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装備とPS

 私は悩んでいました。

 壁にぶつかっている、と言っても過言ではありません。

 話は単純で、戦闘の難易度が上がってきた、ということについてです。

 RPGはストーリーが進むにつれ敵が強くなるのが基本ですが、プレイキャラクターも同時に強くなるのが一般的です。もっとも、ダメージや体力の数値が大きくなっているだけで相対的に強さの変化があるだけ、とも言えるのですが……。

 ともかく、私が今おかれている現状というのは、敵が強くなっているのに私の強さが変わらない、という問題です。

 レベルは二十八になりました。ストーリー進行に伴って、新しいダンジョンも開放されましたが……、突撃するにはまだ早いと判断します。


「そりゃー、そーだろ。むしろ、気づくのがおせぇ」

 『夜の家』の庭。そのベンチで足を組んで座るミルクさんが、呆れたように言い放ちます。

 私はその前に正座していて、さながら説教をされているかのよう。間違ってはいないのかもしれません。


「装備更新、してないの?」


 ミルクさんにひっつきながら、シーシーさんが聞いてきました。ミルクさんは鬱陶しそうにしながらもそれを引き離さないので、許容されてるんでしょう。傍目には、猫同士がじゃれ合っているように見えます。うーん、眼福です!


「えっと……お店の装備は高いだけで使えないから、買うなって前にミルクさんが……」


 なので、今の装備はダンジョンで拾った装備が主です。ドロップする部位はランダムなので、ほかはクエストの報酬で渡されたものです。

 こうして考えてみると、随分とバラバラで統一性がなく、見た目も不格好ですね。恥ずかしいなぁ。


「ミルクさん……適当なこと言っといて、フォローするの忘れてたでしょ」

「やべぇ、そうだった」

「何か、まずいでしょうか」


 シーシーさんとミルクさんが顔を見合わせた後、私へ向き直ります。


「まず、このゲームにおいてレベルが『強い武器防具を装備するための基準』であることを理解するように」

「基準、ですか」

「ステータスの上昇はあるんだけどね。上昇したパラメータ数値より、装備によって上がる数値のほうが参照値としては大きいんだ」


 補足したのはトキさんです。私はなるほど、と頷きましたが、その実半分くらいしか理解できていません。


「聖剣さえ装備できたら、初期レベルでも魔王ヤれるってことだよ」

「なるほど!」


 実にシンプルな例え。

 これです、こういうわかりやすいのを待っていたんです!


「まあ、聖剣装備するためにはレベル上げる必要あるけどな」


 言って、ミルクさんが取り出した剣を地面に突き刺しました。何やら輝きを放っています。強い剣に違いありません。


「で、装備類にも種類がある」

「既製品とドロップ品、それから……レベル上限になってからのコンテンツだけど、特定アイテムとの交換なんてのもあるね」

「ドロップ品は、ダンジョンからドロップする装備だよ~」

「アリス、お前生産職に手つけてないだろ」

「生産職、ですか。初めて聞いた言葉ですね」

「ポポタンまみれしてたからな。そんなこったろうと思ったよ」

「素材を使って、店で売ってるような装備を自作できるんだ。完成品は、品質によって性能が上がったりするよ」

「店売り品は、この自作品で言うところの『低品質』レベルの性能っつークソ仕様なんだよ」

「だから買わない方がいい、と……。ということは、自分で作れ、ということですか?」

「それでもいいけど、マーケットにオークションボードがあるから、他のプレイヤーが作った装備を買うのが早いかな」

「性能はダンジョンドロップ品のほうが上だから、周回して集めるのもいいよね~」

「手段というか、選択肢はまあ色々あるから……レベル帯に合わせた装備を細かく更新していくと、強くなったって実感も湧くよ」

「なるほど、勉強になります!」

「ちなみにここにぶっ刺さってる剣だが……、通称エピックっつってな」


 ミルクさんが先程地面に突き立てた、輝きを放つ剣をコンコンと叩きます。扱いが随分と雑では?


