味のあるものがあったらつけてみるとかでいいんじゃない?店員さーん、試着とかって大丈夫ですか?」


「大丈夫。問題ない」


店員さんから許可は貰ったしその方向で行こっかな。


「興味のあるものか。私は基本的に動きやすい格好をしてるから、つけるなら手につけるやつとかがいいかな」


そう言うとイリスはリングとかブレスレットの方を見てまわり始めた。


「手につけるやつか……どうせなら私も同じ感じのやつとか買おうかな」


私も同じコーナーを見て回ろうとしたらイリスが何やらリングを凝視ている。

気になるものでもあったのかと思い聞こうとしたら、口を開く前にイリスが喋り始めた。


「そういや思ったんだけどリングとかって買うのになんか勇気とかいらない?」


「え、そう?」


「だってこういう指輪ってまるで結婚指輪みたいじゃん。オシャレとしてつけるのは重すぎるというか」


「まぁ、言いたいことは分かるけど考えすぎじゃない?」


「そうかな……でも、私はこういうのをつけるにはちょっと戸惑うというか、どうせならこういうのは大切な人と着けたいんだ」


「そっか」


大切な人か。

まぁイリスが言いたいことは私も少しばかり共感できる部分はある。

でもイリスがそこまで指輪に対して考えがあるとは思わなかった。

イリスは大切な人と言ったけど結婚願望とかやっぱりあったりするのかな?

そんな疑問がふと私の頭をよぎった。


しばらくするとイリスが少し気にものでもあったのか、ひとつの商品に手を伸ばした。

赤と青と白の紐を交互に編んだもの。ミサンガだった。


「これは?」


「それはミサンガ。手首につけると願い事が叶うって言われてるんだ」


イリスはしばし手に取ったものを見つめていると、独り言のように小さく呟き始めた。


「願い事……そんなものもあるんだ」


「これにしよっかな」


「お金出そっか?」


「いや別にいいよ」


「でも、この店って私が連れてきたし無理して買わなくてもいいんだよ?」


「?無理なんてしてないよ?普通にこれがいいと思ったから買うつもり。それにさっきのパフェ店は私が行きたいから連れてって貰ったみたいなもんだし、これでおあいこってことで」


