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続・紅の挽歌 ~佐久間警部の鎮魂歌~(2024年編集)  作者: 佐久間元三
警視庁の攻防
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犯人の断片(2024年編集)

 ~ 東京都 警視庁捜査一課 ~


 佐久間が捜査を立て直してから、約一時間が経過している。現場からは、次々と続報が入り出した。


「中山明美が目を覚ましたので、ここに至るまでの経緯を聞きましたが、頑なに黙秘をしています。コテージから、海岸線を通って、洞窟まで来たルートと、洞窟からコテージまでのルートは、聞き出せたので、捜索を開始したところ、模倣犯が通ったと思われる、抜け穴を発見しました。抜け穴(そこ)から森林内を経由して、北北東の海岸に接する断崖を降り、脱出した形跡があります。断崖から海に向かって、ロープが垂れ下がっていたので、鑑識官で指紋を採取しています。簡易ボートなのか、小型船舶かは、現在のところ、不明です」


「島内の最北、民宿の玄関口で、射殺された二名を確認。現在、身元と遺留品を確認中」


 佐久間は、まずは、黙って報告を受けたうえで、冷静に、一つずつ対処する事にした。


(優先すべきは、海岸班の方だな。被害者の方は、発言の仕方からして、鹿井健一ではないのだろう。そちらの方は、捜査結果を見てからの、判断で良いだろう)


「海上保安庁に、捜査協力を要請しているが、羽田基地の部隊が、先程、瀬戸内海で起きた、遭難事故に対応中だ。戻り次第、駆け付けてくれるそうだが、念の為、神奈川県警の航空隊にも、声を掛けておいた。地形を見るに、この海域では、簡易ボートでは座礁すると思われるので、小型船舶に的を絞って欲しい。巡視艇、ヘリコプターが揃い次第、行動を開始してくれ。トンネル班の捜索隊は、廃墟班の捜索隊と合流したうえで、模倣犯の痕跡がないかを、当たってくれ。それから、中山明美の事なのだが、詳しく事情を聞いてみたい。猿島(そこ)から、横須賀署へ身柄を移してくれ。移送が完了するまでの間、森林班・トンネル班・海岸班の捜査官は、固定メンバーの中から、各一名を選出して、護衛を頼む。船着場班は、彼らと連絡を取り、迎えに二名出せば、計五名で死守する事が出来る。模倣犯は、口封じをするとしたら、島内で行う確率が、最も高いから、絶対に、北原朋和の二の舞だけは、避けてくれ」


「トンネル班、了解」

「森林班、了解です」

「海岸班、了解」

「廃墟班、了解です」

「船着場班、了解した」


「民宿については、神奈川県警察本部に、捜査協力を要請した。向こうの捜査一課経由で、鑑識官五名、横須賀警察署の応援部隊五名が、巡視艇で到着する手筈となっている。船着場班と森林班の捜査官は、固定メンバーの中から、各一名を選出して、彼らと、現場保全に努めてくれ」


「船着場班、了解」

「森林班、了解」


 状況が判明するに伴い、安藤の表情から、悔しさが伝わってくる。


「模倣犯を確保するどころか、全部、裏目に出てしまったな。あの失態が無ければと思うと、残念で仕方が無い」


(………)


「山さんは、確かに重大な失態(ミス)を起こしました。しかし、それは、模倣犯も同じです」


「同じ失態(ミス)?それは、何かね?」


「生き証人である、中山明美です。今度こそ、死守したいと思います。横須賀警察署内(所轄)に匿います」


「生き証人か。捜査の進展に、期待したいところだが…」


(………)


