内田健人4/藤沢和維4/片桐玲奈4
【内田健人4】
―その日の彼―
朝からソワソワしていた。奈央ちゃんが雅先輩に告白するからだ。
てっきりもう付き合っているもんだと思っていたから、昨日彼女からきいてとても驚いた。
奈央ちゃんと玲奈と友達になってから、和維を入れて四人で動くことが増えた。頭の中で描いていた女友達との付き合い方とは違うが気楽で楽しいのである。
彼女達もそれぞれ女の友人はいるし、俺達も男同士の付き合いがある。その中で、2:2だから付き合っているんじゃないか、好きなんじゃないかとうっとおしい位尋ねられた。少なくとも今は違う。仲はいいが友達だ。友人関係が長く続くかどうかは進学とかの関係で不明だが、長く続いたらいいと思う。
そんな詮索も奈央ちゃんが1抜けだ。彼氏がいるんだよって教えたら、少しはヤツ等もおとなしくなるだろう。奈央ちゃんと雅先輩が二人でいる姿を見掛けたら、軽い気持ちならあっという間に霧散するだろう。彼らの放つ雰囲気はそう思わせるのである。
不思議なもので、初対面だった時から妙にしっくりきていた。5年10年の知己だと言われても納得してしまっただろう。
乙女っぽいことを言うようだが、『赤い糸で結ばれている』ようにみえるのだ。
が、モテる男とモテる女にはトラブルがつきものだ。大体本人以外が原因という、何とも避けづらいものばかりだ。
そういえば、俺達ならではの『あるある』があることも友達が続けられる要因の1つかもしれない。
告白が上手くいくことは分かっている。それでも報告が待ち遠しい。
知らぬ間に、「吉報♪吉報♪」と口に出していたらしい。姉が「何か吉報あったの?」ときいてきた。
「これからあるんだよ!」
「よくわかんないけど良かったね」
姉も笑ってくれた。
心が浮き立つ俺だが、実は新学期に俺の言葉と周りの勘違いが原因で妙な噂が流れることになる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【藤沢和維4】
―その後の彼―
悪魔のような天使がいる。当たり前だが比喩である。
俺にとっては悪魔でミヤ兄にとっては天使だ。
この悪魔、普段はただの、いや、仲が良い方の友達である。
友達である奈央ちゃんとミヤ兄の関係が漸く『恋人』になった。めでたいことだ。
しかし、俺が欲しいのは身の安全だ。
ミヤ兄の奈央ちゃんへの入れ込み方・想い・独占欲など、まぁ大変良い言い方をすれば深い愛情を注いでいるわけだが迷惑極まりない。
「その嫉妬の仕方違う!」「俺達のせいじゃないっ」「魔王降臨か!」「奈央サンハヤク気ヅイテクレ!」「そこスルー違うから!!」
何度心の中で叫んだことか。その行動、言動がミヤ兄を暗殺者にかえる。
だから、今日でも明日でも、いや、今すぐでもいい。
奈央ちゃんがミヤ兄と結婚して生活を共にしてくれれば、俺や健人の心の負担がどんなに軽くなるだろう。命の安全せいが高まるだろう。
それにしても、ミヤ兄のデジカメのデータすごかった。あの2日間。撮影者はミヤ兄と母さんだろう。
「お前達ストーカーか!!」「どこぞやの張ってるカメラマンか!!」
そんなのが俺の母と兄。
予告なく爆弾を投下する悪魔。悪魔が人の姿をとる時は美しいというのは真実だったのか。見えない爆弾をおとすなんて、まさに悪魔の仕業である。魔王の隣りに寄り添う悪魔。うん、絵になる。――脱線してしまった。現実逃避と言わないで欲しい。
本当頼む。早く本当の意味で一緒になってくれ。
俺の平和のために。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【片桐玲奈4】
―彼女の思考―
真剣な顔をした奈央が言ったことは、お兄さんを好きだということだった。んな事、ここにいる誰もが知ってるわーと叫びたい気持ちをググッと押し込めた。奈央よ、漸くそこか。てっきり、告白済みで恋人になりましたの報告かと思っていたよ。全くトホホである。その奈央から漸く今日告白するという連絡があった。
きっと世の中に何人かいるであろう、お兄さんに恋する女子達には悪いがお兄さんの隣りには奈央がいてもらわなければ困る。
おそらく和維と健人は自分達の命の心配をしていただろうから、これでやっと命の危機から脱出できると喜ぶだろうが、違うと思う。
あたしの予想だが、あの独占欲の塊は、奈央の虫除け係・報告係としてあたし達三人を下僕1・2・3と任命するのであろう。そして、健人と和維は八つ当たられ係も拝命しなければならないであろう。
もう心の中ではお兄さんのコト『魔王サマ』と呼ぼうかな。
世の中では魔王サマみたいな男を素敵な男性というのであろうか?
顔は美形である。奈央じゃないが腰がくだけそうなのも分かる。(同類ですから)が、性格を知るホド引いていく自分がいる。同じ美形なら海斗さんの方が好みである。奈央に似ている所が多いからだろうか。同じ長兄でもやっぱり海斗さんの方が良い。あんな八つ当たり魔人イヤである。
恋人として…考えるだけで恐ろしい。奈央は気付いてないだろうが、外堀はかなり埋まっているのである。
奈央から連絡がきた。上手くいったそうだ。分かっていても、こういう報告は嬉しいものである。
「奈央、良かったね。あたしは奈央の味方だからね。出来る事しかしないけど(魔王サマの呪縛により)、相談にものるし応援するからね」
頭の中で閃いた。
赤い糸を赤い紐まで太く編み上げた魔王サマに恋の成就の指南役をお願いすれば良いのでは?
名案だと思い、健人と和維に意気揚々と提案した結果は内緒である。




