藤沢雅6
奈央にクリスマスの予定をきかれた。いましがた思いつきましたって顔で尋ねてくる。24日か25日、まぁ26日でもいいか。奈央の顔を見ることができてプレゼントを渡せたらそれでいい。
勿論、本音は二人で長い時間過ごしたい。休日のように昼間に数時間会えれば満足だ。が24日は終業式だったはずだ。午後から少し会えたらラッキーってとこだろう。
奈央がオレと二人で会いたいと思ってくれていただけでよしとしよう。
長い付き合いになるんだ。焦る必要はない。
お義父さん達とあんな賭けをしてしまったが、2~3日経って少し落ち着いてみれば、結局ただの焦りと不安だと気付いた。
奈央の寄せてくる想いが心地良い。もう、賭けの事なんてとっくにどうでもよくなっている。オレの本気を見せるのも長期戦でいけばいいだけだ。
そんなことを考えていると奈央の体が触れている部分が急激に熱くなり、その刺激にゾクリとする。
「奈央?……!!」
うわっ、何て顔してるんだ。こんな顔を見せて連れ歩いたらヤバい男達に捕まってしまう。
何とか気持ちを落ち着けて車に乗せる。
そんな色っぽい目で見つめながらくっつくなんて反則だ。理性がぶっ飛びそうだ。
奈央はそっち方面の知識だけはあるみたいだが、自分の身に起きていることにピンときてないようだ。奈央も気持ちが高まり、無意識に我慢していたのだろう。
心も体も騒いで仕方がない。
「オレ、我慢できるかな」
今日はオレが奈央のキスに合わせていく。…やっば、スボンがキツイ。奈央の前じゃナオセナイ。
何とか奈央を宥めて自宅へ帰った。
ちょっと奈央から離れないとイタイ。先に部屋へ行かせてコーヒーを淹れる。オレの淹れるのを飲んでもらうのも久しぶりだな。
ぼんやりしていると和維が台所に入ってきた。
「ミヤ兄、奈央ちゃん来てるの?」
「うん。そうだけど何?」
「ううん、別に。コーヒー余る?余ったらちょうだい」
和維に注いで渡す。
「部屋の前通ったら物音したけど、下にミヤ兄いたんだなって。それだけ」
「翔惟は家にいる?」
「ううん、出掛けているよ」
「なら、大丈夫か」
「…どの位引きこもっていればいい?」
思わず和維の頭をゴンとした。デリカシーがあるんだかないんだか。
部屋に行くと、何故か奈央がオレのベッドの中にいる。枕に顔をうずめているが、臭ったら恥ずかしいからやめてほしい。冬だから枕カバー3日に1度しか替えてないんだよ。汗臭くないかな。
奈央が眠っているのか確認する。寝ていて欲しい気持ちもあるし、さっきの奈央に会いたい気持ちもある。
眠っている様だったので、とりあえずジャケットを片付けて部屋用のカーディガンを羽織った。
奈央の声がした。あの熱いままだ。奈央に後悔してほしくない。オレは着替えて寝てもらうことにした。一眠りすれば落ち着くはずだ。
…が、そんなオレの心配り(こころくばり)は通じず、今日の奈央は止まらない。
オレこんなに頑張ってるんだから奈央も耐えてよ。
振り払いたい。もう、そうしないと耐えられないかもしれない。
何とか抑えてオレの顔を触る手をほどいて離れる。
制服がシワになると言って奈央を着替えさせた。……が後悔だ。
奈央がオレのスウェットを着ている。ヤバい。だぶついているスウェットにあの顔。オレの失敗だ。このままだと自滅コース一直線だ。
布団を敷いた事を謝ってくるが、そんな事はいい。頼むから早く眠ってくれ。
そんな心中を察してもらえる事もなく、奈央からトンデモ発言が飛び出した。
ソレ、オレに欲情シテルってワカッテル?
もう我慢できなかった。ツラそうにしている奈央を甘言で誘い解放していった。
まだ発育しきってないはずの身体だが、とてもそうは思えない。声・顔・体の反応から悦んでいるのがわかる。攻めているのは上半身だけなのにこんなになってくれるのが嬉しい。
奈央の反応に応えるようにオレも反応していく。
…もう限界だ。嫌がらないでほしいと願い、奈央の手を導く。久しぶりの他人の手だ。しかも奈央の手だ。
オレの心と体が満たされていく。
本当に好きな相手なら、これだけでも満たされる程気持ちいいもんなんだな。
後始末をしてしばらく奈央と余韻を楽しんでいたが、時計をみて渋々動くことにした。
あー、オレの部屋にさすがに替えのショーツはないなぁ。家に帰るまで辛抱してもらおう。
奈央に声をかけ、お手洗いに行ってもらった。
廊下から自室に入るとそういう匂いがした。窓を開けて空気を入れ替える。
戻ってきた奈央に尋ねるとすっかり落ち着いたようだし、雰囲気が柔らかく丸くふわっとした感じだ。言葉の通り満たされたのだろう。
が、しばらく甘い余韻に浸りたかったオレを置いてトリップしてしまった。こういう所が奈央らしい。そう納得させた。
風呂から上がると、今日奈央が着たスウェットを着た。奈央のぬくもりを思い出したり、匂いが残っているからとか、脳に焼き付いたアレを思い出したいからとか、邪な気持ちがあったっていいだろう。コレはオレのスウェットだ。オレしか知らない事だ。
脱衣所を出ると母さんが待ち構えていた。ニコニコじゃない、ニヤニヤしている。気味が悪い。
オレは今気分がいいんだ。水をささないでくれ。
「雅がお風呂に入っている間に奈央ちゃんから電話あったわよ」
もう9時過ぎてる。掛け直すのはやめておこう。
「何だって?」
「ウフフ」
笑ってないで早く言ってくれ。
「あのね、何だったと思う?―――24日の夜、雅と一緒に過ごせるそうよ。良かったわね」
「ホントに?」
「ええ。ただ、22時までに雅がきちんとお家に送り届ける事ともう一つあるけど、それは雅に直接言うって言ってたわよ」
部屋に置いたままの携帯に奈央からメールがきていた。母さんから聞いた事は本当だった。もう一つの条件はこれだろうというのも書かれていた。
オレの機嫌は天井をぶち抜きそうな勢いで急上昇だ。サプライズを嫌う奈央からのサプライズだな。ふふっと笑いがもれる。
きっと取り立てて変わった事は望まないだろう。24日をどう過ごすかと考え始めると、スウェットから奈央の香りがふわっとたちのぼってきた。
布団の中もヤバいな。
そう思いながらも楽しみと興奮を抑えることができないまま布団に入った。