 佐久間は、心の内を、安藤に耳打ちすると、安藤は、僅かに、眉根を寄せる。


「それは、本当なのか?」


「はい、まだ、推測の域を超えませんが、模倣犯の断片が見えてきました」


「推測の域だけでも、大したもんだ。どうやって、辿りついた?」


 佐久間は、ほくそ笑む。


「行政側、もしくは、行政に近い人間だと思いまして、内偵捜査をしてきました。これから、その確認作業をしていく中で、明らかになっていくと思います。その筆頭作業が、中山明美の事情聴取になるので、自分で動こうかと思います。それと、鍵を握るのが、猿島にいなかった、鹿井健一です。今回の対象者では無かった様なので、早めに手を打とうと思います。まだ、課長だけしか知りません」


(模倣犯の断片か)


「…猿島の模倣犯を、改めて、どう見る?確保出来ると思うかね?」


「鋭意努力しても、逃走時間を与えすぎました。生き証人の中山明美を殺そうと、まだ猿島に潜んでいれば、状況次第では、一縷の望みがありますが、延べ九名が死亡した事から、模倣犯の殺害計画が、ほぼ完遂した事になります。模倣犯が、『もう面が割れても、構わない』と思っているのであれば、迷わず逃げるでしょう。瀬戸内海から、海上保安庁が向かっていますが、時間的に、間に合わないでしょう。横須賀方面からの巡視艇も、模倣犯の、小型船舶の逃走速度にもよりますが、東京湾方面に逃げられれば、流石に、追いつけないでしょう」


(海上保安庁のヘリコプターが、羽田基地から出ていれば、挟み撃ち出来ただけに、悔やまれる。これも、模倣犯の持つ運なのだろう。天候、時間、人。どれを取っても、模倣犯側に有利になってしまった)


「…そうか、時間的にも厳しいか」


「課長、頃合いを見て、猿島からの撤退指示を、お任せして宜しいでしょうか?」


「ああ、分かった。…横須賀警察署(所轄)に向かうのか?」


「はい。捜査二課(二課)で、顔写真を入手したら、照会を掛けようと思います。思い過ごしなら良いとは、思っていますが。もし、私の予想が的中する場合は、それはそれで、面倒な事になります」


(どちらに転んでも、火種は残るか)


「永井によろしくな。気を締めて臨め」


「承知しました。山さんの事、何とぞ、お願いします」



 ~ 三時間後、神奈川県警察本部 横須賀警察署 ~


 猿島から、無事に移送された中山明美は、横須賀警察署の留置場に、身柄を拘束されている。中山に事情を聞く為、佐久間自ら、横須賀警察署を訪れた。神奈川県警察本部横須賀警察署は、他の所轄警察署とは、少しだけ、事情が異なる警察署である。


 横須賀市は、小泉元首相の生家があり、横須賀本町には、米軍横須賀基地がある。夜には、多くの米兵たちが街を徘徊し、事件やトラブルで、横須賀警察署員が出動する事も少なくない。通称、『ドブ板通り』と呼ばれるこの街で、日夜、慌ただしく捜査にあたっているのだ。一般国道16号の歩道上には、通称、『イエローライン』と呼ばれる国境線が敷かれ、犯罪を犯した米兵がこの線を跨ぎ、米軍横須賀基地内に逃げ込むと、所謂、『治外法権』が適用され、日本国憲法では、簡単に犯人を検挙出来ない。その為、ドブ板通りで発生した犯罪は、可能な限り、ドブ板通りで解決するしかないのである。

 イエローラインの線を引くにあたり、歩道整備や日常管理は、国土交通省関東地方整備局の所管である維持出張所が管理しており、線の確認行為は、国土交通省・横須賀警察署・米軍基地により、厳格に行われ、現在に至っている。


