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魔女捕獲作戦②

私はカモミールさんの青の結界に閉じ込められた。

今すぐイリスの元まで行きたいというのに。

とにかくまずはここから脱出しなくては。

でも、その前にひとつ確かめなきゃ。


「カモミールさんはどっちの味方なんですか?」


急に何を言い出すんだこの子は、といった顔で首を傾げた。


「どっちの味方って……私はただどっちつかずの中立だけど」


中立か。

もし本当に中立だって言うなら今すぐ私を解放してもらいたくある。


「中立ですか。ということはイリスの味方でもエーデルワイスの味方でもあるって事でいいですよね」


「……そうなるわね」


「正直なこと言うと、カモミールさんがどちらかの味方についてるとは思えないんです」


「……」


「なんでかって?仮にイリスの味方で本当に私を遠ざけたいのなら手足でも縛って、物置にでも突っ込んでおけばいい。イリスに勝ってほしいなら助力に私を連れて行くったもいいし、私で頼りにならないならカモミールさんがついて行けばいい。」


「……」


カモミールさんはただ黙って私の話を聞いていた。

もしこれで聞く耳持たなければ解決のしようがなかったかもしれない。


「エーデルワイスの味方ならイリスを先に捕まえてもいいし、エーデルワイスと協力してイリスと戦えばいい」


「言ったでしょ。私は中立だって……」


「中立なら誰の味方なんです?」


「……」


やっぱり黙ってしまった。

私の予想通りだ。

カモミールさんにどちらかに味方なんて出来ない。

どちらにもつけないから中立だなんて都合のいい理由をつけてるだけだ。


「違うでしょ。本当はカモミールさんは中立なんかじゃない。本当はどちらの味方にもつけずにいるだけ。いや正しくはどちらの味方にもなりたいけど怖くてできない。そういうことじゃないんですか」


「……なんて」


私が言葉を言い放つと明確にカモミールさんの機嫌が悪くなったのが感じ取れた。


「今、なんて?」


再度聞き返してくる。

ならば私は何度でも同じことを言うだけだ。


「どちらの味方になりたいけど怖い。そうなんでしょと言ったんです」


「レイラは!……どこまで知ってるの?」


カモミールさんは怒りか声を震わせ、両手で私の肩を掴んできた。


「カモミールさんとイリスとエーデルワイスは3人とも先代の魔女に育てられたこと。そして今はバラバラになってしまったこと」


「……そう……そこまで知ってたんだね。私たちがイリスから離れたのは、いつまでもこのままではいられないと思ったから」


「……それはどういう」


私は思わぬ言葉に聞き返してしまった。

このままではいられないって……一体どうして。


「どこまで聞いたか分からないけど、私たちはとっても仲良しだった。それはもう何をするにも3人で、常に一緒にいるような。イリスとエーデルワイスなんてね。ずっと魔法を競い合ってて、それがものすごく楽しそうだったんだよ」


「じゃあどうして」


「魔女が死んだ時、私とエーデルワイス2人で話し合ったのいつまでもこのままじゃいられない。もしこのままなら、いつまでたっても魔女に縋り付きっぱなしの子どもじゃいられない」


「どうしてカモミールさんとエーデルワイスの2人だけでその答えに?イリスは?」


「イリスはね。今はあんなんだけど昔は子どもみたいに無邪気に笑う子だった。そしていつまでも魔女に縋りっぱなしの。まるで本当の親みたいに慕ってた」


「イリスが?」


今の誰にでも冷たいイリスと比べたらとてもじゃないが信じられない。

でもイリスにもそういう時期があったんだろう。


「だから魔女が死んだ時、ものすごく悲しそうだったよ。そしてずっと悲しみに浸ってた。でも人間なんだからいつまでも沈んでなんていられない。前を見て進まなきゃいけない」


「それでイリスを置いて出ていったと」


「そう。まずはエーデルワイスが家を出ていった。もっと強くなって、自分自身で居場所を作るために。そして次に私が出ていった。確かにいつまでもこのままじゃいられない。変わらなきゃと思ったから」


