表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

赤い星座をまかないに

作者: 葵 紀柚実

彼の作ったオムライスが私の前に置かれる。トロトロ卵にケチャップで赤い点が7つ。

「何これ」

四角?と真ん中に点が3つ。マニュアルでは山の中心から少したらすようにかける決まりだ。

「んーこうすればわかる?」

同じ時期にバイトを始めた彼が、店自慢の自家製ケチャップを追加して点と点を繋げる。

あぁ、見たことある、知ってる。ナントカ座。

「ごめん、こーゆーの苦手?オリオン座は冬の星座でね…って興味ないかな」

「とっさに名前が出てこなかっただけで、知ってます」

そっか、と彼は爽やかな笑顔で厨房へ消えていった。フロア担当の私はあまり会話をしたことがないけれど、ロッカールームの噂話では理系の大学で星見のサークルに入っていて活動資金の為にバイトをしているらしい。

いつも穏やかで控えめな彼を、頼りなさそうと評するバイト仲間もいるけれど、私としてはちょっと、いやかなり好印象だ。なのに今日のケチャップは少しからかわれたみたい。…気のせいかな。


数日後、彼とシフトが同じ日に出されたオムライスには赤い点が5つ。

「え?私今日はハンバーグお願いしたのに?」

「あーうん、昼にハンバーグ全部でちゃって、夜の分、今仕込んでるとこなんだ」

そうなんだ、残念。確かハンバーグはタネを成形してから冷蔵庫で寝かせているはず。考え込んでいる私を見て、5つの点が何かわからないと思ったのだろう、彼はWの形にケチャップで線を引いた。

「見たことはあるよ、なんだっけ?ほら、北の…星?」

「カシオペア座。先週先輩の車で星がよく見える山まで行ったんだ。って誰も話聞いてくれないんだよなぁ」

私がムスッとした顔をしたら、そそくさと彼は厨房へ引っ込んでいった。

星の話が嫌なのではない。先輩って女の人?二人きり?そんなことが頭をよぎる。


星座の本を買った。

また出題されそうな星座クイズに正解するために。断じて彼の好きなものが知りたいとかそうゆうことじゃない。今のところ見たことのある簡単な星座だったから、次は北斗七星や南十字星あたりだろうか。

彼と同じシフトの日がきた。希望のメニューを言わずともオムライスが私の目の前に置かれる。

「何…これ」

今日は点ではなかった。曲線で描かれたのはハートだ。こんな星座あるの?

びっくりしている私に彼は告げる。

「バイト以外でも俺と会ってくれませんか?」

彼の顔は耳まで赤く、私も頬を赤く染めた。

ハート座は存在しませんが、かんむり座とうしかい座の一部を使えばハートに見えなくもないそうです。また、りょうけん座のアルファ星はチャールズ王の心臓ハートと言われているそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