 佐久間が、横須賀警察署に到着すると、まずは警察署長に挨拶する。


「署長、この度は、色々と助けて頂いたうえに、間髪入れず、押し掛けてしまいました」


 横須賀警察署長の永井は、安藤はもとより、佐久間とも、旧知の仲だ。


「水臭い台詞は不要、昔通り、永井で良い。…それにしても、変わらんな。元気そうで、安心したぞ!」


「永井さんも、お変わりなく。後で、どうですか?」


 佐久間の所作に、永井は嬉しそうに、相槌(あいづち)を打った。


「良いねえ、久しぶりに飲むか。佐久間警部(おまえさん)の聴取が、終わるまで待ってるよ」


「ありがとうございます。中山明美は、まだ留置場ですか?」


「いや、そろそろ来るだろうと、取調室で待機させている」


(相変わらず、配慮が行き届くお人だ。ありがとうございます)


「助かります。では、後ほど」


 佐久間は、三階に向かうと、剣道稽古に精を出す署員たちと、軽く言葉を交わしてから、取調室のドアを、静かに開ける。中山明美は、憔悴しきった様子で、下を向いたまま、微動だにしない。


(この人間が、生き証人か)


「中山明美さん、初めまして。警視庁捜査一課の佐久間と申します」


(………)


 佐久間の声掛けに、反応はない。


(…相当、疲弊しているな。死体を見るのは、初めてだったのだろう)


 顔を上げない中山に、署員が慌てて、目線を上げるよう、促そうとすると、佐久間は、無言のまま、手で御した。


 その様を察した中山は、少しだけ目線を、佐久間に向けた。


(------!)

(------!)

(------!)


 室内の全員が、言葉を失う。佐久間が、突然、深々と頭を下げたからである


「今回の事は、警視庁(我々)の落ち度です。中山明美(あなた)は、加害者ではなく、被害者だ。理不尽な確保、留置場での身柄拘束、それに、現場検証とはいえ、辛いものを見せてしまい、どう取り繕っても、許される事ではありません。ですが、現場を代表して、深く謝罪いたします」


(------!)

(------!)

(------!)


 中山は、涙を滲ませながらも、声を張り上げた。


「いた!理解して、助けてくれるお巡りさんが!…そう、何もしてない。私は、何もしてないのよ。…でも、皆が、私を犯人扱い。コテージ前で拉致られて、無理矢理、洞窟で死体見せられて、目を覚ました途端、一方的に事情を聞かれたから、黙秘してやったら、生意気な女だと、有無を言わさず、連行されて。でも良かったわ、本当にどうしようかと、思っちゃった」


「私としても、口を開いて貰って、助かります。そこの君、手錠を外してやれ。責任は私が取る」


「はっ、承知しました」


 手錠が外された中山は、嬉しそうに手を擦る。佐久間が、清涼飲料水を手渡すと、遠慮なく、一気に飲み干し、緊張が解けたのか、少しばかり、雰囲気が良くなった。


「座っても?」


「勿論、えーと、佐久間さん?」


 急に、気さくな態度で接しようとする中山に、周りの署員が、慌てながら嗜める。


「ダメだよ。この方は、偉い刑事さん。幾ら何でも、タメ口は、失礼だよ」


「そうなの?…いえ、そうなんですか?」


(根は、素直な、良い娘だな)


 佐久間は、首を横に振って、微笑んだ。


「良いんですよ、タメ口で。用件は、直ぐに終わらせるし、自由をお約束します」


「本当ですか?」


(時間を掛けてでも、丁寧に聞いた方が良いな)


 佐久間は、試行的に、探りを入れる事にした。


「自由になる為には、自身の潔白を証明しなければなりません。殺人事件なので、被害者と、一番近くで接していた中山(あなた)は、猿島に訪れた目的、被害者と別れ、コテージに戻った理由など、時系列を整理する必要があります。何とか、協力して頂けませんか?」


 中山は、快諾する姿勢を見せる。


「勿論よ、私に頭を下げてくれた刑事さんは、佐久間警部(あなた)だけだから、質問には、何でも答えるわ」


 佐久間は、筆記をする様、合図を行ってから、流れを止めない様に、優しく質問を開始する。


中山(あなた)は、鈴木淳一郎さんと、観光目的で、猿島に来られたんですか?鈴木さんの名前は、横須賀警察署(こちら)に向かう道中、関係者から聞きました。前日から、宿泊している様ですが?」


