美しき世界
戦争というものを知っているものは数多い、だが、戦争を体験したものは数少ないだろう。だから、僕は戦争というものを、非日常的だと思い込んでいた。だが、それは違った。戦争というものは、簡単に起こってしまう。友人を失い家族を失い故郷の村まで失った。……戦争なんて……
豊かなある、村の一家に生まれ育ち、スクスクと成長をした青年ヒロは、今日17歳の誕生日を迎えた。
至って平凡。なんの才能もない彼を両親は、温かく彼の成長を見守ってくれた、ヒロはそんな両親が大好きだった。
その日、ヒロは友人のハジメと狩りに出ていた。鹿を狩って両親を喜ばせようとしたのだ。僕も鹿を狩れるようになったぞ。と自分のさらなる成長を教えたかったのかもしれない。
「鹿いねぇなぁ……」どこまでも続く、森の中を進みながらハジメが言う。
たしかに、今日は鹿を見ていない。すでに、森に入って数時間が経過しているのに、少し1匹もいないとなると少し奇妙だった。いつもだったら釣りをしに行く時の道中でよく見かけるのだが、今日は何故か、小動物すら見かけない。なにかがおかしかった。
「そうだね」とヒロは言った。
「残念だけど、そろそろ日が暮れる。もう、戻らないと」とヒロは付け加えた。
「チクショー!まぁしょうがねぇか、また明日行こうぜ」とハジメ頭をボリボリ掻いた。
「うん」
村の近くになると、すっかり夜になって、ヒロは親に怒られるのを心配しながら、村の入口に近づくと、木々の間から何件もの家が燃えているのが分かった。
「なんだこれ……」先に言ったのはハジメだった。
そしてすぐに、村の方から悲鳴や叫び声が聞こえてくる。
「火事かな……?」ヒロがそう言うと、2人は一目散に自分の家に向かって駆け出した。
ヒロの家は燃えてほぼ原型を保っておらず、今にも崩れそうな状況だった。
ヒロは絶望した。今目の前に広がる光景に。もう、いつもの日常には戻れない。そして、両親が生きているかも分からないこの状況がさらに彼を不安にさせた。
「母さん!!父さん!!」ヒロは叫びながら、村中を走り回った。
「ヒロー!!」とハジメが、近づいてきた。
「ハジメ!家は?」ヒロは息を整えながら、言った。
「燃えて崩れていたよ……。なぁ、いったいなにが俺達の村で起こってるんだよ!?」
「ごめん、分からない……」ヒロは言葉がこれしか出てこなかった。
「俺、他の村人いないか探してくる!!」ハジメはそう言うと走って行ってしまった。
「あ!おい!」ヒロは声をかけたがハジメは走り去ってしまった。
「クッソ……」自然に眉間にシワがよる。何故だ?なんでこんなことに……?
ヒロは頭をフル回転させて原因、両親の居場所を考えたが、全く分からなかった。
少し歩くとぐにゃっとした感触のものを踏んだことに気づいた。
「!……なんだ!?」
足元に目をやるとそこには、死体が転がっており、確認した瞬間吐き気が込み上げてきて我慢出来ずに、ヒロは嘔吐した。
マジか……死体がなんで……?ん……?この傷…斬られてる!?
