襲撃。
とりあえずスキル確認を終えたテンはベッドの中で考えていた。
今後の目標についてだ。
とりあえず今後はある程度働きながら安全に生きよう。
そしてこの世界にきてからお世話になりっぱなしの月夜に恩返ししながら生きるのだ。
あ、でもちょっと前世みたいに休みの無い人生は勘弁である。
休みの多い生活を目指そう。
今みたいにお世話になりっぱなしのヒモ状態はちょっと良くない。
異世界にきてから休みすぎである。
まあちょっと感覚のある獣耳と尻尾が生えて、ほんのりと胸が膨らみ一瞬で息子が家出してしまって、ついでに身長も小さくなり女の子化したのもあって、まだちょっと調子が良くないのだ。
なので未だに月夜に寝かされていたベッドで大人しくしている。
にしても目標を決めたのはいいが、この身体で働ける仕事とは何だろうか。
現状、自分の状態は銀髪狐耳のロリっ娘である。
なお種族は吸血鬼である。
元々は飲食店の店長をしていたからある程度仕事のマネジメントは出来る。
でも、飲食店の経営がしんどいのは前世で身をもって経験しているから出来れば飲食店での労働は遠慮したい。
というかこの身体になってあまり
特段力が強いわけでもなく何なら絶賛虚弱体質をお披露目中だ。
つまり、頭を使ってマネジメントをする方向の仕事をすればいいと。
この世界にどんな仕事があるかわかってないから適正職業がよくわからない。
導き出された結論はとりあえず先延ばし。
しょうがないよね。
とりあえず元気になったら月夜と考えよう。
そうと決まればとりあえず今は体力を回復するのが優先だ。
とりあえず月夜が帰って来るまでは言われた通り大人しく寝ておこう。
さあ、愛しの布団ちゃんよ共に夢の世界へ。
布団を胸元までかけていざ寝ようと思った時、ふと獣イヤーが違和感を覚える。
なんか部屋の外が騒がしいような。
あれ、月夜もう帰ってきたのかな。
それにしてはなんかたくさんの足音がしてる気が。
何か嫌な予感がする。
そう感じた次の瞬間。
バァン!!
部屋の扉が派手な音をたてて乱暴に開かれ。
ダダダダッ!
チャキチャキチャキ!
あっという間にベッド周りを武器を持った人達に囲まれてしまった。
ん?この人達は一体何者?
というかなんでこんな敵意剥き出して方位されているんですか?
え、ちょっとテンちゃんワカラナーイ。
あまりにも突然すぎる出来事に理解が追い付かない。
「えーと。どちら様でしょうか?どうして私に向かって武器を向けてらっしゃるんでしょうか…」
さすがにとりあえず話を聞かないと状況が理解できない。
そう思い一応丁寧に話しかけてみる。すると自分を包囲している集団からなんか厳つめなおっさんが出てきた。
「貴様が伝説の災厄の大妖怪だな!!我らの国々の平和のため今ここで貴様の息の根を止めさせてもらう」
えーと。いきなり殺害予告されたんですけど。
何もいきなり殺されるほどの恨みを買うようなことはしていないと思うんだけど。
だって月夜以外に会ってないもん。
「え~っと、何か皆様の恨みを買うようなことはしていないと思うんですけど…」
「とぼける気か!狐種の耳と九つの尻尾に女性の姿、まさに伝承に伝わる通り!我らの国を滅ぼし掛けた災厄の大妖怪、九尾のツクヨであろう!」
…ん?
聞き間違えかな?
「え~っと、すいませんもう一度言ってもらえます?」
「何度言えばわかるのだ!貴様が大妖怪ツクヨだろう!その首を平和のためにとらせてもらうぞ!」
はーなるほど。
どうやら月夜を殺そうとやって来た人達のようだった。
なんか月夜は封印されてたし何か封印前にやったのかな。
そして封印を自分がといちゃったから殺しにきたと。
月夜、こんなに沢山の人に狙われるって何をやったんだ。
そしてものの見事に今、自分は月夜と勘違いされたと。
「って違います!!私は月夜じゃないです!!無害な吸血鬼のテンです!!」
「まだシラを切るか!どこに狐耳の生えた吸血鬼がおるのだ!そんな見え見えの嘘に掛かるか!貴様ら!こいつを拘束しろ!」
「本当なんです!信じてください~!!」
どうやらこちらの話に耳を貸すつもりはないらしい。
取り巻きの中から屈強そうな2人の男が出てきた。
その2人によってベッドから引きずり下ろされ、地べたに押さえつけられてしまう。
後ろ手に両手首を縛られてしまった。
一応抵抗を試みたのだがまだ本調子ではないこの身体。
しかも女子化した影響なのか、力が弱い気がする。
まずい。
このままだと殺される。
でも抵抗する力もない。
また死んじゃうのか…
さっき目標にした月夜への恩返しもまだなんもしてないのに。
押さえつけられてて痛いし、なんならさっきの偉そうな指揮官みたいなやつが剣を持ってニヤニヤしながらこっちに近づいてくる。
やめて怖い怖い怖い…
転生前にはほぼ無かった殺される恐怖に涙が溢れてくる。
「…助けて…」
振り絞って出した声、しかし誰にも届かない。
ついに指揮官が目の前までやってくる。
やだ、やめて、来ないで。
そして、指揮官が剣を振り上げた。
もう助からない。
幻惑のドレスの防御が高いとはあったけど覆われていない首を狙われている以上どうしようもない。
「グスッ…ひぐっ…ふえぇ~ん」
とても元男とは思えないような声を出して泣いている。
でも感情が押さえられない。
怖くて目も開けられない。
ぎゅっと目蓋を閉じて剣が振り下ろされる恐怖になんとか耐える。
…時間が永遠のように長く感じられる。
というかなぜまだ痛みが襲ってこないのだろう。
恐る恐る目を開けて上をぐしゃぐしゃになった顔で見てみる。
すると指揮官が剣を振り上げたままプルプルと震えていた。
「か、か、」
何かを言いながら葛藤しているような雰囲気だ。
よくわからないがどうしたんだろう。
「か、可愛い!いやっ騙されるな。こいつは悪逆非道の大妖怪、殺すのが国のため!しかしこんなに可愛い子の首をはねるなど…」
どうやら超魅了に指揮官が土壇場でかかったようだった。
殺さないといけない使命感と超魅了の敵意減少で葛藤しているらしい。
もしかして生き延びることが出来るかも。
一瞬そう思ったが
「指揮官!何をしてるんだい!アンタがやらないならアタシが!」
とキツイ目をした女性冒険者が短剣を持って近づいてくる。
今度こそ本当に駄目そうだ。
もう何も言わずに首を刈り取るつもりだ。
多分2回目のラッキーはもう起こらないだろう。
また恐怖が込み上げてきた。
泣きながらまた目をつぶる。
足音が近付くそして、目の前で止まる。
「お嬢ちゃん、恨むんじゃないよ。恨むなら自身の過去の行いを恨みな」
その発言と共に振り下ろされる短剣。
風切り音と共に振り下ろされた短剣はテンの首に向かっていき…
「私のテンちゃんに何をしているの。ゴミ共。」
そしてそれは帰ってきたばかりの月夜によって止められた。




