第4話 男の子の家には行きません
それから毎日四人で食事をしている。食後、私達二人は図書室に行く日があったり、健人くん達は体育館に遊びに行く日があったりしたが、四人居るのに三人だけで盛り上がる昼食タイムは…なんと1ヶ月も続いた。こうなるとどうして一緒に居るのか不思議になってくる。
が、とうとうというか、漸くというか、それが終わる日がやってきた。
それは楽しみにしていた深夜アニメの映画版が公開され、三人で一緒に行こうという話になった時だった。
「健人、俺も行きたい」
「藤沢くんが喋ったわ」
思わず出た私の言葉に藤沢くんは悔しそうな顔をした。照れただけだろうか?
「健人にDVD借りたんだ。まだ全部は見てないけど面白い」
「それなら、行くのは和維が見終わってからがいいな」
「私も映画に行く前に復習しておきたいから急がないよ」
玲奈がポンと手を叩いた。
「ねぇねぇ奈央。あたしも見ておきたいからさ、一緒に見ようよ」
「うん、いいよ」
玲奈と予定を決めていると声がかかった。
「俺達も一緒にいい?」
どちらかの家で見ようと考えていた私達は顔を見合わせた。正直、お互い自宅に男の子を招くのは嫌だ。自室に入れるなんて以ての外だ。だからといって、友達とはいえ男の子の家に行くなんていう選択肢はない。
「………よくないかな」
私が答えた。断られると思ってなかったらしく、二人共驚いている。
健人くんは「何で」と固まっているし、藤沢くんは泣きそうだ。
「俺がいるから?」
と藤沢くんが言った。 私達は「そうじゃないよ」と首を横に振った。玲奈も私も、自慢に聞こえるかもしれないが親の遺伝子のおかげで容姿が整っている方だと思う。クラスでかわいい子・美人を挙げる時は必ず入る位に。もう一つ言えば、運動能力は人並みだが、スタイルだけは日頃の努力の賜物でそれなりを維持している。
年頃の娘である私達が、うっかり相手を誤解させそうな事は、お互いの為に控えるべきだと考えている。
お年頃は何があるかわからない。
お年頃というのは、その位用心する方がいいはずなのだ。
……決して妄想グセで頭がいっちゃったワケではない。
私達は大和撫子なのである。考え方がやや古風なだけなのだ。―――ということで、
「あたし達、男の子の家へ行くのも来られるのも苦手なのよ」
玲奈がやんわり断ってくれる。
「でも俺、DVD‐BOX持ってるから特典映像とかも見られるよ。凄いお得だと思うんだ」
その健人くんの言葉に玲奈がちょっとそそられている。気が変わるのが早すぎだろう。しかし、顔には出てないはずだが私も見てみたい。だが、それ以上に行くのも来られるのも嫌だ。
「俺の家なら両親も兄貴達もいるし、大勢で見るならどう?」
やばい、玲奈がおちそうだ。
「井上さんのお母さんや玲奈さんの姉妹も呼んだっていいし。うちのテレビでかいから気分よく見られるよ」とダメ押しする。
ああ、玲奈がおちた。
「全部見るとなるとかなり長居するけど、ご迷惑じゃないかしら?」
「ああ、大丈夫だ」
「そう?ちゃんとご両親にきいてみて?
それから決定しましょう。奈央、それならいいでしょ?」
さすがにこれなら、していた心配も余計なものになるだろう。
私も諦めて了承の返事をした。