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第39話 仲直りはお早目に

伝えることはした。雅さんは何て言うんだろう。私の言葉を咀嚼している。


「奈央、ごめんね。まずは悪ノリしすぎた」


まずはってことは幾つかあるという事なのだろう。私は黙って頷いた。

何か言いたい事があるのは見ただけでわかる。そして、何かをどう濁そうかと考えているのもわかる。


「言ってしまった方がいいですよ」


さぁ、楽になりなさい、雅さん。私の背に炎の龍を昇らせていますけど何か?

諦めたようだ。早く言って下さい。


「見られてたんだよね。覗きじゃなくて、大学のヤツに。声を掛けずに見てたってことはやっぱり覗きでいいのかな」

「えっ?どういうことですか?」


言葉のままなら雅さんの学友にあんな事してたのを見られていたって事だ。雅さんの知人って事は、いつか顔を合わせる事があるかもしれない人でもある。っていうか、今日だって会うかもしれないじゃんっっ。


「あのさ、怒らないで聞いてくれる?…ってもう怒ってるか。

キスしてたらさ、知らない間にヤツらが割りと近くまで来ていてオレ達のこと見てたんだよね。

見せつけてやれば、声掛けられたり邪魔されないかと思ってさ、ちょっと激しくし過ぎちゃった。ごめん…」


恥ずかしいやら呆れるやらで言葉が出なかった。「でさー」と続く。


「奈央が言う通り、奈央のこと子供扱いした。確かに頭撫でれば機嫌が直ると思って。奈央の気持ちをよく考えなかった。ごめん」


雅さんが頭を下げた。


「悲しませてごめん。これで全部」


雅さんだけが悪いわけじゃない事はわかる。


「雅さん、頭をあげて下さい。私もちゃんと言わなくてごめんなさい。小さな事に拗ねてごめんなさい。

子供扱いをされたのは私が子供みたいな態度をとるからですよね。ごめんなさい」


雅さんが少し慌てる。


「えっ、奈央、可愛い所も残しておいて。全部大人にならないでよ」


その様子を笑う私を見て雅さんも笑った。




感情が大きく動いたせいでエネルギーをたくさん消費したようで、すっかり腹ペコりんになりました。


「雅さん、私お腹空きました。雅さんはどうですか?」

「オレも空いたよ。かなり。そろそろ店も空いただろうし食べに行こうか」


雅さんが私の手をとってくれる。


「何食べましょうか」


軽やかな足取りで飲食店のある方へ歩いた。

特に食べたいものが決まっていなかったのでファミレスに入ることにした。テーブルの方はまだ片付けが終わっていなくて座敷に通された。


「雅さん、今日は車出してもらっているので割り勘でいいですよね?」

「いつも言うけど、オレ、バイト代もあるし、この位だせるんだよ?」


外食の度にするこのやり取り。ご馳走してくれようとする気持ちはすごく嬉しいんだけど、奢られてばかりというのは大変心苦しい。何度も伝えるけど、なかなか理解してもらえない。