「観光じゃないわ。…実はね、雇われたの。あすなろ物産の芝山って男と、竹中って男に。『一晩か二晩で構わないから、鈴木淳一郎が泊まるコテージで、身の回りの世話をしてくれ』と」


(なるほど、そういう事か)


「それは、つまり、売春(あれ)ですか?」


「うん、売春(あれ)よ。私は、川崎市の堀之内で、風俗嬢をしているの」


「そうですか。それで、幾らで雇われたんですか?五万円ですか?十万円ですか?」


 中山は、ほくそ笑む。


「一晩、四十万円。破格でしょ♪」


「よっ、四十万円!」


 佐久間よりも、他の署員が驚きの声を上げる。


「佐久間警部、すみません、つい」


「いや、大丈夫、気にするな。しかし、凄いですね。中山(あなた)は、超売れっ子だ。自分が同じ女性の立場なら、迷わず、飛びつくと思います」


 中山明美は、大笑いする。


「刑事さんって、本当に、話分かる人だわ。佐久間警部(あなた)みたいな人、もろタイプよ♪」


 佐久間は照れながらも、質問を続けた。


「光栄です。すると、中山(あなた)は、芝山と名乗る男に、犯行場所まで、鈴木を案内する様に、依頼されていた。違いますか?」


佐久間警部(あなた)って、凄いわね。質問の通りよ。まず、十一時二日の十四時に、コテージを出る様、指示されたわ」


「なるほど、それで?」


「その次は、カップルに見える様に、イチャつきながら、腕を組んで、海岸から岩場まで案内しろって。それで、岩場に着いたら、岩場から真っ直ぐ進んだところに、光の洞窟と呼ばれる場所があるから、そこまで、鈴木にバレない様に、誘導しろと。これを守らなければ、報酬は無しだと。だから、私は、お金が欲しいから、懸命に誘導したわ」


(海岸班の説明通りだな。山さんも、この状況を見たから、警戒しなかったのだろう)


「指定された時刻と場所に、中山(あなた)は、鈴木を誘導する事が出来た。では、その後の事を教えてください。鈴木を、指定場所まで誘導したら、すぐ離れる様、指示されていましたか?」


「いいえ、すぐに去れとは、言われてないわ。でも、『鈴木は、光の洞窟内でカメラを使うだろう。だから、鈴木がカメラを使えない様に、前もって、カメラを隠しておけ』と、言われていたの。そしたら、鈴木は、中山()に、『カメラを取りに行く様に、依頼するはず』だって」


(なるほど、模倣犯なりに、中山を現場から離す手段を、練っていたのか)


「芝山がですか?」


「いいえ、竹中よ」


「では、竹中に言われた通りに、実行したと?」


「いいえ、鈴木からは、取りに行って欲しいと、頼まれはしなかった。でも、カメラが無くて困っていたから、私から、『率先して、コテージに取りに行ってあげるよ』と言って、戻ったの。鈴木(あの人)は、探索したがっていたし…」


(『あの人』の言い方に、違和感を覚えるな。少しだけ、情を感じているのか?)


「そうですか。では、今度は、コテージまでの道中について、伺います。コテージに戻りながら、何を考えていましたか?違和感を覚える、不審に思った事があるなど、何でも構いません」


「…洞窟を出る時に、人の気配を感じました。私って、そういうのに、敏感だから。だから、何か、嫌な感じがした事は事実です。鈴木の変わり果てた姿を、見せられた時は、失神したので、覚えてません。でも、あの光景は、一生忘れないと思う」


「必要であれば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の、専門病院にお連れします」


 中山は、きっぱりと、その申し出を断った。


「それは、大丈夫です。だって、ここまで親身になって、話を聞いてくれるんだもん」


「そうですか、ありがとうございます」


 ふいに、中山の雰囲気が変わった。


「…あの、死体を見てから、ずっと気になってるんですが、やっぱり、芝山と竹中は、何かの事件の、首謀者なんですか?まあ、間違いなく人殺しだから、聞くのも、変なんだけど。…それに、お金の為とはいえ、巻き込まれた自分としては、やっぱり怖いし」


「その考えは、合っていますよ。芝山は、偽名だと思いますが、『十名程、殺害する』と、犯行声明を送ってきました。大量殺人犯です」


(------!)


