第5話 いつの間にか友達だったようです
今日は四人揃っての夕飯だ。因みに海斗お兄ちゃんは一人暮らしなのでいない。
早速きいてみる事にする。
「あのね、まだ日にちは決まってないんだけど、健人くんの友達の藤沢くんちで『霊獣通行券』のDVD見る事になったんだ。
それで、私も玲奈も男の子の家はちょっと…ってなったら、藤沢くんのご両親も一緒に、あと、うちの家族もこのアニメ好きな事知ってるから一緒にどうかって。
だからお母さん達も来て欲しいの。
お母さんと千里の見たがっていたBOXの特典映像も見られるよ」
そこまで言って家族を見渡した。
「オレ行っても中学生一人だけだろ。見たいけど微妙だなぁ」
「玲奈が夕菜ちゃん誘うと思うよ」
「じゃあオレは夕菜が行くなら参加って事で」
両親を見る。
「父さんは休日出勤がなければ行きたいな。前日にならないとわからないがいいか?」
「お母さんはもちろん行くわよ。ついに生健人くんに会えるのね。楽しみだわ」
「うん、わかった。ありがとう、良かったぁ」
ホッと息を吐くと
「ああ、藤沢さん?日にちがきまったらお電話差し上げたいから連絡先きいておいて」
「はーい」
こうして、うちは一応家族みんなの参加が予定された。食べたら玲奈に電話しておこう。
お昼の時間になりました。話題はもちろん昨日の続き。
「うちの親はOKだった。兄貴達はわかんないけど、親は楽しみにしているって。
来月になると仕事が忙しいみたい」
「俺の所は俺だけだから、いつでも大丈夫」
続いて玲奈。
「あたしと妹で行くよ。妹かわいいからって手出すと、千里くんが噛み付くよ」
「私ん家は、お母さんと弟は確定。お父さんが仕事の都合でギリギリまでわからないけど、行く予定でお願いします。
それと、千里は噛まないから」
話はトントン拍子に決まっていき、早いうちにしちゃえと今週末に行われることになった。
「藤沢くん、うちの母がご挨拶したいから電話したいって言っているんだけど、お家の電話番号教えてもらえるかな?」
私はアドレス帳のハ行のページを開いて準備した。
「……0△〇8‐3△‐▼×○◇」
声に出しながら記入し、合っているかを確認する。よし大丈夫。手帳をしまうと呆れた顔をした玲奈と情けなさそうな顔をした藤沢くんと涙目の健人くんがいた。
玲奈が耳元で言った。「携番交換しな(怒)」と。何事もなかったかのようにしまったアドレス帳を取り出し、笑顔で「藤沢くんの番号も教えて♪」というと、藤沢くんまで涙目になり、カードを催促され、「後で携帯に送っておくから」と言われ、終わった。
電話とメールの注意事項も言おうとしたら「分かっているからいい」と言われてしまった。
言い訳しようと、
「藤沢くんとは、まだ友達と言える程積極的に話したことがなかったから連絡する必要もなくてきいた事がなかったけど、漸く友達になれそうな気がしてきたよ」
と言ったら、ついには健人くんに抱き付いてしまった。どうやら胸を借りて泣いているみたい。健人くんも自分の涙をハンカチで拭いながら藤沢くんの背をぽんぽんとしている。
「放課後には俺達復活してるから、今はそっとしておいて」
そう言って二人はとぼとぼと自分の席に戻った。
「奈央。言わない方がいい事だってあるんだよ。っていうか、あれは奈央が悪い。
言うなら、もっと別な言い方だってあったでしょ。…少しは悪意があったでしょ」
「ごめん」
「放課後までに何が悪かったか考えて、藤沢くんに謝りな」
「そうだね…」
「そうだよ。奈央は考えなしじゃないんだけど、突発的に天然娘になることがあるんだもん。
あたしでさえ驚くことがあるんだから、友達になって日が浅い彼らは、さぞ驚いただろうね」
そう言うと、お互い授業の準備を始めた。
放課後です。
うう~っ緊張する。
玲奈は謝れば大丈夫だよなんて軽く言ってたけど。本当?本当に大丈夫?だって、男の子が泣く程なんだよ。すごく傷つけた。本っ当に大丈夫?
不安になりながら藤沢くんの席へ行く。放課後には復活していると言っていた通り普通そうだ。
「藤沢くん、昼休みはごめんなさい」
頭を下げる。
「藤沢くんのこと、友達じゃないとか興味がないとかどうでもいいとか…………あれ?」
そんなこと思ってないよって伝えたかったんだけど。藤沢くんと健人くんがマンガのように目の幅の涙を流している。
「どうでもいいんだ…」
床に水溜まりが出来ている。涙が加速したようだ。
「どうでもいいなんて、全然思ってないんだよ。男の子の中では一番の友達だと思っているからね」
ハンカチは使用済みだったので、ティッシュペーパーを何枚か出し彼らの顔にあてる。それを自分達で持ち直してグイグイ拭いている。そんなに強くこすると赤くなっちゃう。
「藤沢くんは、物静かで格好いいキャラなのかと思っていたけど、人見知りの甘えんぼさん?だったんだねぇ。あ、人見知りっていうより、内弁慶なのかな?」
「男の子にその言いようはどうよ」
玲奈にそう言われて見ると、苦笑いをしている健人くんと耳まで真っ赤になっている藤沢くんがいた。
しばらくして落ち着いた藤沢くんは
「和維って呼んで」
と言った。それに応えて
「私のことも奈央で」
「あたしも玲奈でね」
「改めてよろしくね」
和維くんと握手をした。
床は自分達で拭くと言ったのでお願いした。