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騎士団と魔女それぞれの目的

「……セリエ?」


「レイラ、下がってて」


 そう言うとイリスは席を立ち上がり、セリエを睨みつけた。


「ちょ!!ちょっと待って!!今日は戦いに来たとかそういうんじゃなくて!!」


「……?じゃあ何をしに来たの」


「えっと……レイラ。あんたに話があってきたの!!」


「話……」


 確かに私はセリエに相談があれば来るよう言った。

 まさかこんなに早く来るとは予想外だったが。


「その騎士団のことで……」


「……!!」


 まさかさっそく騎士団のことについて話してくれることになるとは。

 とりあえず詳しく話を聞くために席へ移動してもらおう。


「立ち話もなんだし座って」


「レイラ、信用していいの」


「大丈夫だよ。それにイリスがくれたカードもあるし万が一は……」


「何こそこそ話してるのよ」


 そうしているうちにセリエはもう席の間近まで来ていた。

 私は笑顔でセリエに言う。


「お好きな方の隣のお席にどうぞ」


 セリエは少し戸惑った様子で私とイリスを交互に見る。

 そしてちょっと考えた後、私の隣に腰を下ろした。


「え、えーっと」


 セリエは先程までの威勢はどうしたのか、席に座った瞬間、気が小さくなった。

 どうしたのだろうと思ったが、すぐに理由が分かった。

 イリスがジト目でセリエを見つめていたのだ。

 そんなに食事邪魔されたくなかったのか……。


「騎士団のことだよね。どうしたの」


 仕方ないので私から話を振ることにした。

 セリエはそういえばそうだったと言わんばかりの表情で話し出す。


「私が前に魔女を捕えるために騎士団が動いてるって話をしたの覚えてる」


「うん、覚えてるよ」


「その事なんだけど……もうすぐイリスを狙って、騎士団がこの村に到着すると思うの」


「なんですと」


 騎士団が来るだろうってのは予測していたが、まさかこんなに早く来るとは。


「それでお願い……いや、忠告しておきたいことがあって、あんたには騎士団の件には関わらないで欲しいの」


 私は思わずムッとした表情になってしまった。

 何を言い出すかと思ったら、まさかのこの件に関するなとは。


「へぇ……私が大人しく了承するとでも?」


「念の為言っとくけど、これはこちらが不利になるから言ったんじゃない、あんたが不利になるから言ってんのよ」


「私が不利に?」


「今回、騎士団は少人数精鋭部隊でこの村にやってくる。多分だけど、その部隊以外にも奥の手があるはず」


「なるほど、それでどうして私が不利になるの」


「私もあんまり詳しくは知らないんだけど、確実に魔女を捕えるために勝率の高い方法を取っているはず、あんたみたいな一般人が入ったら間違いなく大怪我をすると思うの」


「なるほどね」


 その話を聞き、呟いたのはイリスだ。


「確かにあいつが無策で挑むなんてことはしない。周りを巻き込まず私だけを捕らえる算段を既に見つけてるってことか」


 イリスは少し考え込む仕草をした後、私に言う。


「ごめんレイラ。確かにこれは私一人でどうにかするべきなのかもしれない」


「でもそれじゃあイリスは」


「大丈夫。何とかするよ」


 そんなこと言われたらイリスはそりゃそうするよね。

 だって周りを巻き込むのだけは何よりも嫌がる子だから。


「えーっと、あとごめん。ここから先はレイラと二人きりで話したい内容なんだけど」


 私が黙り込んでいると、セリエはそう言う。


「別にいいけど」


「ちょっと待って。本当に大丈夫なのそれ」


 しかし、イリスは席を立ち上がりセリエを睨みつけ反対する。


「私はあなたをそこまで信用してない。2人っきりにしたらどうなることか」


「多分だけど、大丈夫だよ。いざと言う時は……」


 私がそう言うと、イリスは渋々と納得したような様子を見せる。


「……分かった」

 

 私とセリエは席を外し、外で話すことにした。


「それで話って」


「あんたには聞かせておきたくて」


「?」


「騎士団長のエーデルワイスさんのこと」


 そういうこと。

 エーデルワイス。

 イリスと同じ魔女に育てられた。


「こんなこと言っても、信じられないかもしれないけど、エーデルワイスさんは悪い人なんかじゃない。あの人はただ国のためにやっていること。別にイリスへ危害を加えることが目的なんかじゃないんだ」


「じゃあどうして捕らえようとしてるの」


「先代の魔女が国に恩恵をもたらした存在であるってことは知ってる?」


「もちろん知ってるよ」


 また先代の魔女の話が出てくるとは、やっぱり国にとってかなり大きな存在だったんだな。


「その魔女と比べ、今の魔女は全く行動を起こさず、国の為に貢献する気がない。エーデルワイスさんはそんな魔女に、国の為に貢献するよう働きかけるつもりなの。そうすればイリス本人が村の人に煙たがられなくなるし、お互いに損のない話だと思うの」


 なるほど。

 騎士団視点だとそういう見方なのか。

 騎士団からすれば確かにそうした方が、有意義であるように思える。

 でも、イリスがそうしなかったのは。

 期待という重圧と自身の力の無さを卑下してしまったからだ。


「あなた達の目的は分かったよ。話してくれてありがとう。でもどうしてこの話を聞かせてくれたの?あなたたちにとって不利益でしかないでしょう」


「……エーデルワイスさんは私の尊敬する人なの」


 セリエは少し沈黙した後、少しづつ話しだした。


「……」


「いつも一生懸命で人のために働くことが出来るそんな人。だからあの人に私は……。いや、違う。えっと、なんて言ったらいいんだろう……」


 セリエは何と言うべきか、言い淀んでしまう。

 ここは私から踏み込んでみることにした。


「そのエーデルワイスさんは、セリエにとって大事な人なんだね」


 そう言うとセリエは少し驚いた顔をして、私を見つめてくる。


「大事な人……?」


「心配なんだよね。その人のことが」


「……」


「だから、私にそれを話してくれた。きっとセリエから見て無理をしてるように見えたんじゃないかな」


「確かにそうだね。でも、私はあの人がやろうとしてることを叶えてあげたい。例え、どんな危険な手段を取ろうと応援したいんだ」


「そっか。じゃあ私たちは敵同士だね」


「……やっぱりあんたは、イリスの傍につくの」


「ごめんね。どんな状況でも私だけはイリスの味方をしてあげたいんだ。あなたがエーデルワイスさんの味方をするようにね」


 それにいいことも聞けた。

 ただ騎士団も自分たちの利益だけのために動いてる訳じゃないってこと。

 騎士団も覚悟の上で動いてるなら、私たちも覚悟を決められる。


「そう。忠告はしたから、後はどうなっても責任なんて取れないからね」


「全く、そんなこと言うなんて君は優しいね」


「どうしてそうなるのよ」


「あんたはエーデルワイスさんだけじゃなくて、私のことも心配でここにやって来た。以前イリスを襲ったのも、出来ることなら騎士団の他の人が傷つく前にことを済ませたかったからじゃないかな」


「そういう訳じゃ……」


「私にはそう見えたけど」


「……。とりあえず私はもう行くわよ」


 そう言うとセリエは後ろを振り向き、帰って行った。

 さて、こちらもやること済ませておくことにしよう。

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