第3話 友達との昼食は楽しく食べたいものです
短い休み時間じゃ話を全部きけないからと放課後を楽しみにしていた玲奈が早足でやって来た。
「奈央っ、行くよ」
そう言って私の手を掴んで廊下にでる。そこに内田くんが立っていた。
「奈央さん、あの」
「玲奈、先行ってて」
「片桐さんも居て」
玲奈と顔を見合わせ内田くんに向き直る。
「明日から俺達も一緒にお昼食べたいんだけど、いい?」
「奈央がいいなら私はいいよ」
即答してこちらをニヤリと見る。
「俺達の達って?」
「ああ、俺と和維」
隣りで玲奈がまた南無南無言う。
「私はいいけど、藤沢くんが嫌なんじゃない?」
「誤解は解けたから大丈夫」
「えっと、明日きっと、内田くん、玲奈にいじられるけど…耐えてね?」
「それとも、明日あたしの前で内田くんが今日の事話すっていうのでもいいよー。これから奈央にきこうと楽しみにしていたけど明日にとっておくっていうのもいいかも」
「いや、俺の残念さがわかるだけの話だよ。奈央さんに聞いて」
玲奈がイヒヒヒと笑って、内田くんを肘でツンツンしながら何か小声で言っている。全く、いつものコトだけど可愛い顔が台無しである。
「それじゃまた明日ね、健人くん」
まぁるく見開いた目はニッコリに変わり
「奈央さん、玲奈さんバイバイ」
そう言って手を振っていなくなった。
何か青春ぽいなぁなんて思いながら図書室へ向かう。邪魔にならないよう図書室の外で昼休みの事を話した。
お互い、マンガに出てくるお節介おしゃべり親友キャラじゃないので、やたらめったら恋バナに仕立てあげたり無理矢理くっつけようなんて事はしない。昨日の「告られた?」は以前にそういう事があったからだ。
実際、話終えても特に反応もなく、その後もいつも通りに過ごした。
朝、お母さんが言ってきた。
「奈央、昨日、内田くんから電話あったよ」
私に取次がなかったという事は、用事の相手は私ではなかったのだろうと思ったが「何だったの?」とたずねる。
「昨日は失礼しましたって。代わろうかってきいたら、用も無いし、また明日会えるからいいってさ」
「へぇ。行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
上履きに履き替えていると健人くんと一緒になった。玲奈と私と三人で挨拶をかわす。
昨日の変な緊張もなくなり、健人くんは普通の人になっていた。友達にあんなに緊張されると心苦しいし気まずい。
あー良かったと一安心だ。
あっという間に昼休み。健人くんが藤沢くんと一緒にこちらに来た。
「おじゃまします。どこで食べようか?いつもどうしてる?ここで机くっつける?」
と健人くんがきいてきた。
「あたし達いつもこの席で食べているから、くっつけるのでいいよ」
玲奈がこたえた。
もう一つ机をくっつけて椅子の向きをかえた。私と玲奈はいつも通り向かい合わせ、私の隣りに健人くん、玲奈の隣りに藤沢くんが座った。
四人でお弁当を開く。食べながら行われる会話は、四人で食べてもいつも通り玲奈と二人だけだ。男子は参加してこない。玲奈も気になっているようだ。私が頷くと玲奈が健人くんに話しかけた。
「ねぇ。そういえば香織さんと何話したの?」
「香織さんて?」
「うちのお母さんだよ」
「ああ。あの時は、今何してるかってきいたら、2時間ドラマ見てるっていうから、かけ直そうかって言ったんだけど。
俺にどんな番組が好きかってきくから、知っているかどうか分からないけど『霊獣通行券』っていう深夜アニメが好きだって言ったら自分も見てるって。
それでお互い1stシリーズからのファンで、映画も観に行けたらいいなとか。主にっていうか、ずっとそのアニメの話だった」
「ふふ。うち、お母さんだけじゃなくお父さんも弟も私も好きなんだ。録画したやつ、大体私とお母さんは一緒に見るよ。あれの話なら楽しかったわけだ」
「じゃあ、健人くんも公開されたら観に行く予定?あたし達も行くつもりでいるからさ、日が合えば一緒に行こうよ」
こんな感じで、三人で盛り上がる楽しい昼休みになった。
読んでいただきありがとうございました。
次回は玲奈の話です。