正直、服屋にしろこの店にしろ私が無理を言って連れて来たに過ぎないと思っていた。

だからもしかしたら心の底ではイリスが嫌がってるんじゃないかって思ったんだけど、全然そんなことなさそうだし、私の思い込みだったようだ。


「思い込みがすぎたか。ごめんごめん、ちょっとイリスのことを甘くみすぎてたかな」


「?まぁ、そのお金で自分の分も買ったらどう?レイラも欲しいものがあるんでしょ」


「バレてたか」


「目線でバレバレ」


「あはは、じゃあこれにしよっかな」


そう言うと私はピンクと緑と黒の糸で編み込まれたミサンガを手に取った。


「……真似した?」


「なわけ!私もこれが欲しいと思ったの!」


「てっきり私のと似たものが欲しいとばかり」


まぁ心の底でイリスと似たもの……ペアルックみたいなのがしてみたかったと思ってた。

だってお揃いってなんだか素敵じゃないか。

私だってそういうのに憧れがある。だって過去にそういったことをしようとしても出来なかったから。いや、この話は今関係ない。やめよう。


「私も願い事ができたからね。『イリスともっと仲良くなれますように』っていう!」


「な、なにそれ!?」





私、ルルは魔法研究省 長官リーシア=クライシス様に言われ、今客として来たこの二人を捕えるように言われている。

どうやら二人は買うものを選んだようで店員を装ってる私の元へ会計を済ませにきた。


「合計で18フランです」


そういうと二人は20フラン分の通貨を出してくる。

私はその通貨を受け取ると、2フランをお釣りとして返す前に力を込めた。

するとその通貨はほんの少しだけ呪いが込められる。

その呪いは手にしたものを一時的に昏睡させる効果を持つ。

そう対象に呪い込める、それが私の魔法。

呪いの込められた通貨を二人へと返そうとする。

受け取ると二人は瞬く間に昏睡するはずだ。

どうやらララはしくじったみたい。

ここは私が成功させて……。


すると、通貨を前にしたイリスは顔を顰めると勢いよく硬貨を奪い取った。


「え……?」


私は思わず驚きで目を見開いた。何故なら、彼女が……魔女イリスがそれを手にした瞬間、硬貨に込めた呪いをあっさりと打ち消してみせたからだ。

呪いの消えた硬貨を魔女がじっと目を見つめる。

彼女は魔女というよりまるで天使のようなサファイアのような美しい青い目で私をじっと見つめ言ってくる。


「この硬貨呪われてるよ?」


「そんなはずは……」


「まさかとは思うけど、あなたが硬貨に呪いをかけた訳じゃないよね?」


「……私は何も知らな」


やばいバレてる。

本当にまずい。

どうにか言い訳でも……。


「まぁまぁ!そんなことはないってイリス!この人もそれを知らなかったみたいだし、きっと同じ被害者だよ!」


すると隣にいたピンク髪の……確か、レイラ=ユリウスが声を上げる。


「まぁレイラがそう言うなら」


すると先程までの態度とは変わり、イリスが借りてきた猫のように大人しくなる。


「ごめんなさいね!それじゃ!」


レイラ=ユリウスはそう言うと、こちらに手を振って去っていった。

……呪いを込めたのは私なのに、すぐに私の言葉を信じて助け舟を出すなんてかなりのお人好しだ。

私はそう思いながら、二人の去った方向を見つめていた。




「いやー!何事かと思ってびっくりしたよ!」


私は隣を歩くイリスにそう言ってみる。


「呪いが込められてた。まぁ私の力でかき消したし大丈夫なはず」


イリスはそう言うと手にした硬貨を一つ私に返してくる。


「さすがだね、イリスの魔法の力は」


「……別にそれほどでもない」


イリスは相変わらずクールな様子だ。

そんなイリスをちょっとおちょくってみたくなった。

私は買ったミサンガを右手首に通した。


「でもこれでイリスとお揃いだね!」


「やっぱお揃いにしたかったんでしょ?」


イリスはそう言いながら買ったミサンガを右手に通した。


「まぁ、それもあるね。せっかくイリスと二人で遊ぶことが出来たんだし、記念のものが欲しかったんだよねー」


そう言いながら私はミサンガを通した右手首を太陽へと掲げ見つめる。

太陽に照らされたミサンガはその美しさをより鮮明にしていた。


「記念……」


イリスは不思議そうな顔で私を見つめていた。


「そうそう、友達と初めて遊んだ記念って結構貴重だと思わない?」


「確かにそうかも。って、え?と、友達?」


するとイリスは驚いたように目を丸くした。


「え、友達じゃなかった?もしかして私の思い違い!?」


「い、いやそういう訳じゃなくて……」


するとイリスは少しだけ頬を赤らめると俯きながら話し始めた。


「友達って言われたの。何だか初めてで……えっと、その……嬉しい」


「……っ!!」


私はイリスがそんなこと言うもんだから思わず彼女の手を握りしめてしまった。


「れ、レイラ?」


「よし!じゃあ今日はお友達記念日だ!」


イリスが友達なんて出来ず一人で過ごしてきたことは知っていた。

恐らくカモミールやエーデルワイスは彼女にとって家族みたいな感覚だったのだろう。

そんなイリスの初めての友達が私!

その事実に私は嬉しくて胸が飛び跳ねた。

イリスは驚いた顔を見せていたが、顔を綻ばせると嬉しそうな顔を少しだけ見せた。


「……うん」


「よし、どうせなら他のところも見て回ろう!」


そう言うと私たちは次の場所へと駆け出して行った。

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