そして近くに刀が地面に刺さっていたのを見た瞬間に、ヒロはこの村がどういう状況にあるかを理解した。
……それは戦争だ。僕達がいる[洋の国]は、[和の国]と呼ばれる、国と長年、戦争をしている、戦争の発端は暗殺だ。[洋の国]の暗殺者が、[和の国]の王の娘を暗殺したことが原因である。それ以来、この戦争は続いている。その、[洋の国]の暗殺者は、「闇の一族」という、暗殺一家の一族らしいが、真実は未だに不明である。
すると背後の少し離れた森から
「ヒロー!!!逃げろー!!!」と声がした
振り向くとそこには、父さんがいた。必死に危険を知らせているようだが、ヒロには声が届かなかった。
「父さ……」次の瞬間に目の前で父は後ろから刺されて死んだ。
「え……そんな……」ボタボタと父の体から溢れ出る血を見ながら、涙混じりにヒロはつぶやく。
父から刀が抜かれると父を殺した、黒色の甲冑を着た男が赤色に光る目でこちらをじっと見てきた。
さらに、その男は女の死体を担いでいて、父の死体にドサリと投げた。その死体は多分……母のものなのだろう……と、思うと涙が溢れてきた。
するとそこに、タイミング良くハジメが現れ
「逃げるぞ!!!」
と手を引っ張って、走ろうとするハジメの手を払いながらヒロは叫んだ。
「でも!父さんが!!」
「残念だけど、ヒロのお父さんはもう……助からない!早くここから逃げないと!」
「うるさい!父さんが!!父さんが!!」
「いい加減にしろ!」
ハジメはパン!っとヒロの頬を叩いた。
「悲しいのはお前だけじゃない……」
「え……?今なんて……?」
「いいから、行くぞ!」
悲しのはお前だけじゃない、それを聞いた途端にヒロはハジメと一緒に走り出した。
その時も、黒い甲冑の男はこちらをただじっと見ているだけだった。
村からでてから数十分、[和の国]の敵の追っ手が追ってくるのが、分かった。ヒロとハジメは、その日は数時間も狩りに出ていたため、限界をすでに超えていた、体のあちこちは痛み、汗で体中はべたべた。動くことすら、困難な状況の中ほぼ気力だけで走っていた。
そんな、時ハジメが地に手を着いてしまった。
「どうした!?」
「俺はもう、無理だ……すまない……」
ハジメ涙ながらにそう言った。
「はぁ!?ふざけんな!やっとここまできたじゃないか!」
よく見ると彼の足は出血していて、ものすごく腫れていた。
「すまない」
「ふざけんなよ……親友のお前を置いて…僕は……ボクは……!」
ヒロは自分の気持ちをぶつけるように言ったが、それは、ハジメの最後のお願いのようだった。
「すまない……俺を置いていってくれ……」
「駄目だ!お前は置いて行けない!2人で一緒に生き残るんだ!」
ヒロはそう言うと、ハジメに肩を貸し、進み続けた。
「ありがとう……ヒロ……」
「当たり前だ!バカ野郎!」
ヒロはそう言うとニっと笑った。
そこなら、少し進むと森を抜けることができたが、そこは、崖の上、20メートルくらいに下に川が流れているが、この高さから落ちたらただでは済まないだろう……
「ここまでか……」
ハジメはもう気力を失ってしまったようだった。
するとそこへ[和の国]の兵が追いついてしまった。瞬間にハジメが、ヒロを突き飛ばした。
「っっ!なにを……?」
ヒロは顔を上げるとハジメが敵に捕まっているのを目にした。
「ヒロ……すまない」
「降伏しろ、そうすれば友人は助かる……」
[和の国]の兵が本当かどうかも分からない事を口にする
「だめだヒロ!こいつらは、俺達の村を襲ってきた奴らだ……こんな奴らのことなんか信じちゃだめだ!」
究極の選択、友人を犠牲にして生き残る。か降伏して捕まるか。
どうする……?仮にハジメを犠牲にした所で、逃げ道は崖の下に飛び込むしかない、捕まったところで絶対に殺される……どうしたらいい……?
「頼むヒロ……俺からの最後のお願いだ……俺のことなんかいい……逃げろ!生きて逃げきれ!」ハジメはそう叫ぶと兵に「残念だ……」そう言い、ハジメは目の前で殺された、彼の頭が落ちると、同時に首からものすごい量の血がドプドプ出てきた。身体も精神も死ぬほど疲れているヒロは、声にならない悲鳴をあげ、敵の攻撃を紙一重でかわし、崖に飛び込んだ。両親も親友も目の前で殺された彼は今日の出来事が走馬灯のように頭に浮かんだ、そしてハジメが「逃げ切れ!」そう言うと、川に着水した。