「じゅ、十名って、多くないですか?」


「勿論、類を見ない、卑劣な犯罪です。あまり詳しく、捜査状況の事は、お話出来ないのですが、既に、何名もの被害者が出ています。捜査過程で、次の発生場所として、猿島が最有力候補として浮上し、数日前から、警視庁(我々)の合同捜査チームが、一般人に扮して、潜伏していました。そこに、中山(あなた)が、居合わせる形になったのです。もし、勤め先が、吉原などの違う場所であったら、この場所には、他の方が座っていたでしょう」


(………)


 中山は、呆気に取られた。


「まるっきり、サスペンスドラマだわ。…じゃあ、私は、どうなるんですか?」


「事件そのものには、関与していませんから、釈放はされます。しかし…」


 中山の表情が、途端に強張る。


「…それって、死亡フラグじゃない。口を塞がれる…って事ですか?」


「申し上げ難いですが、その通りです。八月の事件では、ある対象者が、一度は、一命を取り留めましたが、同日のうちに、搬送先の病院に押し掛けられ、生命を落としました」


(------!)


「…そんな。絶対に、死にたくない。何とか、守ってくれませんか?」


「勿論、万全を期す事をお約束します。その為には、警察組織(我々)の監視下になるので、少々、不自由をお掛けしますが…」


「ええ、勿論、大丈夫です。お願いします」


 一通りの事実確認を終えると、佐久間は、一呼吸ついた。


(ついに、この時が来てしまった。…来て欲しくなかったが)


 捜査二課から入手した、写真を触る手が、汗で湿っている。確かめたいが、認めたくない。そんな違和感を覚えつつ、切り出す時が来たのである。


「芝山に関する、男の特徴ですが、今までは、痕跡すら掴めませんでした。ですが、最近になって、浮上した、ある人物がいる。……この男に、見覚えはありませんか?」


 佐久間が、恐る恐る、写真を提示すると、中山は、あっさりと認めた。


「はい、この人です、芝山は。写真の通り、無愛想だけど」


(------!)


(……やはり、嫌な予感は、当たるものだな。認めたくなかったが、この後の展開が、見えてきたよ)


「刑事さん?」


「…今日は、これで終わりとしましょう。直ぐに、釈放手続きを執ります。近くで、模倣犯が狙っていても、おかしくありません。万が一を考えて、変装をした中山(あなた)を、警察署の裏口から、他の女性警察官で連れ出し、匿います。東京都内のホテルまでは、普通車で移動するので、ご安心ください。そのホテルで、身の安全を確認出来るまで、数日間は身を潜めてください。必要なものは、何でも手配する様、配慮しますので、女性警察官に申し付けてください」


 中山は、満面の笑みを浮かべる。


「犯人扱いから、貴族(セレブ)扱いね。苦労した分、お言葉に甘えます。…佐久間警部なら、泊まりに来ても良いわよ。お金は要らないし、勿論、一緒のベッドにね♪」


中山(あなた)の様な、美人に誘われると、断り切れなくなります。本気になったら、家庭崩壊しますから、聞き流させてください」


「まあ、お上手ね。分かったわ、でも、その気になったら、いつでも来てね♪」


 佐久間は、場を濁さない様、やんわりと頭を下げると、微笑みながら、取調室を後にする。だが、扉を閉めた瞬間、その表情は、瞬く間に、険しくなったのである。


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