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内田健人5

明日は文化祭だ。俺はお祭り騒ぎが割りと好きだ。そんな俺にとって、この高校の文化祭はすごく物足りない。入学する前から知っていた。でも、実際入学してみれば以外とそうでもないかもと期待していたのだが。


「和維、文化祭、お前何かする?」

「えっ?特にあるわけないじゃん。これだけ一緒に居てさ、それ聞く必要ある?」

「だよな」


玲奈と奈央ちゃんはどうするんだろう。


「あたし達、籍だけは写真部なの。だから展示の手伝いだけはするよ。ねっ、奈央」

「うん。それだけはするよね」


文化祭。祭りとは名ばかりだ。だからと言って文化について深く学ぶかといえばそうでもない。

模擬店もない。クラス対抗何かもない。

じゃあ何があるか。

文化部の作品展示。有志参加の発表。選択音楽の中で行われた音楽発表優秀グループの演奏。その他、優秀者や賞をとった作品の展示。

有志参加に出なければ運動部はすることがない。

文化部作品展示の中には琴部と吹奏楽部の演奏もあるが吹奏楽部はコンクールの日と重なるということで公欠、今年の演奏発表はしない。茶道部が体験させてくれるそうだが行く予定はない。

バザー?そんなものない。

そもそも、一般入場不可なのである。


「なんだかホントつまんないなぁ」

「何を今更。知ってて入っただろ。

それは知らずに入ったヤツ、有志に申し込んだヤツが言え」

「うっ」


楽しみたいが目立ちたいわけじゃないんだ。そこをわかって欲しい。


「当日は玲奈と奈央ちゃん、時間あるんじゃないか?展示手伝うだけなんだろ?」


何するでもなく教室にいると、クラスのヤツが飛び込んできた。


「藤沢くんと井上さんいる?二人とも習字の先生が呼んでるよ」

「あー、忘れてた。和維くん、私達そっちの準備があったね」

「きれいサッパリ忘れてた。奈央ちゃん行こう」


和維は習字上手いもんなぁ。奈央ちゃんはもう教えられる位の段を持ってるし。すげーな。


「健人、暇なら奈央の代わりに展示手伝う?和維いないし構わないでしょ?」


どうせ暇なんだ。悩む必要もない。ついて行った。

展示会場になっている体育館に行ったはいいが、二人ともすることがなかった。

写真は撮った人達が自分達で配置していた。そりゃそうだ。展示用カメラも素人触るなで、こちらもすることない。当たり前か。


「「……」」


教室に戻ることにした。

無言で歩く。玲奈が口を開いた。


「全然関係無い話なんだけどね。奈央達見てると恋人欲しいなって思う事ない?」


そんなのあるに決まってる。でも自分の身に於いて現実的でない。


「あたし達いつも一緒にいるじゃない?だからさぁ、他の女の子達みたいに健人や和維のこと好きになるかもって期待して想像を膨らませてみるんだけど、ならないのよね」


そう言って溜息をついた。ちょっと期待したじゃないか。


「あたしこのまま枯れるのかしら」


俺にどうしろって言うんだ。俺を見るその目に期待はない。


「今は居なくてもこれから先、恋の1つや2つするだろ?その時に備えて女でも磨いておけば?」


そうねぇ…と遠くを見てる。


「あのなぁ、俺だって玲奈可愛いなってドキッとした事くらいあるんだよ。今は友達だけど、この先いつか気が変わるかもしれない…いや多分ないだろうなぁ…いや早まるな。何があるかなんてわからない、うん」


玲奈が俺を見る目が冷たい気がする。


「ああ~、いいんだよ。うん、わかってる。

健人からはさ、恋愛に関しては同類な感じしてたんだよね。やっぱりそうだわ」


一人で納得するなっ。


「あたしの勘なんだけどね、多分健人は年下のお姉ちゃん属性の人と上手くいくと思うんだよね。次点でまんまお姉ちゃん。あたしは年上の弟属性の人。和維もきっと健人と同じね」


