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もう一度だけ
窓から吹き込む生暖かい風が頬に触れる。
汗で張り付いたシャツが心地悪い。
高校生二回目の夏。
皆、汗を拭いながら板書を必死にノートに写している。
5限の古典の授業はもはや睡眠薬だ。
(……。)
アツキは重い瞼をそのまま伏せた。
目が覚めたのは6限が始まる直前だった。
次が体育であることを忘れていた。教室は既に空だった。背中を掻きながら体育着に着替え、しんと静まった廊下を歩いていた。
誰もいない。エコーのかかった教師の声だけが際立って聞こえてくる。いつも往来の激しい廊下。アツキは急に面白くなって、あ、とか、わー、とか声を出す。 声はゆっくり余韻を残し消える。1人であるという感覚が深くなる気がした。
体育館に連絡する通路に差し掛かった時、
急に、けたたましい爆音と共に景色が歪んだ。
バッ…
その正体を知る隙もないまま、瞬く間に視界はホワイトアウトした。