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番外編2‐5

類は友を呼ぶというが、玲奈の部屋も私の部屋と同様、ぬいぐるみは一つも置いていない。違う所といえば、所詮私の部屋よりもだけど、女の子らしい色彩とゲーム機があることだろうか。一応、花なんか飾られているが造花である。しかも、埃を払うのに、数日おきに窓の桟にべしべしと叩きつけているのを知っている。ハタキやハンディモップを使わない男らしさがちょっと素敵だと思っている事は内緒だ。

玲奈は飲みやすい温度の焙じ茶を出してくれた。少量の熱湯で粉末を溶いてペットボトルの水を足してくれたものだ。

急かすことなく、私が落ち着くのを待ってくれている。

落ち着いてきたら玲奈を補充したくなった。


「玲奈~」


私は玲奈に抱き付いた。


「奈央~。う~ん、奈央のいい香り~♪…じゃない」


おや?変態玲奈さん、随分とお鼻が利くようで。


「…チッ、魔王サマか」

「うん、当たり。よく分かったね」

「あたしの他に匂い付けそうなのって他にいないでしょ?」


二人共、犬なの?ねぇ、それってマーキングってコト?

そう考えるとちょっとイヤかも。離れようかなっと思ったら、「駄目~!」とギュッとされた。うん、やっぱり玲奈ってカワイイ。

うん、うん、たくさん補充しておこう。




玲奈にくっついたまま事のあらましをざっと話す。

「今度は熱いお茶を淹れてくるね」と部屋から出て行くのを見送った。

話してみて、只それだけでスッキリした。

確かに皆によってたかってって感じで私が怒る要素もあったと思うが、きっと普段の私だったらあの位は軽く流せていただろうなと思う。本当に瞬間湯沸し器みたいだったなぁ。

テストがあって、お出かけがあって、放課後デートがあって、携帯電話の事で小さな隠し事をして。あっ、大人の階段も少し登ってみて…。

少し無理していたのかな。思っていたより疲れていたんだな。そんな事に漸く気付いた。それに加えて生理も近くて。

なんだかホントに「なぁ~んだ」だ。

きっとあの時、あのまま雅さんと居ても一人で自宅へ帰っても落ち着いて冷静に気持ちの整理をすることはできなかっただろう。玲奈の所に来て良かった。

向きあって整理ができた私の心は、雪がちらつく今日の空とは対照的に晴々としていた。




玲奈が熱いお茶を淹れて、豆大福と一緒に出してくれた。

…すごく不自然な物が視界に入るけど、それは今は触れないでおこう。


「はーい、お待たせ。さぁどうぞ、召し上がれ。

食べて食べて。美味しいよ~」

「いいの?ありがとう。わーい、美味しそう。いただきます」

「ねぇほら、奈央見て!お茶淹れたら、どっちも茶柱が立ったんだよ!」

「えっ?ホントだ。凄いね…!これはこれでありがとう。

これとは別に、急だったのに快くお家に上げてくれてありがとう。

玲奈のおかげで、もうすっかり元気になったよ。やっぱり、私にとって玲奈との時間ていうのは本当に大切なんだってよく分かったよ。

………どうしよう。私、玲奈が居ないと生きて行けないかも」

「そぉ?最近、奈央ってば魔王サマとばっかりだったし?あたしに隠し事なんてするしー。

もう、あたしの事なんてどうでもいいんでしょ?アー、サミシイサミシイ」


サミシイが棒読みですよ、玲奈サン。どうでもよくないし、大切さはよぉーっくわかりましたから。


「玲奈ごめんね。でも本当にありがとう」

「ねぇねぇ、今日はこれからどうするの?藤沢家に行っちゃうの?お家に帰っちゃう?まだウチでゆっくりできるの?」

「玲奈の都合が平気ならお昼頃まで玲奈と一緒がいいなぁ、駄目かな?最近色々あってちょっと疲れていたみたい。しかも生理前だし。玲奈をたっぷり補給しないとダメっぽいみたい」

「そっかぁー。うんうん。そうだよね。あたしの事が一番だよねっ」

「ふふっ、もう、玲奈ったら」

「そうそう、健人から忘新年会の予定の打診きていたけど、もう返事した?」

「ううん、まだ。でも、できたら、玲奈と健人くんと和維くんと私の四人だけでしたいな。久しぶりに四人だけで心置きなく遊びたいね」

「魔王サマ達は一緒じゃなくていいの?」

「雅さんが居ると、和維くんと健人くん、いつもと違うんだもん。

それってやっぱり私も淋しいんだよね。…私だって気付いているよ」


玲奈が不自然に置いた一枚のティッシュペーパーを捲る。どこからどうみても、その下に携帯が開いて置いてあるのはバレバレだった。

通話中のディスプレイが見える。相手は和維くんか雅さんだろうけど、間違いなく雅さんは聞いているだろう。少し声を張って言っておく。


「今日はごめんなさい。玲奈と過ごします。夜にはちゃんと連絡します。和維くん達に八つ当たりしちゃ駄目ですよ。バイト、気をつけて行ってらっしゃい」


言い終わると玲奈をみる。


「だそうです。和維、電話切るよ」


静かにお茶をすする。


「バレバレでした?」

「バレバレでした」

「怒った?」

「まさか。気持ちが落ち着くまで連絡とりたくなかったから携帯の電源切っていたの。心配と迷惑かけていたと思うから早めに連絡しなきゃいけなかったしね。

玲奈のおかげでキツイ口調にならないで伝えることができたと思うから、あるのは感謝だけだよ。玲奈ありがとう。大好き!」

「くーーーっ。今の魔王サマに聞かせたかった!」


こんな調子で久しぶりにお昼まで玲奈とおしゃべりしながら過ごした。

帰る前に携帯電話の電源を入れると………。

あまりにも予想通りで、ゲンナリとした顔をする私に玲奈が「ご愁傷サマ。南無南無」と手を合わせた。

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