コイツは結局何をどうしたいんだ?言いたい事がわからない。


「言ってみて気が済んだわ。自分でもやっと理解できた。…気になる?」


俺は頷く。気になるわっ!と言いたい所をこらえる。言った所でからかわれるだけだ。


「健人と和維って見た目はいいじゃない。バカやれるのも楽しいわ。格好いいから見るのも楽しいのよ。それで好きなのかな?って思う時もあったんだけど、どうも違うのよね。小説やマンガみたいに仲良しグループの男女が…ってヤツ期待したんだけど、こりゃ無いわって確信できた。

恋愛に逃げようとしたのかもね」


最後のはわからないが、その感じは大体俺もわかる。言いたい事も俺には通じた。


「同類だと思う。だからこそ言っておこう。奈央ちゃんのパクリと言われそうだが、40才になってもお互い独身だったら結婚してもいいぜ」

「そうねぇ。40才だったらいいかもね。

でもその頃、お互いちゃんと相手がいると思うわよ」

「俺もそう思う」


二人で笑った。

向こうから和維と奈央ちゃんが歩いてきた。終わったようだ。


「随分早かったな」

「うん、行ったら私達作品のチェックとか配置バランス見るだけで、たいしてすること無かったんだよね」

「そうそう。間違いがないように本人のチェックが必要だったんだよ」


結局暇で四人で教室で勉強をして時間を潰した。



翌日。文化祭当日。


「文化祭だからってハメ外すなよ。勝手に帰るなよ。学校の外に出るなよ。

ステージで発表があるやつは練習の成果を発揮できるように頑張れ。

先生も巡回していない時間は観に行くからな」


四人で回る約束をしていたので早速教室を出た。何となく視線を感じる。


「どうする?」

「四人で揃って動く様にしましょう」

「ひと気の少ない方に行けば出てくるんじゃね?」

「止まらず歩こうか」


ひと気のない方へ向かおうとした時、奈央ちゃんが、


「ねぇ、気にしないでこのまま観に行こうよ。先に四人で寄るなオーラ出しながら楽しく回っちゃえば、自分と一緒に回りましょうって人はもう観たからって断れるよ」


奈央ちゃんのこれは雅先輩の影響か?「それに」と続ける。


「私達が気にしてあげる必要ないじゃない。

三人とも誰か好きな人がいて告られ待ちでもないし、誰が言ってきたって断わるつもりなんでしょ?」


…奈央ちゃん気付いてる?何気に話す声、通っているみたいだよ?

他の二人は知らないが、少なくとも俺はその通りだ。例え好きなアイドルに告られようが、好きなマンガのヒロインに告られようが、今は気がのらない。ドンピシャの子が来てくれても駄目な気がする。


「何となくそんな気がしただけだよ。でも当たってるでしょ?」


久しぶりに奈央ちゃんのウィンクが飛んできた。相変わらず強烈だが、なんとか耐える。


「実はね、御利益ありそうなもの持ってるんだ。押し花にしてあるんだけど、見る?でも今は見せるだけだよ」


そう言って取り出したのは本のしおりのようだ。見せてもらうと和紙にイチョウの葉が乗せられパウチされた物にリボンがついていた。…しおりにはでかくないか?


「たくさんはないけど、三人の分はちゃんととっておくからね」


今一番幸せそうな彼女が言うことだ。確かに御利益がありそうだ。自信有り気な理由も何かあるんだろう。何だか気分が上向きになった。


「俺、奈央ちゃんに賛成。やっぱ観に行こうぜ」


玲奈が乗ってきた。


「そうね。せっかく奈央と和維の作品もあるんだし観に行きましょう」


和維も乗り気になった。


「だな。いい出来だし、観て欲しいもんな。なっ、奈央ちゃん」


すっかり四人でまとまった。俺達の雰囲気に諦めたのか視線はだんだん無くなっていき、思ったよりずっと楽しい文化祭を過ごせた。


有志の発表でクールな雰囲気の生徒会副会長がノリノリでダンスと歌を披露したが、観ていた生徒と先生がひいていたのが一番記憶に残った。

習字のすごさは分かったが、どう凄いとかはわからなかった。ゴメン、和維、奈央ちゃん。

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