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幸せの形って何ですか?

イリスとデートの約束を取り付けた私はルンルンとした気分でカフェ店まで戻ってきた。


「ただいまー」


もう閉まったはずの店内を見ると、カウンターに立つカモミールさん以外にもう1人身知った少女がいるのが確認できた。

紫色の髪をツインテールにまとめ、白いカッターシャツに青いネクタイと青いスカート、上には青いブレザーを着用している。

彼女の左胸ポケットには馬に乗った騎士が盾を持っている紋章が描かれており、それは騎士団に所属する人のみがつけられるものであった。

セリエ=ユースター。

騎士団所属の少女であり、魔女捕獲作戦に派遣されたメンバーの一人であった。


「おかえり、遅かったわね」


セリエはここの家族の一員であるかのような口調で私に言う。


「あー!敵側の人だ!」


「誰がぁ敵側の人よ!」


セリエは座ってた席から立ち上がりそう突っ込んでくる。

なんでこの子がいるんですか?という顔でカモミールさんの方へ振り向くと、肩を竦めて笑うだけだった。


「本日はどのような要件でここにいらっしゃったのですか?お嬢さん」


「探偵みたいな口調で聞いてくるんじゃないわよ。ここはあんたの事務所かなにかか」


セリエは溜息をつきながらも話を続ける。


「まぁでも用があってここに来たのは本当。立って話すのもなんだし座って」


「主導権がセリエにあるみたいなのがムカつく」


「うるさいわね!別にいいでしょ」


私はセリエの向かいの席に座る。


「私が用あってここに来たのは、騎士団の件について。さらに言うと騎士団長エーデルワイスについてのね。先日、エーデルワイスに対して下される処罰の内容が通達がされたわ」


