とある老婦人の話① R15
初めまして、満樹と申します。
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あ、来た来た。こっちよ沢田さん、こっち。
え? いいのよ、気にしないで、たかだか5分遅れたくらいで。
大丈夫よぉ、私もさっき着いたばかりなんだから。もう、沢田さんは生真面目ねぇ。
何を頼みましょうか。
あら、もう決まったの?早いわね。
それじゃ、私はコーヒーにしようかしら。
店員さーん、コーヒーをひとつと、沢田さんは…紅茶ね、紅茶をひとつ。
もちろん冷たいのを頼むわよね、だってこんなに暑いんですもの。
あ、以上よ、お願いしますね。
久しぶりねぇ、あなたと会うのは。
確か最後に会ったのは6月だったわよね。
梅雨入りが早くて、あの日はかんかん照りだったわ。
梅雨のじめじめした空気も嫌だけど、自分の影が焼き付くような今日の暑さと比べたら、まだマシな気がするわ。
沢田さんもそうでしょう?
そういえば、私の知り合いのお友達の話なんだけどね。
その知り合いから聞いたんだけどさ、その知り合いのお友達、ああ、言うのが大変だから花子さんにしとくわね。
その花子さん、息子夫婦と同居してたらしいんだけどね。
ほら、ドラマでもあるけど、嫁姑っていい関係を築くのが難しいイメージが強いじゃない? ね、そうでしょ?
実際私のところも表面化されなかっただけで、結局別居しちゃってね。
でも、花子さんとお嫁さんは問題の「も」の字も出ないくらい仲良しだったらしくて、ご近所からも羨ましがられていたらしいの。
そりゃそうよね。
同居するってことになったらいろいろとごたごたが起こるし、誰だって悩むものよ。
まぁ、花子さんのお宅は違ったわけで。
花子さんの人柄?
花子さん自身は活発な方だそうで、体も丈夫で日中もお年寄りの集まりだとか、旅行とかに行っててね。
性格も温厚な方らしいわ。
そうよね、優しい人だから上手くやっていけたんでしょうね。
私だったら絶対口うるさくなりそう、嫁の家事の仕方見てたらイライラしちゃう。
ある日ね、そんな花子さんが風邪をひいて寝込んでしまったらしいの。
年をとって体調を崩すのって、若い人に比べて大変なのよね。
花子さんもやっぱりしんどくて、お嫁さんは花子さん一人が家にいるのを心配して、パートも休んで一生懸命看病したそうなの。
花子さん、心から手を合わせたそうよ。
いつも嫌な顔ひとつせず、笑顔で接してくれることにね。
こんなお嫁さんなかなかいないわよね、すごいわよ。
そのおかげで熱もずいぶん下がって、普通に歩けるぐらいにまで良くなってね。
昼頃目を覚ますとのどが渇いてたから、花子さんはお嫁さんに声をかけたの。
え、普通に歩けるようになったのに何でかって?
前の日に水をくみに花子さん台所に行こうとしたらしいんだけど、お嫁さんがすごいスピードで飛んできて。
顔色変えて、まだ安静にしてなきゃダメですって。
いつも家事はお嫁さんがしきってたそうで、台所が汚いからきれい好きなお義母さんにはお見せできないって言って、普段から花子さんを台所に立ち入らせなかったそうよ。
他の家族は自由に行き来してたそうなんだけどね。
奥さん結構のりのりで話してます。
次で老婦人の話はおしまいです。