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第42話 私も内緒話をしちゃいます

雅さんに送ってもらって家に帰った。

自室に戻って考える。何を贈ったら喜んでくれるだろう。二人で過ごす時間をどうやって確保しよう。嘘やアリバイ工作をしてまでは会わない。そんな事をしたら築いてきた信用が全部崩れてしまう。そうなったら、雅さんに関することは何もかも許可が出なくなってしまう。

それじゃ駄目だ。お母さん達に聞いてみよう。



夕ご飯も片付けも終わりくつろいでいる。残業が無かったお父さんも、珍しく千里もリビングにいる。揃いすぎていてちょっとイヤだけど聞いてみることにした。


「ねぇ、お母さん。クリスマスなんだけど、雅さんと過ごしたいんだけど駄目かな」


声が小さくなり、恐る恐るになってしまった。駄目って言われるかな。

お母さんが小さく溜息をついた。


「それは雅くんに言われたの?」


お父さんは難しい顔をして、私とお母さんの話をやり取りをきいている。


「ううん、雅さんは私が家族と過ごすと思ってる。でも、私が雅さんと一緒に居たいんだ」


お母さんはお父さんをみた。テレビを見ていた千里も私達をみていた。お父さんが口を開く。


「奈央、それは外泊したいということか?」

「違うよ。そんなワケないじゃない」


お父さんとお母さんが明らかに安心したのがわかった。


「そう、なら別にいいわよ。そんなに遅くなるの?」

「うーん、雅さんに聞いてみないとわからない。私の独断だから」


お父さんの機嫌が少しだけ良くなった…気がする。笑うのを我慢してる?


「25日はいつも通りに家族でする。雅くんと会うなら24日にしなさい。

夜9時、いや10時までに帰ってくることが条件だ。必ず雅くんに送ってもらうこと。

それと、高校生らしからぬ行動…例えば、ピーとかピーは禁止だ」


ジト目でお父さんを見てる。


「総司さん、恥ずかしくて言えないからってそんな中途半端な表現で。

奈央、つまり、安売りしないで大事にしなさいってコトよ」


お母さんの言い方もどうだろう。でも、きちんと伝わってます。


「はい。お父さん、お母さんありがとう」


思いの外すんなり出たOKにちょっと拍子抜けである。


「ねぇねぇ!オレも24日に夕菜と夜いいの?」

「アンタは中学生よ。駄目に決まってるでしょ」

「ええ~、冬休みに入るじゃん。いいだろー?」

「義務教育も終わってないのが何言ってんの」

「えー、それじゃクリスマス『イブ』じゃないじゃん」


千里はまだお母さん達と言い合っていたが、私は早速雅さんに電話をした。家にかけたら生憎入浴中だという事なので、お母さんから携帯を借りてメールを送り、私もお風呂に入ることにした。


湯船に浸かりながら考える。

私があげて喜ぶもの。…何をあげても喜んでくれる気はするけど。

雅さんはよく言う。一緒にいたい。離れたくない。

私もそう思う。

結婚の約束が形になれば喜ぶかなぁ。でも形って、やっぱり世間一般には婚姻。さすがにそれは無理。

仮の仮みたいになるけど婚約?ただの口約束なら今までと同じか。

私と雅さんを繋ぐもの。うーん。私を縛るもの…?…ロープ?手錠?…違うって。


お風呂から出るとパソコンで少し調べものをする。


「興味なかったから気にしてなかったけど、高いなぁ」


どれを見てもお小遣いからじゃ無理そうだ。そもそも私一人じゃ無理なんだけどね。

明日、お母さんにお願いしてみよう。驚くだろうなぁ。ああ、そうだ。和維くんにも教えてもらわなきゃ。

15分程で調べ終わったので、勉強してから眠った。


「クリスマスまであと10日か。間に合うかな」




次の日、和維くんにちょっと調べて欲しい事をお願いした。


「奈央ちゃん、ついに?」

「うん。でも内緒にしておいて。あ、雅さんだけじゃなく、玲奈と健人くんにも。お願い!!」

「いいよ。絶対喜ぶよ。そうそう、コレと同じだよ。きっと同じくらい海斗さんも喜ぶんじゃない?」


私はメモをとりながら和維くんと話を続ける。


「和維くんてお兄ちゃんと知り合いなの?」

「うん、まあね。電話とメールをするくらいには付き合いあるよ」


ちょっと自慢気に言うその姿が微笑ましい。でも、私のお兄ちゃんよ。


「そういえば、海斗さんと千里の間って情報筒抜け?俺、前に海斗さんに『残念先輩』って言われたんだよ。超がっかりだったんだけど」


健人くんに比べて控え目だった和維くんが前より話してくれるようになった。何かがあったのかもしれないけど私はわからない。けど嬉しい。


「それはご愁傷サマ。そうね、千里はたまにお兄ちゃんに電話してるみたい。お父さんには話せない事も話しやすいみたいだよ。お父さんは密かにヘコんでいるけど。しょうがないよね。

私だってお姉ちゃんがいれば、お母さんじゃなくてお姉ちゃんにいっぱいお話すると思うもの」

「あとさ、今朝、ミヤ兄が気持ち悪い程上機嫌だったんだけど、もうバレてるんじゃない?」


きっとクリスマスに一緒に居られる事を喜んでもらえてるんだとわかり、思わず頬がゆるむ。


「ううん違うの。あのね、24日を22時までに家に帰れば一緒に過ごしていいって、許可が出たの」

「へぇ~。よく香織さん達がその時間までの外出にOKだしたね」

「小さい条件がでたけどね」


興味深々できいてくる。言っても笑わないでくれるかなぁ。


「雅さんが時間までに送り届けることと、えっと、しないコト?」

「……ああ、そう。ウチ、壁薄くないと思うけど、俺もいるし声とか気をつけてね」


カァーッと赤くなった私は横に回り力一杯、和維くんの背中を叩いた。


「~!奈央ちゃん痛いっ!」


涙目で抗議してくるけど知らない。背中をさすりたいみたいだけど、上手く手が届かないようだ。


「そんなこと言う和維くんが悪いんだからねっ」


私はあの時のコトを思い出し、赤い顔でニヤけながらその場を去った。

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