「コイツはクエストをこなし、素材をあつめボス巡りとおつかいをこなした末に作り上げる、時間さえあれば誰でも作れる最強武器だ」

「最強武器!」

「第一段階ではハードモードのボス討伐が要求され、第二段階ではフィールドの緊急ミッションのランダムドロップを集め、そして第三段階ではダンジョン周回四百週だ」

「はっ!?」

「ハードモードのボス討伐、やばかったね……」

「ファインダーでの野良パーティ、時間いっぱいやってクリアできないとかザラだからな」

「しかもこれ、パッチごとに追加クエストでて強化していくタイプだしね~」

「持ってないやつはレイドに来るな、まである」


 恐ろしい話を、なんでもないかのように語られますが……。


「ああ、そういえば」

「??」


 >>メールを受信しました。

 >>メールを受信しました。

 >>メールを受信しました。

 >>メールを受信しました。

 >>メールを受信しました。


 と、そこへメール受信の通知。なんでしょう?

 メールを開いてみると、送り主はトキさんでした。目の前にいるのになぜ? と思って見てみると、添付ファイルに装備のアイコンが!


「あの、これ……」

「ユニオンの加入祝い。気にせず受け取って」

「そんな、いただけませんよ!」

「いいからいいから」


 押し付けられた装備は、私のレベル帯に合わせたもので、『高品質』と書いてあります。私が今装備しているものと比べてみても、その性能の差は歴然です。


「トキは金持ってるからな、せいぜい搾り取ってやるといい」

「ミルクさんのほうが持ってるでしょ」


 >>メールを受信しました。

 >>メールを受信しました。

 >>メールを受信しました。


 続いて送られてきたメールの送り主はシーシーさんでした。

 こちらにはアクセサリーが添付されていました。


「みなさん……ありがとうございます!」

「クラフト品には製作者の銘が入るから、自分の作ったもので固めてるひとも多いよ」

「ミルクさんてそういうタイプだよね」

「私、ミルクさんの銘が入ってる装備にしてる~」

「俺の銘入りなんざ、どんだけ出回らせてるかもわかんねーよ」


 そういえば、ミルクさん、いつも何やらカンカンとしていたように思います。

 あれがいわゆる生産……なのかなぁ。


「まあ装備強くしたから難易度が下がるわけでもないけどな」

「PSだね」

「ぴーえす……、ゲーム機がどうしたんです?」

「そっちじゃないよ~w」

「プレイヤースキル。装備やステータスに頼らない、プレイヤー自身の力……かな」

「ふむむ……?」


 つまり……どういうことでしょう??


「防御力を上げたところで、敵の攻撃をまっすぐ受けたらやられちまう。攻撃力を上げても、当たらなければゼロと一緒だろ」

「まあ、ある程度はシステムアシストでなんとかなるんだけど……上手い人の動きだけは別次元だよね」

「それが、プレイヤースキル……PS、なんですね」

「そういうこと~」


 頂いた装備でステータスは上がりましたが、それだけではダメということですね。

 私のPSは、どうなんだろう……。改めて見直して考えてみますが、胸を張って自信を持てないのが辛いところですね……。


「VRどころかネトゲ初心者のお前に、そんな要求しねーし……まあ、強くなりたければ精進するがよい」

「はい! がんばります!」

「こればっかりは、教えたらすぐできる! ってもんでもないからねぇ~」

「これでも私、子供の頃からゲーマーなんですよ!」

「今も子供じゃねーか」

「ミルクさん、しっ!」



**



 >>

 >>バルトリックの屋敷 攻略戦を終了します。

 >>00:28:31

 >>

 >>――CLEARED!――

 >>

 >>お疲れ様でした。

 >>あなたに、オーブの祝福を。

 >>


「お疲れ様でした~」

「お疲れ様~」

「おっつおっつ~」

「乙です~、道士さん初見だったみたいだけど、なかなかよかったよ~」

「うん、DOT更新完璧だったw」

「ホントですか!? よかったです!」

「新規さんでしょ? 頑張ってね~」

「はい!」


 ダンジョンの攻略を終えた私です。

 ファインダーで一緒になった皆さんに別れを告げ、アジトへ帰ってきました。

 上機嫌です。そりゃあそうです。

 自分が地雷になりはしないかと不安だったのもそうですし、ダンジョンへアタックする前に皆さんに装備の相談をしたことも正解でした。

 ミルクさんに仕込まれたDOT更新も褒められて……、おや? レベルが上がってスキルを覚えたようです。


 『フェイタル・イド』

 精神と肉体の双方への侵食魔法。

 威力180 (二秒ごとに16、効果時間三十秒)

 消費MP 84


 ひぃい!

 DOT魔法が増えました!!

 DOTは他の魔法とも重複しますから……、この魔法も加えて管理しなければならないということです。

 強くなるって……大変だなぁ……。



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