異世界転生
俺の名前は天木 大貴 (あまき ひろき)
一ヶ月の内休日はゼロ、労働時間は長時間にわたり給料も安くサービス残業当たり前なブラックなチェーン飲食店で店長を勤めている。
今日もふざけた客のクレームをさばき、長時間の仕事をなんとか乗り切って閉店時間を迎えたところだ。
「今日もろくでもない客ばかりだったな…ったく、文句あるなら他の店行けってんだ!というかいいかげん体がきついわ!」
バイトを帰し一人で調理器具の片付けをしながら黙々とその日の売り上げを整理している。
上司は人件費だの、何だのと五月蠅くまともに人を入れることも出来ず一人で作業しなければならない。
また、人を削られてしまうため、忙しい日の一人あたりの負担が増え、接客はおろそかになりクレームが発生する。
クレームばっかり起きるから嫌になる人が多くバイトをやめる人が増える。
その結果俺の休みがゼロ、新しい募集もかかってこないから何も出来ないという負のスパイラルがここに完成していた。
腰も背中も何もかもとにかく全身が悲鳴をあげていて、正直根性だけで動いているような日々が続いていた。
「というかホントに人入れないとクレームどころか店が回んねーよ、本気で上層部馬鹿じゃねーの?」
と愚痴をこぼしながら今度は食器を拭いていく。
「もういっそこんな会社潰れてしまえば良いのに。」
大体このあたりでいつも仕事がすべて終わる。
ちなみに毎日のように考えているが倒産する気配はない。
「もっと給料良くて楽な企業探すか…」
これも毎日のように考えていることだが、なかなか行動に移せないことであった。
今日も憂鬱な気分で扉の戸締まりをし、店を後にしようとしたそのとき、ふと目の前に誰かがいることに気づく。
「ん?あんた誰だ?なんか用か?」
「…」
目の前の恐らく男だろう。
大柄なその人物は何も答えない。
気味悪く思いとりあえず無視して歩き出そうとしたとき、
ヒュン。
目の前の男が腕を振った。
「は?」
気がついたときには、大貴の頭が宙を舞っていた。
こうしてこの世界での大貴の人生は幕を閉じた。