第6話 女性の長電話は定番です
ご覧下さる方が増えて、とても嬉しく思います。ありがとうございます。
今夜は天ぷらとそばです。そばを茹でるのはお母さん。薬味の用意は千里。今食べる分の天ぷらを揚げるのは私の担当だ。お父さんの分は後でお母さんが揚げるからよいのです。
「お母さん、今週末の土曜日に決めたけどいい?」
「うん、いいよ。電話番号聞いてきてくれた?」
「うん、もちろん。
千里、夕菜ちゃんも行くっていうから千里も参加って言っといたよ」
「了解」
「何人参加の予定になっているの?」
「えっと、決まっているのが、うちから三人と玲奈と夕菜ちゃん。健人くんと、和維くんちが三人。未定なのが…お父さんと和維くんのお兄さん…達。かな?」
「多いねー。決まっているだけで九人ね。
食事の事とか藤沢さん家と決めるから。決まった事は守るんだよ」
「よろしくお願いします」
夜の8時をまわって、お母さんが子機を手にソファーに座った。隣りに私も座る。
3コールで出た。『はい、藤沢でございます』ときこえた。
「夜分恐れ入ります。私、和維くんと同じクラスの井上奈央の母です」
電話機の向こうでテンション高く何か話している様子が伺える。
…………………話始めて、かれこれ50分だ。
テーブルの上の携帯が鳴った。お母さんは電話中なので私がでる。
「もしもし、井上でございます」
『夜にすいません。藤沢と申しますが奈央さんお願いできますか?』
「こんばんは、和維くん。奈央です」
『今、大丈夫?』
「うん」
『なぁ。今、俺ん家に電話してるの香織さんだろ?母さん、すっげー楽しそうに話してんだけど。土曜日がコワくなってきたわ』
溜息が聞こえた。
「ところで、用事があるんでしょう?」
『ああ、そうだった。メールちゃん届いたか?確認のメールお願いしたんだけど、届いてないのか未読なだけなのか気になって電話した』
「もう送ってくれてたの?これから確認して返信するね。気付かなくてごめんね。電話ありがとう」
『ああ~それだけだから、じゃ』
「うん、おやすみなさい」
『おお、おやすみ』
すぐにメールに返信した。今日は和維くんには悪い事ばかりしてしまった。心の底から申し訳ない。
お母さんの所に行くと、聞こえてくるのは『霊獣通行券』の話のようだ。というか、ほぼ一方的に話しているように聞こえる。お母さんの肩を叩いて電話を代わってもらう。
「こんばんは。和維くんと同じクラスの井上奈央です。土曜日は大勢で伺う事になってしまってすいません」
『いいのよー。和維が女の子呼ぶなんて初めてなのよ。私達も楽しみにしているわ』
「はい、私も楽しみです。当日はよろしくお願いします。母と代わりましょうか?」
『ううん、色々決めたから今日はもういいわ。お母さんによろしくね』
「はい、わかりました。失礼します」
お母さんに決まった事をきく。DVDが大分長いから、藤沢宅には朝9時集合。お昼は、うちと藤沢さんで用意。もし夕飯が必要になったら出前をとる。コーヒーとお茶は藤沢さん家で用意するから、それ以外の飲みたい物とおやつは子供達で用意。おやつは買おうかな?作ろうかな?明日、相談しよう。
さぁ、本日の相談タイムです。
一応昨夜の報告をして、いよいよおやつの相談です。が、あっさり決まってしまいました。
飲み物は、重いっていうのと和維くんちに前日までに運んで冷蔵庫に入れた方がいいという事で、健人くんと和維くんが担当。中学生二人にはスナック菓子を幾つか用意してもらう。玲奈にはクッキー数種類を焼いてもらう。私は、洋酒に漬けたフルーツ入りの大人用ケーキと子供達用にチーズケーキとシフォンケーキを作ることにした。
次回は、やっとあの人の登場です。
読んでいただきありがとうございます。