「どんな内容だったの?」


「二月の謹慎。まぁ妥当と言えば妥当な処罰なんだけど。その後でちょっと問題が起きそうでね」


「問題?騎士団長の代理についてとか?」


「それもあるけど。別にそのことについては何とかなりそう。一番の問題はイリスについてよ」


私はその言葉にビクッと反応してしまう。


「イリスが。一体なんで?」


「今回の一件は騎士団の信用に大きく傷をつけてしまった。それを埋め合わせるように間違いなく一つの勢力が幅をきかせてくる」


「その勢力は一体どこなの?」


「魔法研究省。魔法をより発展させることを目的とした組織よ」


「?特に問題がある組織にように思えないけど。その組織が一体なんでイリスをなんで狙ってるの?」


「あくまでそんなのは建前にすぎない。己の利益ばかり考えてる連中の集まりだからろくなもんじゃない」


「はぁ。じゃあなんで問題のある組織って分かってるのになんで解体されないの?」


「解体できないのよ。魔法の研究した上で成果はちゃんと出してるし、それを女王陛下に提出。解体しようにも表面上は問題がないからどうしようも無い」


「なるほど……それがイリスを狙うって言うなら確かに対処した方がいいかも。でも、本当にそれだけがセリエの言いたいこと?」


「?どういうことよ?」


「いやだって、それを伝えるくらいならここを借りずとも道端でもできる話だと思うし……何かセリエ自身が困ってる事があるじゃないかなって思って」


「……うぐっ!」


セリエはまるで嘘がバレたかのような反応をして見せた。

だが、その反応になるのも当然のこと。

セリエ自身はイリス関連のことのみをレイラに伝え、騎士団の問題は自分で解決するつもりであったから。

それでいいと思っていたが、レイラにその内心すらも見透かされていたのだから。


「……あんたは、なんていうかものすごくお人好しね」


セリエは少し口を噤んでいたが、観念したように話し始めていた。


「え、そう?」


「自覚ないの!?ねぇ、あんたはイリスの味方なのよね。じゃあ仮に私が困っていたとしたら助けてくれるの?」


「そんなの当然」


「じゃあ、私とイリスが同時に困ったら?」


「両方助ける」


「……はぁぁぁぁ!なんだかウジウジ悩んでた私がバカみたいじゃない」


セリエは盛大にため息を着くが、なぜため息を着いたのか、その意味が分かっていない様子のレイラはただ首を傾げた。


「まぁ確かに、内心では私も助けてたのかもしれない……。正直に話すよ、その魔法研究省と騎士団の仲はとんでもなく悪いの」


「それはどうして?」


「魔法に対する考え方の違いがね。魔法研究省は己を含む上層部の人間の利益を、騎士団は国のための利益を求めてる。そこが一番の問題だと思う。それともう1つの原因があって、騎士団は平民を含んだ力のある者のみが入団を許されているけど、魔法研究省は上層部役員らの親族のみで結成されている。身分の違いって結構、敏感な人が多いのよね」


「なんていうか、問題だらけなんだね」


「その結果、見事なまでに仲が悪くなっちゃって。騎士団は魔法研究省を頭の硬い連中だと思ってるし、魔法研究省は騎士団へねちっこい嫌がらせとかしてくるし、まぁとんでもない状況よね」


「確かにイリスだけじゃなくて、セリエやエーデルワイスらも危機的状況にあることは分かったよ。大丈夫、私が守ってあげる」


「その自身は一体どこから湧いてくるのよ。まぁ、それを聞いて何か靄が晴れたわ。ありがとね」


「いえいえ!」


「……ねぇ、話変わるけどさ。あんたにとっての幸せって何?」


「ん?幸せ?それまた突飛なことを聞いて来るね」


「疑問に思ってね。あんたは人を助けることに注力してる。それで幸せになれるのかなって思って」


「1回話したと思うけど、私は助けた人の笑顔が見られたらそれでいいっていうか、それが私の幸せの形になるのかな」


なんでその考えに至ったのだろう。という疑問がセリエの頭をよぎったが今は言わずに置く。


「そういうセリエこそ、幸せってどういうものなの?」


そんなことを考えているうちに質問返しを食らってしまった。

思わず面食らってしまったセリエだったが、仕方なく話し出す。


「幸せって言われても……。なんも思いつかないわね、普通の生活を送れたらそれでいいっていうか」


そんなことを話してると、レイラの元にコーヒーが届いた。

カモミールさんが運んできてくれたのだ。


「2人とも随分難しい話をしてるね。でもそれじゃ幸せっていうより生き甲斐になんじゃない?」


「え、そうですかね。いやー、私としてはこんなもんが幸せだとばかり」


「まぁ、幸せなんてものは本人の定義によってバラバラかもしれないけど、例えば甘いものを食べるとか、いっぱい寝るとか、好きな人と結婚するとかそういうのを言うじゃない?」


「あー、確かに!食べるのや寝るのは確かに私も好きです!最後の好きな人と結婚ってのはよく分からないないですけど」


カモミールさんとレイラが二人で話し始めたのを横目に、セリエは突っ込みを入れた。


「あんた好きな人とかいなさそうだもんね」


「え、そう?そういうセリエこそ好きな人はいないの?」


「えっ!私!?す、好きな人なんて…………いないな」


最後の『いないな』だけとんでもないマジトーンだった。


「そんなこと言うんだからセリエはいるとばかり。ていうか騎士団にいるんだし出会いとかあるでしょ。騎士団って男の人が多いんじゃないの?」


「いや、いるにはいるけど。なんていうかそんなに男の人に興味がある訳じゃ。……こんなこと言うってことはあんたこそ気になってるんじゃないの!?」


「私の好意対象はお姉さんのみです」


「何よそれ!?」


「あはは」


2人のやり取りにカモミールは思わず笑みをこぼした。

それに注意を向けられたレイラはカモミールに疑問をなげかけた。


「カモミールさんは男の人に興味がないってことでいいんですかね?エーデルワイスと付き合ってるみたいですし」


「確かに。その話、私も詳しく聞きたかったのよね」


「え、えーっと」


カモミールは苦笑いをするが二人からの熱烈な視線に観念して話し出す。


「男性にあまり興味がないって言うより、よく分からないが正しいかな。まぁ私の場合、そんなに人と関わる機会が少なかったし、自然と対象が女性になったのかもしれないけど」


