装備を揃えよう ~チュートリアル~
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カランカラン
鈴の音と共に鑑定屋の中に入る
そして息を整えて言う
「こっ、こんにちは。鑑定を頼みに来ました!」
「ん~?え~、あいよ」
店のカウンターに居たのは、60ぐらいの婆さんだった
よく見れば店の中は怪しいアイテムでいっぱいだった
たとえば店の横に掛けられている大剣、あれは何故か呪われているように見える
「うわっ!暗っ!不気味!!」
「なんだい珍しい服着てるの。人の店に来ていきなり酷評かい。
だいだい不気味ってなにさ。ここにあるのはどれもお前ごときじゃ買えないものばかりだよ」
「え、これらが?確かに異様な雰囲気纏っているけど・・・。じゃあ、あの大剣はいくらするんだ?」
と言って、呪われてそうな大剣を指さす
「あれは売り物じゃないが、そうだねぇ・・・。売るとしたら三万ミルはするね」
ミル?何それ?と思ったがすぐにゲームの中ではお金の単位だった事を思い出す
三万ミルは序盤ではかなりの金額ではあるものの、進んでいくと、そこらの武器の方が高くなる
実際にゲームで装備していたのは二十万ほどしたロングソードだった
「へぇー、三万ねー」
「なんだいその言い方は、冷やかしに来たんなら帰っておくれ」
「え、あっちょ、待って。今出すから」
と言って財布の中から一万札を取り出す
カウンターに置いた瞬間、老婆の目がカッと開いた
「おお・・・。こいつは凄い。あたしゃ今まで何十年と鑑定師してきたが、ここまでの物は初めてじゃよ」
やはり、この世界においては凄い代物らしい
財布を持ってきていた事に感謝しつつ、話をきく
「うん?動かすと所々虹色に光るねぇ。もしやサンストーンを混ぜてあるのかねぇ。そしてこの絵と模様。世界中探しても描ける者は少数じゃろ」
確かに、昔の人からすれば、絵だけで凄いと思うほどの技術だ
ニホン、アリガトーと空に向かって言ってみる
数分すると、鑑定額が出た
「少年、これは素晴らしい物だよ。これを越える物は無いんじゃないかな。買い取り価格としては、二百万ミルでどうじゃ」
「にひゃっ!二百万!?」
これは流石に驚きを隠せなかった
ゲームの時でもそんな額は稼いだ事がない、それほど高額だったのだ
「なんだい、今更止めたいとか言うんじゃ無いだろうね」
「い、いや、売る!売るよ!」
老婆は大変嬉しそうな顔で
「ほい、決まったのう。待っとれ、今お金を持ってくるから」
といって、店の奥に行った
「お、おお。なんか、いきなり金持ちになったぞ・・・。
二百万あれば普通に生活できるんじゃ・・・。いや、ダメだ!なぜファンタジー世界に来てまで引きこもらなければいけないんだ!その考えは捨てろ!俺!」
まだどこか楽をしたい気持ちに無理矢理言いきかせる
そしてジャラジャラという音と一緒に老婆が戻ってきた
そしてカウンターの上に置くと、ドスンッ!という音で店が響いた
「ふぃー、疲れたわい。どうじゃ、驚いとるようじゃがのう」
「こ、この量で驚かないやつとかいるのかよ・・・。にしても、よくこんなに持ってたな」
いかに鑑定師といえど、金に限界はあるはず。この10Kgはありそうな量を持っていたら相当だろう
この言葉を聞いた老婆は、少し自慢気に
「ここは町中の冒険者が集まる場所じゃ。それくらい不思議でもない」
「うげ・・・まじかよ。婆さん凄いな・・・」
「ふぉっふぉ、そんな褒めるでない。・・・して、お主はそれを何に使う気じゃ?」
「何に使う・・・って、もちろん冒険の為のアイテムや装備を整えるためにだな」
すると、老婆は笑い
「ひゃっひゃっ。お主、冒険者になるのか。なるほどなるほど、ではもうナンバーカードは作ったのかのぅ」
「へ?ナンバーカード?」
初めて聞いた単語だ
ゲームには無かったはず
もしかして進めるにあたっての何かか?