「雅さん、いつもだと本当に心苦しいんです。雅さんだってまだ学生なんですよ」


軽く、「ご馳走さまです。ありがとうございます」って受けておけば可愛い子なんだろうけど。

――ちょっと勇気いるけど、これなら聞いてもらえるかも…という言葉が閃いた。使いたくないけど上目遣いもすることに。


「あの、今使うより、将来の私達の生活の為に使ってほしいです」


これだけじゃ駄目だったかな。失敗したかなぁ。反応がない。がっくりと俯いてしまう。


「私だって長く一緒にいるつもりなんです。将来私が子育てで働かない期間とかあるんですよ?」


言ってみて本当に本気で先まで考えてくれているのかなぁとちょっぴり気になる。

チラッと見ると、そこには斜めを向いて顔を手で仰いでいる雅さんの姿があった。


「うん、わかったよ。オレが折れる。でも、奈央も無理しないでね」


ニッコリ笑う。


「奈央にやっと本気が届いたみたいだね。さっきの言葉はオレと結婚してくれる気になったってことでしょ?時期早めて卒業したらすぐに入籍しちゃおうか」


満面の笑みが眩しい。眩しさと相変わらずの甘あま発言に胸焼けを起こしかけていると後ろから「ブホッ」と聞こえた。

衝立があるからどんな人かわからないが噴き出したようだ。変な所にでも入ってしまったのだろう。慌てずゆっくり召し上がって下さい。


「決まった?」

「はい。オムライスにします。でもケーキどうしようか迷ってるんですよね」

「食べ切れなさそう?」

「う~ん。食べてみないとわからないかなぁって」


残すのは嫌だし、悩む。


「オレも食べたいけど、1コ全部は多いと思ってたんだ。半分こしようよ。奈央どれ食べたいの?」


そう聞いてくれるのは私の為だ。ここは甘えさせてもらおう。「これです」とリンゴのケーキをさした。一緒に注文してくれた。雅さんはハンバーグセットを頼んでいた。



食事が運ばれてきた。手を合わせて食べ始める。


「奈央って少食だよね。それで足りるの?」

「雅さん、それって翔惟先輩や和維くんと比べてじゃないですか?少ない方じゃないですよ」

「ああ、そうかも。翔惟の彼女はよく食べるんだよね。あれが多いのか。奈央は母さんと同じ位かぁ」


ケーキが運ばれてきた。


「奈央、食べられるなら全部食べていいよ」


そう言ってくれたけど、やっぱり半分位しか食べられなさそう。


「割りとお腹いっぱいなので半分位がちょうど良いです」


雅さんはケーキをフォークで小さくすると私の前に出す。もう慣れました。私も同じ様にする。

本当にバカップルです。恥ずかしい。


「この季節になると、天気が良くて暖かくてもビールって気にならないなぁ」

「車の免許とりに行けるようになるまで、まだ1年半以上あります。早くても高3の夏休みです。…運転代われなくてすいません」

「奈央の高校卒業とオレの大学卒業って一緒の年だね」


少ししみじみした雰囲気になった。後ろから、「ゴホッゴホッ」と咳こむ音がしてきた。気管が弱い人なのかしら。


「食べ終わったらコスモス見ようね」

「はいっ」


私達は店を出ると目的のコスモスが咲いている場所に向かった。

花を見る前から私の心はすっかり明るくウキウキしていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


―ヤツら【友人・宮下】―


公園で2対2に別れたかったが4人一緒がいいと言われ(俺にも気を遣え。初めましてじゃないんだから二人でいろよっ)仕方なく四人でふらついていた。俺は花に興味はない。でもあやと居られればそれでいい。人が多い所は人間観察もできてそれもまた良い。


そろそろ昼飯にしようかって時に、ピンクオーラ全開のバカップルが視界に入った。女の顔は見えないが、男の方はこちら向きなのでよく見えた。

思わず足が止まる。それに釣られて他の三人も止まった。

「嘘っ…!」そう言う声がした。「あれ、藤沢?」沢井が言った。やっぱり見間違いじゃない。

いつものすました顔は何処行った?あれが本当に藤沢か?絢と沢井は驚いて固まっている。美優みゆは顔を手で覆ってしまった。泣いているのかもしれない。

俺は藤沢から目が離せなかった。藤沢がこちらに気付いた。反射的にニヤリと笑う。気付いたくせにやめない。

見ていると疼いてきた。三人を促してその場を離れた。絢が美優を慰めている。こう言っては何だが、フラれてるのにしつこすぎて、もう嫌われていたようだったからコレで諦めもついてよかったのではないかと思う。いい男は他にもいるさ。っつーか沢井。こういう時こそお前の出番だろ。



ファミレスに入ったが運悪く混んでいた。この時間じゃどこも混んでいるだろうと、諦めて並ぶことにした。

…結構待った。腹減った。


注文したものがきた。食べ始めて直ぐに、俺達の後ろの席に客が座った。そいつらはタイミング良く待たずに通された。チッと思う。

食べてる最中の俺達は、ちょうどみんな咀嚼中で会話が途切れていた。その為、後ろの席の会話が聞こえてきた。


「「「「!!」」」」


四人で顔を見合わせる。

藤沢の声だ。相手の女も「雅さん」と言ってるし間違いなく藤沢だ。

何となく全員が聞き耳を立てている。


誰だコレ。このデレデレで甘あまなのが藤沢なのか?一体どんなヤツが藤沢をこんなにするんだ?

藤沢の方がべた惚れに感じる。

卒業したら入籍するとか聞こえた。思わず噴き出す。

ゴメンというジェスチャーをして聴き続ける。

こちらのテーブルはいつの間にか全員食べ終わっていたが誰も喋らない。

高校卒業と大学卒業が一緒だって言ってる。

…えっ!?相手高校生!卒業一緒って、今高1かよ!!

ビックリして咳込んでしまった。


ヤツらが席を立つまで俺達は喋ることも席を立つこともできなかった。

藤沢の彼女の顔を見ることはできなかったが、藤沢がどれだけ惚れて大事にしているかは伝わってきた。

学校でからかっていいんだよな?

次回からは数話健人達の話が続きます。


先週活動報告でも書きましたが明日・明後日は更新お休みします。

体調不良になっていなければ月曜日は更新しますのでよろしくお願いします。


いつも読んでいただきありがとうございます!

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