店長は味方ができた
「とりあえず私の自己紹介はこれくらいにして、次はあなたの番かな?私の封印を解いたくらいだからかなりの大物かしら?」
月夜が自己紹介を終え、こちらへと話を振ってきた。
「えーと、一応吸血鬼、らしい。名前は思い出せない。店長をやってた。とりあえず攻撃能力皆無の存在です。家族もいない。」
ありのままを伝えた。正直に伝えた。この世界ではまだ一人なのだ。
「へー吸血鬼なのね。店長って?まあ、いいわ。とりあえず封印を解いてくれたことだし私が護ってあげるから安心して!」
そう言うと彼女は俺のことをぎゅっと抱きしめる。
彼女は温かくもふもふでとても安心感を覚えた。
それは社畜時代では味わったことのない感覚だった。
店長時代は怒られるし基本的に出会いも無い。
バイトの子がいると思うでしょ?
そもそも恋愛になど充てる時間も無いし、恋仲になっても他の店舗に片方が飛ばされるような仕組みになってたからひたすらに何もおきないんですよ。
家に帰れば一人暮らしだから飯も自分で用意しなければいけなくて。でも疲れてるから飯も食べないうちに気絶するように眠り、朝起きればすぐに出勤。
温もりとは無縁の人生だった。
それがどうでしょう。この感覚。
なんかほわほわして優しくて気持ちいい。
目をつぶるとより温かさを感じることが出来て安心出来る感覚。
温かい
感覚に身を任せていると俺の意識は落ちていった。