「そんな……」


それじゃあイリスはひとりぼっちだ。

誰にも助けを求められず今度こそ完全に。


「それじゃあイリスはただ1人で!今まで苦しんできたってことじゃないですか!そのうえ望んでないのに魔女になってしまうなんて!」


「私だって!」


するとエーデルワイスは声を張り上げた。


「私だって……ずっと3人一緒にいたかった……」


悲痛な、まるでどうすることもできず泣き喚くことしかできない子どものような。


「でも出来なかった……私はどっちの味方にもつくことができなくて……結局いつまでも中途半端なままだったんだ……」


「カモミールさん……」


「私にどうすれば良かったって言うの?エーデルワイスのように自分で居場所を作れるくらい強くなれば良かったの?それともイリスと一緒にいつまでもあの家で暮らせば良かったの?……私にはどちらも出来なかった。何となく家を出て、何となく過ごして、何となく職に就いた。あの2人みたいに私は変われなかった。……もう戻れないんだよ。あの頃みたいに仲の良かった3人には」


私はただ黙ってカモミールさんに言うことを聞くことしか出来なかった。

私は知らなかった。カモミールさんがそこまで考えて、追い込まれていたこと。

3人ずっと一緒にいたかった。それがカモミールさんの願いだった。

みんなバラバラになってしまった今。もう戻ることなんて確かに出来ないかもしれない。


……でも。


「ごめんなさいカモミールさん。私、何も知らず酷いこと言ってしまって」


「ううん、いいの。もっと早くに話しておけば良かっただけだから」


「……でも。やっぱり私は諦めきれない。カモミールさんが言ってた3人でいつまでもいたいという夢。まだチャンスがあると思うんです」


「……無理だよ」


「無理じゃない!だって今この村にはカモミールさんにイリス、エーデルワイスだっている!もう一度話し合う機会がある!」


しかしカモミールさんは悲しそうに目を伏せる。


「……いいんだよ、今更遅すぎる。もう話し合って解決なんて」


「そんなことないですよ。相手に悪いと思ったなら謝ればいい。仲直りしたいなら仲直りしたいと言えばいい」


我ながら至極当たり前のこと言ってて恥ずかしくなってくるな。

でも、言う。

言ってやる!


「遅くなんてないですよ。相手が居なくならない限り伝えるチャンスは何回だってあります!行動しないと何も変わらない!もし行動するのが怖いなら、私が何回だって手伝ってあげます!だから!」


カモミールさんは小さく口を開け驚いた顔をしていた。

そんなカモミールさんに私は言う。


「私にチャンスをください!私にイリスを追わせて欲しいんです!そして、3人にまた戻れる手助けをさせてください!」


暫し無言の時間が流れる。

しかしそんな沈黙を破ったのはカモミールさんの笑い声だった。


「あはは……レイラちゃん。なかなか面白いことを言うね」


「え、えっと……」


これは説得できたってことでいいのか?

もし説得しきれてなかったら……さすがにこれ以上、私には言葉が出てこないぞ!


「うん、いいよ。今はそれで納得してあげる」


そういうとカフェ内を覆っていた青の結界が解け、もとカフェが元の時間へと戻る。

もちろん、私が落とした花瓶も元の時間に戻った訳で……。

パッリーンと音が鳴り響いた。


「あ……」


「えーっと、これは後で説教かな?」


「はい、すみませんでした」


私は90度、綺麗なお辞儀をした。


「いいよ。今はイリスを追ってあげて」


「……!はい!ありがとうございます!」


私はお礼を言うと、急いでカフェ店を出てイリスを追った。

1人店内に残されたカモミールさんはひっそりと呟いた。


「はぁ。私もいい加減あの2人と向き合わないとな」


私はカフェ店を出るとババロン村、入口の門へと向かった。

何故そこに向かったかと言うと、何かが爆発したような轟音が聞こえてきたからだ。

イリスがどこに行ったか、重要な手がかりがない以上、今は勘を信じるしかない。

すると門には身知った少女がいた。


その少女は紫のツインテールをしていた。

そして白いカッターシャツに青いネクタイ。その上から青いブレザーを羽織り、下には青いスカートを履いており、左胸には騎士団の紋章があった。

そして私はその子に2回ほどあったことがある。

間違いない。


「セリエ!」


そしてセリエはまるで私が来ることを予想していたかのように、待ち伏せていた。


「やっぱり来たわね」


セリエは覚悟を決めたような顔をした後、言う。


「悪いけど、ここから先は作戦進行中につき通すことができないの」


「私はイリスの元へ行かないといけない。だからここを通して」


「……そう。じゃあ」


セリエは両手を握りしめる。

するとそれに呼応するようにセリエの周りに水滴が漂い始めた。


「作戦妨害者と見なし、今ここで鎮圧させて貰うわ」


やっぱり戦うしかないか。

本当はセリエに構わずイリスの元へ向かいたいが仕方ない。

私も覚悟を決めると上着のポケットからカードを取りだした。


「こっちも!ここでやられる訳にはいかないのよ!」

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