色々思ったが、老婆に聞く
「えっと、そのナンバーカードって・・・」
「なんじゃ、お主知らんのか。初等院で習わんかったか?・・・まぁよい。
ナンバーカードは冒険者がギルドに頼んで発行するものじゃ。もしやギルドも知らんと?」
「あ、いやそれは知ってる。たしか冒険者を管理する所だろ」
ゲームで死んだ時はよくお世話になったものだ
「そうじゃ。そのナンバーカードがないと、ダンジョンはおろか特訓所にさえ入れてもらえん」
「うげ、面倒だな・・・」
「なに、発行はすぐに終わる。それより、死ぬんじゃないよ。あたしゃ何人も泣いて形見を持ってくる人を見とる。・・・ありゃ、もうこりごりなんだよ」
今、婆さんはなんて・・・?
死ぬ?本当に?復活は?
「え・・・?ちょ、死ぬって、復活したりとか・・・!」
すると急に老婆は真剣な顔立ちになった
目が笑っていない
それほど真剣なのだろう
「いいかい?命は軽くないんだよ。止まれば死ぬし、生きてたら鼓動を続ける、とても簡単に壊れるものさ。だから、無理だけはするんじゃないよ。いいね」
その迫力に押され、言葉詰まりながらも返事をする
すると老婆の顔は戻り、やわらかい顔になった
「分かったらいっといで。無理はするんじゃないよ。まいどねー」
「あ、ああ。色々助かったよ婆さん。ありがとな」
そして、店を出る
最初に見えた空は青かった
*
(復活はない、か・・・。とんでもなくハードだな)
心情はままならなかったが、ギルドがある方向へ向かう
しばらくすると、それらしい建物が見えた
「あった、よかったぁ~。これで俺も冒険者か。わくわくするなぁ!」
死ぬという危険があってもやはり好奇心の方が勝っていた
こんにちはー。という声と共に中に入ると、見慣れない場所が一つあった、恐らくそれが、発行所やらだろう
ギルド内は、ゲームとさほど変わらなかった
左半分は食事所が大々的に設けられていて、右半分が、アイテムショップに掲示板、さらには簡易式だが換金所があった。ここで取れたアイテム等をお金に変える場所だ
そして、一番右端に、知らないカウンターがあった、ここが発行所のはずだ
「えと、すいません。ナンバーカードを作りたいのですが・・・」
その場所の人に声を掛けると、笑顔で答えてくれた
「はい!かしこまりました。ナンバーカードの発行ですね。少しお待ちください。」
会話が一段落つき、俺はホッとした
すると、カウンターから、カードの様な物を取り出した
「では、お名前を・・・」
「あ、ええと。白井 涼汰です」
名前を言うと、カードに シライ リョウタ と浮かびあがった
ここの文字はゲームと同じで、全てカタカナで表示されるらしい
「はい!では次に年齢を。」
「はい。えっと、今年は誕生日まだだから・・・。17歳です」
同じ様に 17サイ と浮かんだ
その後もいくつか質問され、少々お待ちください、と椅子に座らされた
(しっかし人が多いな。いつもこうなのか?見るとパーティがほとんどだな・・・。俺もいつかはーーー)
「終わりました!こちらで間違いはないでしょうか?」
「へ?あわわ、えと、大丈夫・・・です」
すると、カードを渡され
「では、登録が完了したので、無くさないよう、ご注意ください。よき冒険者生活を」
おお、終わった!これで俺は冒険者として活動できるのか!ワクワクしてきた!
気持ちが昂り、装備を買いに行こうとするが、呼び止められる
「君、少しいいかい?」
その人は高級そうな装備をつけた、とても美しい人だった