「へぇ。じゃあ二人はなんで付き合ったんですか?」


「グイグイ来るね……」


カモミールさんは少しだけ照れていたが、観念したように話し出す。


「私とエーデルワイスの場合は、魔女の洋館から飛び出した時に成り行きでね。最初はよく分かんなかったけど、助け合っていくうちにそれが友情っていうより恋心だってことに気づいたっていうか」


「グハッ!これが本場の恋愛話!私にはまだ早すぎたようだ……」


レイラは何者かに撃たれたような仕草をして椅子の背もたれに倒れかかる。

セリエはそれを見て呆れたように手元の飲み物に口をつけた。


「それじゃあ、友情というより恋心だと気づいたからこそ関係がもう一歩先に進んだってこと?」


「そうなるかな。勝手に私たちが名付けただけだけどね。どっちかっていうと私たちがおかしいだけで普通は友情止まりのはずだと思うよ」


「愛におかしいなんてものは無いのです!!」


そう言うとレイラは復活して、机に手を叩きつけた。


「本人がそう自覚したなら周りがどうこう言おうと、それが愛だと思います!」


「あんた一体どうしたのよ」


「私は感動しました!確かに幸せの形なんて人それぞれ!でも、幸せの中に愛というものは確かにあって、それらは全部人それぞれなんだって!」


「えっと?」


カモミールは嬉しいような不思議そうな顔で首を傾げた。


「なので私はカモミールさんの愛の形を肯定します!」


「ここはありがとうで言いのかな?」


「なんか、やたら嬉しそうね」


「嬉しいよ。カモミールさんが幸せそうで。人の幸せは私の幸せってこと!」


「まぁ、あんたがそう言うならそうなんだろうね」


その後は、なんてことない日常話をお互いしてその場は解散となった。


「じゃあ私はこれで」


「じゃあね、セリエ。あ!あと私、明日イリスとデートすることになったのよね」


「何?惚気話?あんたたちそんなに仲良かったっけ?」


「自慢話です。今は仲良くなった最中にとこ」


「そう。精々、あんたはイリスを守ることに注力しなさいよ」


「何言ってるのセリエ」


「……?」


「今の話であなたも助ける対象に入ったってこと。忘れないでよね」


「……!はぁぁ、ほんとにあんたってやつは。もう帰るわよ」


セリエは驚いた表情をした後、そう言ってその場を去った。

それを見送ったレイラは両手を組み合わせるとそれを空中に掲げ、思っいきり背伸びをした。


「明日はデートだし、早く寝ないと。そういえばイリスっていつも服同じだよな。それも明日見に行こっかな。いや、それ以前にイリスはちゃんと起きれるのか?」


イリスはそう言うと扉を閉じ、カフェ店でついてた最後の灯りも消える。




一方、パリスイ市

魔法研究所 長官室にてリーシア=クライシスは部下から受け取った資料を捲っていた。


「魔女イリス=ユア=ツゥヴァリネ。年齢不明。出身地不明。先代の魔女の力を受け継いだとされる西の魔女。分かっていたけど情報があまりにも少ないな」


そう言いながらリーシアは資料を次々と捲っていく。

するとあるページで目をとめた。


「ん?これは……ふむふむ。親しいものはババロン村の1部の面々のみだが、近頃魔女と一緒にいるのが見かけられるようになった少女が1人。レイラ=ユリウス?へぇ……」


リーシアはにやけ顔を浮かべると、資料を机の上に投げやり窓から外を眺めた。


「騎士団の連中は大人しくなった。なら今度はこの子らで遊ぶことにしよっかな」


いつも読んでくださってる方、ここまで読んでくださった方ありがとうございます。

小説家になろうのメンテが開けたので遅い時間ですが投稿です。 投稿の形式が変わっていたので若干戸惑いました。(汗)


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